風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

はやぶさ君

2010-06-15 02:33:43 | 時事放談
 久しぶりに日本の科学技術の健在ぶりを目の当たりにして胸が熱くなりました。2003年5月9日に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、2005年11月、地球から3億キロ離れた小惑星イトカワへ着陸し、数々のトラブルに見舞われ、予定されていた2007年夏より3年近く遅れながら、60億キロの宇宙の旅を終え、昨6月13日夜、地球に無事帰還し、内臓カプセルを切り離してオーストラリアのウーメラ砂漠に落とし、自らは燃え尽きました。その潔さもまた感涙ものです。
 世界の惑星探査史上、月以外の天体に着陸した探査機が地球に戻って来たのは初めてのことで、自律的な判断能力を備えてロボットの性格を持つ「はやぶさ」の成果には目覚ましいものがあります。新技術のイオン・エンジンの開発を主導したのはNECで、地球の重力を利用して軌道の方向や速度を変える地球スイングバイを世界で初めて成功させ、自律航行の技術を実証し、運転継続時間も大幅に記録を更新しました。内臓カプセルを担当したのはIHIエアロスペースで、スペースシャトルの1・5倍に相当する秒速12キロ以上で大気圏に飛び込む時、カプセルの周囲の空気は1万~2万度になるとみられ、急激な減速によって受ける力は重力の50倍に達するため、要求される性能は高く、何度も試験を繰り返したと伝えられます。
 そんな2メートル角に満たない小さな「はやぶさ」は、いつの間にか擬人化され、小惑星「イトカワ」の岩石を採取して地球に持ち帰るという「おつかい」ロボットとして、成功するかどうかがネットでも話題になりました。人気にひと役買ったのは、JAXA研究員と会津大学准教授が描いたキャラクター「はやぶさ君」で、エンジン4基のうち3基が故障した上、姿勢を制御する装置3台のうち2台も故障し、地球との通信が7週間途絶えながらも乗り越えていく姿を描いた「はやぶさ君の冒険日誌」がJAXAのホームページに掲載され、人気を博したそうです。動画サイトでは、「はやぶさ」をテーマにした個人制作のアニメや楽曲も人気らしい。
 民主党の事業仕分けでは、次世代スーパー・コンピューターの開発を巡って「どうして世界2位ではだめなのか」という耳を疑うような不見識な発言が飛び出し、飽くまで予算という視点でしか見ることがなかった事業仕分けの限界を曝け出したとともに、蓮舫議員は大いに評価を下げてしまいました。科学技術に「世界2位」はあり得なくて、夢やロマンを追い求める側面もあることを、今回、多くの人があらためて思い出したことと思います。
 JAXAは、後継機「はやぶさ2(仮称)」の開発を計画し、別の小惑星から有機物を含む岩石試料を持ち帰り、生命の起源に迫ると意気込むそうですが、とりわけ子供たちに、再び科学の夢を見せて欲しいと思います。
コメント
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