みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0962「あの頃は」

2020-10-01 17:55:02 | ブログ短編

「ねぇ、あたしたちって何で結婚(けっこん)したのかなぁ?」
 突然(とつぜん)そんなことを質問(しつもん)してきた妻(つま)に、夫(おっと)は目を丸(まる)くして答(こた)えた。
「何だよ急(きゅう)に…。そ、そりゃあれだろ。俺(おれ)たち、愛し合って…」
「そうよねぇ。でもさぁ、思い出せないのよね。あなたのプロポーズ…」
「もう、やめてくれよ。俺…、俺の…。えっ…、俺からプロポースしたかなぁ?」
「やだ…、そうだったでしょ。だからあたし結婚…。あれっ? あなただったかなぁ?」
「何だよ…。他(ほか)の男からもプロポーズされてたのか? どういうことだよ」
「だって、あの頃(ころ)は…。あたし、ほんとに結婚したかったの。あなたは、全然(ぜんぜん)はっきりしないし。だからあたし…ちょっとあせってたっていうか…。でも、他の人じゃぁ…」
「あっ、思い出した! 君(きみ)だよ。君から結婚してって迫(せま)ってきたんじゃないか」
 妻は、急にそっぽを向いて、「あっ、大変! もうこんな時間よ。準備(じゅんび)しないと…」
「ああ、そうだな…。なぁ、ほんとにこの格好(かっこう)でいいかなぁ? スーツの方が…」
 妻は嬉(うれ)しそうに、「あの娘(こ)は普通(ふつう)でいいって言ってたじゃない」
「そうは言っても、初めて会うんだぞ。そもそも、付き合ってるヤツがいるなんて――」
「はいはい。ほら、もう来ちゃうわよ。あなたは、デンと座(すわ)っててよ」
「ああ。もし気に入らない男だったら、ガツンと言って追(お)い返すからな。そのつもりで…」
<つぶやき>父親の威厳(いげん)を見せることができたのでしょうか? 誰(だれ)もが緊張(きんちょう)する日です。
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