みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0976「仲直りしたいのに」

2020-10-29 17:51:16 | ブログ短編

 男と女が深刻(しんこく)な顔をして向き合っていた。女は、男に言った。
「あたしたち、水と油(あぶら)だと思う。これから先(さき)も、分かり合えない気がするわ」
 男は、ぎこちなく微笑(ほほえ)むと、「そ、そんなことないよ。なら、乳化(にゅうか)すればいいんだ」
「ごめん。あなたの言ってること、分かんないわ」
「だから…。乳化とはね、互(たが)いに溶(と)け合わない液体(えきたい)の一方を微粒子(びりゅうし)にして、他方(たほう)の液体の中に分散(ぶんさん)することで――」
「そういうことじゃなくて……。あたし、乳化ぐらい分かるわよ」
「だからね…。そうだ。じゃあ、僕(ぼく)の方が微粒子化して、君(きみ)の――」
「まったく分かんないわよ。そういう、変な例(たと)え方しないでくれる。もう…、そういうところが……。もうやめましょ。こんなこと言ってても仕方(しかた)ないわ」
 女は立ち上がると男に背(せ)を向けた。男は、それでもあきらめきれないのか、
「ちょっと待ってよ。時間をくれないか? そしたらきっと…、君の望(のぞ)むような男になって……。いや、それは、無理(むり)かもしれないけど…。でも、僕も、変われると思うんだ」
 女は振(ふ)り返ると、ため息(いき)をついて最後の言葉(ことば)を吐(は)いた。「あのね、そんな分かりにくい謝(あやま)り方じゃ、ぜったい許(ゆる)してもらえないよ。少しは相手(あいて)の気持ちになって考えなよ」
「そんなこといっても…。彼女の気持ちなんか、僕には理解(りかい)できないよ」
<つぶやき>これは謝罪(しゃざい)の練習(れんしゅう)なのか…。女性の気持ちを理解するのは至難(しなん)の業(わざ)かもね。
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