みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0964「あいうえお殺人事件2」

2020-10-05 17:59:45 | ブログ短編

 会議室(かいぎしつ)に一課(いっか)の刑事(けいじ)達が集められた。そこで犯行声明(はんこうせいめい)にあった二つの殺人事件(さつじんじけん)について再度(さいど)検討(けんとう)を始めた。
 最初(さいしょ)の事件は一週間前に発生(はっせい)。埼玉(さいたま)の会沢町(あいざわちょう)という所で赤木(あかぎ)はつえという二十代の女性が絞殺(こうさつ)された。二つ目の事件は三日前。栃木(とちぎ)の飯塚町(いいづかちょう)という所で井上裕介(いのうえゆうすけ)という五十代男性の刺殺体(しさつたい)を発見(はっけん)――。それぞれの県警(けんけい)からの資料(しりょう)では、この被害者(ひがいしゃ)たちに何の関係(かんけい)も見出(みいだ)せなかった。
 刑事の一人が言った。「やはりこれは、あのイギリスで起きた<ABC殺人事件>を模倣(もほう)したものですよ。次は<う>です。<う>から始まる人物(じんぶつ)が殺害(さつがい)されるはずです」
 ずっと黙(だま)って聞いていた探偵(たんてい)が笑(わら)い声を上げて言った。「まったくバカバカしい。この国に<う>から始まる名前(なまえ)の人がどれだけいるか分かってるのか?」
 刑事達から罵声(ばせい)が上がった。探偵は気にもとめないで続けた。「どうして君(きみ)たちは、物事(ものごと)を難(むずか)しくするんだ。こんなのは単純(たんじゅん)な事件だ。連続(れんぞく)殺人なんて妄想(もうそう)だよ」
「いい加減(かげん)にしろ!」権藤(ごんどう)刑事が探偵に詰(つ)め寄って叫(さけ)んだ。「どうしてそんなことが分かるんだ。犯行声明が来てるんだ。これは、連続殺人だ!」
 そこへ刑事が飛(と)び込んで来た。「大変(たいへん)です。また殺人が…。今度は神奈川(かながわ)の植山町(うえやまちょう)で…」
 探偵はギョロリと入って来た刑事を睨(にら)んだ。そして、かすかに微笑(ほほえ)んだ。
<つぶやき>また事件が起きてしまいました。これは、やっぱり連続殺人なのでしょうか?
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