この事件(じけん)は、警視庁(けいしちょう)に届(とど)いた一通の犯行声明(はんこうせいめい)から始まった。捜査会議(そうさかいぎ)には、なぜか探偵(たんてい)が呼(よ)び出されていた。彼はこれまでいくつもの難(なん)事件を解決(かいけつ)に導(みちび)いていたからだ。
会議の間(あいだ)、探偵は何度も声をあげて欠伸(あくび)をして、つまらなそうな顔をしていた。助手(じょしゅ)の神崎陽子(かんざきようこ)は、そのたびにハラハラして周(まわ)りに頭を下げた。
会議は刑事部長(けいじぶちょう)の檄(げき)で締(し)めくくられた。刑事達が部屋を出て行くと、探偵は大きな伸(の)びをして陽子に声をかけた。
「ああっ、やっと終わったなぁ。もう疲(つか)れたよ。さぁ、帰ろ」
陽子は探偵を睨(にら)みつけて、「なに言ってるんですか。私たち、仕事(しごと)で来てるんですよ」
「だって、もう、めんどくさいし…。こんな事件、警察(けいさつ)に任(まか)せとけばいいんだよ」
そこへ一課長(いっかちょう)が声をかけた。「昼間(ひるま)君、そんなにつまらない事件なのかね」
探偵は臆(おく)することなく答えた。「そうですよ。あいうえお殺人(さつじん)事件なんて、笑(わら)っちゃいますよ。悪(わる)いですけど、もう捜査会議なんて出ませんからね」
「何だと、コラ!」一課の刑事・権藤(ごんどう)が探偵に掴(つか)みかかって叫(さけ)んだ。「てめぇ、何様(なにさま)のつもりだ。探偵ふぜいが偉(えら)そうな口ききやがって」
探偵は手をあげて、「暴力反対(ぼうりょくはんたい)…。もう、そういうのやめましょうよ」
陽子が間に割(わ)って入って、「権藤さん、すいません。もう、先生(せんせい)、大人気(おとなげ)ないですよ」
探偵は平気(へいき)な顔で言った。「じゃあ、やりますか? ちゃんとした捜査会議を…」
<つぶやき>さて、この探偵、本当に名探偵なのでしょうか? かなり癖(くせ)のある人みたい。
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