盧綸と言ってもあまり知る人はいない。
中唐の詩人である。生年で言えば、李
白よりおよそ50年後に生れ、白居易よ
り20年先に生れた。大暦の十才人と言
われ、その中には銭起、耿湋など日本
で親しまれている詩人が含まれている。
盧綸の生涯に大きな影響を与えたのは、
安史の乱の内乱である。幼いころに乱
を避けて江西省に移住している。大暦
になって長安に出て進士の試験を受け
るが何度も落第の憂き目を見た。盧綸
にとって長安は、花の都という風には
見えなかった。盧綸が詠んだ7言律詩
に「長安春望」というのがある。
東風雨を吹いて青山を過ぐ
却って千門を望めば草色閑かなり
家は夢中にあって何れの日にか至らん
春は江上に来って幾人か帰る
川原繚繞たり浮雲の外
誰か念わん儒となって世難に逢い
独り衰鬢を将って秦関に客たらんとは
詩人は、長安の春を景色を見ながら、
故郷を思い、世難という言葉を使って
困難な時代に遭遇した身の不遇を嘆い
ている。
この詩に出会ったのは、岳風会の連吟
コンクールの課題吟に選ばれたためだ。
詩の感性は、1200年の年数を経過し
てなお瑞々しい。