保健福祉の現場から

感じるままに

死亡診断書

2015年07月01日 | Weblog
日経メディカル「「死亡診断書記入マニュアル」がひっそり改訂「医師法21条」の誤解、ようやく解消へ いつき会ハートクリニック院長の佐藤一樹氏に聞く」(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/opinion/orgnl/201506/542804.html?bpnet)。<以下引用>
<毎年改訂される「死亡診断書記入マニュアル」。実は今年3月の改訂で大きな変更が行われており、関係者の間で話題になった。医師法21条の解釈を巡り、これまで現場に混乱を招いていた表現がようやく見直されたという。今改訂に至るには、いつき会ハートクリニック院長の佐藤一樹氏による4年に渡る厚生労働省への働きかけがあった。これまでの経緯を佐藤氏に伺った。――今年3月に「死亡診断書記入マニュアル」で大きな改訂があったと聞きました。 はい。「死亡診断書記入マニュアル」は毎年改訂されていますが、今年3月の改訂は歴史上、非常に重要な改訂がなされました。簡単に言うと、昨年度版までは、診療関連死は全て、死亡から24時間以内に警察に届け出ないといけないかのような誤解を与える文章がありましたが、この文章について修正されたということになります。問題の箇所ですが、昨年度版までは「また、外因による死亡またはその疑いのある場合には、異状死体として 24 時間以内に所轄警察署に届出が必要となります」と記載され、注釈で「『異状』とは『病理学的異状』でなく、『法医学的異状』を指します。『法医学的異状』については、日本法医学会が定めている『異状死ガイドライン』等も参考にしてください」となっていました。これが今改訂では、「また、医師法第21条では、『医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない』とされています」と記載が変更されたほか、「『異状』とは『病理学的異状』でなく、『法医学的異状』を指します。『法医学的異状』については、日本法医学会が定めている『異状死ガイドライン』等も参考にしてください」という箇所が削除されました。そもそも医師法第21条は異状死体等の届け出に関する条文であり、「医師は、死体または妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署へ届け出なければならない」と規定しています。殺人、死体遺棄・死体損壊などの犯罪捜査への協力のために作られたものであって、決して診療関連死に関する規定ではありません。死体の外表に異状が見られる場合、それが犯罪の痕跡である可能性があるため、届け出を義務付けたものなのです。一方の日本法医学会の「異状死ガイドライン」は、「確実に診断した内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」を警察に届け出るよう求めているものです。これは異状死体の届け出について定めた医師法21条の解釈を大きく超えています。今回の改訂は、これまであった誤解を正すものになりますから、現場に与えるインパクトは大きいはずです。――この改訂に至るまでには、佐藤先生の働き掛けがあったと聞いています。これまでの経緯をお聞かせください。 最初のきっかけは2011年7月、「更なる医療の信頼に向けて―無罪事件から学ぶ―」をテーマにした日医総研のシンポジウム で講演したことでした。私は、2001年に肺動脈狭窄を合併した心房中隔欠損症の女児が術中の医療事故で死亡した東京女子医大事件で冤罪となった経験を持ちますが、このシンポジウムでは東京女子医科大学事件の当事者となる私と私の弁護士、福島県立大野病院事件の加藤医師と弁護士、あとは杏林大学での割りばし事件の当事者医師の医局教授と弁護士がシンポジストとして招かれました。ちょうどこの時期、私は大学との和解が成立したばかりでした。それまで自分の裁判で手一杯だったのですが、このシンポジウムでの講演準備のために他の刑事事件についていろいろ調べたのです。医師法21条の関することをネット上で隅々まで調べたほか、国会図書館で医師法21条に関するありとあらゆる本や論文をコピーして読みあさりました。その結果、分かったことは、大半の本や論文では「異状死体」を「異状死」と表現しており、診療関連死や医療過誤は全て警察に届け出ないとならないという誤解が浸透しているという現実でした。日本法医学会の「異状死ガイドライン」や、それを参照するよう求めている「死亡診断書記入マニュアル」が存在することで、こうした誤解が現場に根付いてしまったのです。その後、私が所属している東京保険医協会で、医師法第21条の正確な解釈と適正な運用の重要性について講演や執筆活動を重ね、2012年10月には、東京保険医協会会長を差出人として、厚労大臣以下担当の厚労省官僚と「医療事故に係る調査の仕組み等あり方に関する検討部会」のメンバーに対し、医師法21条の正しい解釈を求めた書面を送るに至りました。この書面を提出した効果だと思っているのですが、同月に開催された検討部会では当時の田原克志医政局医事課課長から、(1)診療関連死イコール警察届け出という解釈は誤りであること、(2)検案での「異状」とは外表異状を指すこと、(3)検案で異状がなければ届け出の必要はないこと―――などの説明があったのです。2013年1月には、同じく東京保険医協会会長を差出人として、厚労大臣を筆頭に厚労省関係者宛に死亡診断書記入マニュアルを改訂する予定があるのかといったことを問う「公開質問状」を出しました。ただし、これに対しては書面での回答は一切ありませんでした。東京保険医協会事務局によると、その後、厚労省から電話があったようで、「現在、検討している医療事故調査制度の議論が一段落したら、この件について検討するつもりだ」という趣旨の説明をされたそうです。改正医療法が成立する1週間前となる2014年6月10日の厚生労働委員会では、小池晃議員が当時の厚労相である田村憲久氏から医師法21条の解釈について考えを引き出すことに成功しています。具体的には、医師法21条は医療事故などを想定したものではなく、これは法律制定時から変わっていないと、大臣が明言しました。これだけでは不十分で、死亡診断書記入マニュアルを改訂するという確固とした約束を取り付けたいと思っていたところ、民主党の足立信也議員から厚労大臣と総理大臣に2回ほど質問をしていただけました。ここで、死亡診断書記入マニュアルを改訂する必要があるという両大臣の意思を確認することができたのです。こうしたやりとりを経て、今年2015年3月の改訂に至りました。医師法20条の通知のような周知を ――無事に改訂されましたが、例年どおり、厚労省のホームページに新しい2015年版がアップされただけで、特に通知は出されないと聞いています。 これだけ、現場に誤解と混乱を招いておいて、本当に厚労省はいい加減だなと思います。実は、医師法20条についても医療現場で解釈の誤解が長らくありましたが、これについては2012年8月31日付けで医政局が通知を出しています。医師法20条は無診察治療等の禁止を定めた条文で、「医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書もしくは死産証書を交付し、または自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。ただし、診察中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書についてはこの限りでない」と定めています。これについて現場ではいつからか、「死亡から24時間が経過していると死亡診断書が交付できない」という誤解が長らく存在していました。通知ではこれを正し、「医師が死亡の際に立ち会っておらず、生前の診察後24時間を経過した場合であっても、死亡後改めて診察を行い、生前の診察していた傷病に関連する死亡であると判断できる場合には死亡診断書を交付することができる」と補足しています。医師法21条もこの20条の時と同様に対応してほしいと考えています。 ――医師法21条の誤解は解けましたが、今後の課題は残っているのでしょうか。 今年10月からは医療事故調査制度が開始するわけですが、施行から2年が経つ来年6月には医師法21条のあり方を含め、医療事故調査制度の見直しが行われることが決まっています。これを機会に医師法21条を改正したいと考える人たちもいるようで、動きがある可能性があります。先ほど説明したとおり、医師法21条はそもそも医療事故を想定したものではないのですが、実際には外表面の異状の有無にかかわらず警察に通報してしまうことが多く、その結果として医師が刑事責任を問われることにつながっています。そこで、警察に通報するというルートをなくし、その代わりに第三者による行政処分を行えばよいと考える人もいるようです。過去の事例を見ても、医療事故を刑事裁判で裁いたところで真の医療安全はつながっていませんので、私は刑事裁判で医療事故の責任追及を行うことに反対しています。だから、現行の法律に従って警察に通報するというルートを限定するという考え方には大いに賛成します。一方で、医師法21条を改正して行政処分するという手法には賛成し兼ねます。というのも、行政処分決定までの経緯は非公開でありブラックボックスの中で決められる上に、遺族側の訴えや嘆願書などで処分内容が個人的な思惑によってアドホックに変化する印象があり、非常に危険なやり方だと感じるからです。今後、医師法21条の改正に反対する立場から議論に注視していきたいと思っています。>

「平成27年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/dl/manual_h27.pdf)は、医師会や公的病院協議会等を通じて、改訂要点の周知が必要と感じる。警察サイドにも周知された方がよいであろう。医師法(http://www.ron.gr.jp/law/law/ishihou.htm)第二十条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」の規定の正確な理解は、在宅医療の現場でも重要であろう。さて、厚生労働関係部局長会議資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2015/02/tp0219-1.html)の医政局資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/2015/02/dl/tp0219-03-02p.pdf)p37~p40、全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=180575)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000077058.pdf)p5~6にあるように、今年10月に医療法による医療事故調査制度が施行される。既に日本医師会「平成26・27年度医療安全対策委員会中間答申「医療事故調査制度における医師会の役割について」」(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/anzen26-27.pdf)が出ているが、5月8日付通知「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行(医療事故調査制度)について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20150508_01.pdf)は正確に理解しておきたい。通知(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20150508_01.pdf)p12では「遺族への説明については、口頭(説明内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)若しくはその双方の適切な方法により行う。」とあるが、どうなるであろうか。日本医療法人協会 「医療事故調運用ガイドライン」最終報告書(http://insuring-medical-practice.net/?p=449)もみておきたい。なお、全国医政関係主管課長会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000077064.html)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000077058.pdf)p44「管下医療機関に対し、管理上重大な事故等が発生した場合は、保健所等へ速やかに連絡を行うよう周知いただくとともに、立入検査等を通じ、必要な指導等を行うようお願いする。」とあり、重大事故の際には保健所にも連絡が入るよう、要請されている。
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