夕方(ゆうがた)になって、やっと捜査本部(そうさほんぶ)に顔を出した探偵(たんてい)。それまでの間、何度も陽子(ようこ)のスマホに権藤刑事(ごんどうけいじ)からの着信(ちゃくしん)が有ったとこは言うまでもない。権藤は探偵を見つけると、
「コラ、昼間(ひるま)! お前、今まで何やってたんだ!」
探偵は詰(つ)め寄る権藤にひるむこともなく、「そろそろ調(しら)べが終わった頃(ころ)だと思って」
「あのな、俺(おれ)たちは、お前の使い走(ばし)りじゃねえんだぞ。勝手(かって)なことしやがって――」
「時間の無駄(むだ)ですよ。さっさと報告(ほうこく)してください。ちゃんと見つけてくれたんでしょうね」
「あたりまえだ」権藤は小さなメモ帳(ちょう)を机(つくえ)に放(ほう)り投(な)げると、「借用書(しゃくようしょ)は見つからなかったが、誰(だれ)にいくら貸(か)したかこれに書いてあった」
探偵はメモ帳を見ながら、「帳簿(ちょうぼ)も見つからなかったんでしょ。おそらくパソコンに入っているんでしょう。これだけの人数(にんずう)ですから、被害者(ひがいしゃ)を手伝(てつだ)ってた人間(にんげん)がいるはずだと…」
「そんなことは分かってる。だがな、借(か)りていた人間のほとんどがネットを使ってやり取りしてるんだ。その、手伝っていたのがどんなヤツなのかは――」
「そんなのは簡単(かんたん)なことです」探偵はメモ帳を示して、「この中で、大口(おおぐち)の借り主(ぬし)をあたってください。それと、ここ…。身柄(みがら)を確保(かくほ)した方が…。僕(ぼく)の考えすぎだといいんですが」
探偵が指(ゆび)さしたところには、榎木町(えのきちょう)・遠藤(えんどう)さえ子と書かれていた。
<つぶやき>やっとやる気を出してくれたみたい。陽子さんもきっとホッとしてるはず。
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