みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0975「しずく110~立ち話」

2020-10-27 17:51:48 | ブログ連載~しずく

 政府(せいふ)の機関(きかん)が入っているとあるビル。その廊下(ろうか)で、すれ違(ちが)う二人の男。一人はあの初老(しょろう)の紳士(しんし)で、もう一人は神崎(かんざき)つくねの父親だった。
「これは黒岩(くろいわ)さん。しばらくお見かけしませんでしたが、お元気(げんき)そうでなによりです」
「これは神崎君。どうですか? 実験(じっけん)のほうは…。上手(うま)くいってますか?」
「相変(あいか)わらずですよ。なかなか思うようにはいきません。しかし、限(かぎ)られた資源(しげん)を最大限(さいだいげん)利用するために、努力(どりょく)は惜(お)しみませんよ。昔(むかし)のように捕獲(ほかく)して隔離(かくり)するだけでは――」
「それも無駄(むだ)ではなかったはずだ。私たちが実験材料(じっけんざいりょう)をそろえてあげたから今がある。そのことを忘(わす)れてもらっては困(こま)るよ」
「そういえば、あなたのところの保護施設(ほごしせつ)から脱走者(だっそうしゃ)が出たそうですね」
「ほう、どこからそれを? 心配(しんぱい)はいらんよ。ほとんどの者は連れ戻(もど)した」
「ほとんどの者…。確(たし)か、あなたが使っていた能力者(のうりょくしゃ)が、まだ捕獲されていないのでは?」
「あれは、大(たい)した能力者じゃない。しばらく、泳(およ)がせておくよ」
「黒岩さんは、ご存(ぞん)じですか? 政府の転覆(てんぷく)を企(たくら)んでいる者がいるそうですよ。治安部(ちあんぶ)に知人(ちじん)がいましてね。今、極秘(ごくひ)で調査(ちょうさ)しているとか…。お互(たが)い気をつけないと。あらぬ腹(はら)を探(さぐ)られないように…。我々(われわれ)は政府に目をつけられていますからね」
「ご忠告(ちゅうこく)、感謝(かんしゃ)しますよ。しかし、私にはそんなことをする力はありませんよ」
 二人は意味深(いみしん)な笑(え)みを浮(う)かべて、それぞれの方向(ほうこう)へ歩き出した。
<つぶやき>二人は顔見知(かおみし)り。どちらも手の内は見せないようで、何を考えているのか…。
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