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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0592「名探偵」

2019-07-06 18:38:03 | ブログ短編

「おい、ホームズ。いつまで寝(ね)てるんだ」
 ワトソンはソファで眠(ねむ)っていたホームズを揺(ゆ)り起(お)こした。――ホームズは突然(とつぜん)目を開けると、ワトソンの上着(うわぎ)をつかんで引き寄(よ)せ、うわごとのように呟(つぶや)いた。
「ああ、なんてことだ。そんな――」
「ホームズ、どうしたんだ? しっかりしろ。また薬(くすり)をやったのか?」
 ホームズはかすかに微笑(ほほえ)むと、つかんだ上着を放(はな)して起き上がり、茶化(ちゃか)すように言った。
「いや、もっといいものだ。この快楽(かいらく)は何物(なにもの)にも代えがたいよ」
 ホームズは気が変(へん)になったみたいに、部屋中を歩き回りながら笑(わら)い声を上げた。ワトソンは彼の行動(こうどう)に唖然(あぜん)とするばかり。ホームズは立ち止まると、
「さあ出かけよう、ワトソン君。この事件(じけん)の謎(なぞ)はすべて解(と)けた」
「ほんとうに? あの謎が解けたって言うのか?」
「私としたことが迂闊(うかつ)だったよ。真実(しんじつ)は、私たちの目の前にあったんだ」
「教えてくれ、ホームズ。いったい、何がどうなっていたんだ?」
 ホームズはそれには答えず、上着をつかむとワトソンを促(うなが)した。
「さあ、ぐずぐずするな。今からそれを確(たし)かめに行こう。次の事件が起きる前に、何としても止めなければならん」
<つぶやき>誰(だれ)もが知っている名探偵(めいたんてい)。でも、天才(てんさい)の心のうちは誰にも分からないのかも。
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