みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0970「しずく109~ぬくもり」

2020-10-17 17:49:08 | ブログ連載~しずく

 男は微笑(ほほえ)むと、「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。これでも刑事(けいじ)だぞ。そう簡単(かんたん)にはやられないさ」
 柊(ひいらぎ)あずみは強い口調(くちょう)で、「あなたは分かってない。あいつらの本当(ほんとう)の恐(おそ)ろしさを…」
 男はあずみの真剣(しんけん)さに驚(おどろ)いて、「わ、分かったよ。もうしないから…。でも、もし何かあったら…、俺(おれ)にできることがあったら、何でも言ってくれ。なっ」
「ええ。ごめんなさいね。でも、あなたの命(いのち)にかかわることなの。あなたには生きててほしい。それが、私の望(のぞ)みなの…」
 二人は、どちらからともなく抱(だ)きあった。そして、男は出て行った。あずみは、閉まった扉(とびら)の前で、ふっと息(いき)を吐(は)いた。その時だ。背後(はいご)から声がした。
「おばさんも、なかなかやるじゃない」アキの声だった。それをたしなめるようにハルが、
「もう、そんなこと言っちゃいけないわ。おばさんだって――」
「ちょっと待って!」あずみは照(て)れくささを誤魔化(ごまか)すように、「あの、何度も言ってるけど、私はおばさんじゃないから。そこは、間違(まちが)えないでよ」
 あずみは姉妹(しまい)を追(お)いかけた。まるで子供のように追いかけっこが始まった。あずみは二人をつかまえて抱きしめると、ぽつりと言った。
「ねぇ、あなたたちのこと聞かせて。何だかとっても知りたくなっちゃったの」
 ハルが答えた。「ええ、いいわよ。その代(か)わり、今の人のこと教えてよ」
 アキがおませな子のように、「あれはもう、キスまでいってるはずよ。そうでしょ?」
<つぶやき>誰(だれ)でも人恋(ひとこい)しくなるときがあるようです。そんな時は、あなたの方から…。
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