月島(つきしま)しずくは、水木涼(みずきりょう)に操(あやつ)られるまま、大木(たいぼく)に下がっているロープの前まで来てしまった。しずくの手がロープをつかんで、頭を輪(わ)の中へくぐらせる。しずくには、それを止めることができなかった。涼は楽しげに言った。
「さあ、最後(さいご)の時よ。何か言い残(のこ)すことがあれば、聞いてあげるけど?」
しずくは震(ふる)える声で言った。「私が、何をしたっていうの? あの時、約束(やくそく)したじゃない。忘(わす)れちゃったの? 私たちが、初めて会ったとき…」
「なに言ってるの。そんなの知らないわよ。さあ、始めましょうか」
涼が手を上げると、ロープが動き出した。ずるずると、まるで蛇(へび)のように上がって行く。ロープがしずくの首(くび)をゆっくりと絞(し)め始めた。少しずつ身体(からだ)が浮(う)き上がり、かかとが地面(じめん)から離(はな)れていく。涼は、苦(くる)しんでいるしずくを笑(わら)いながら見つめていた。だが、その涼の顔に苦痛(くつう)の表情(ひょうじょう)が現れた。頭痛(ずつう)のために涼が自分の頭に手をやると、ロープの動きが止まった。しずくは涼に向かって声を上げた。「やめて! お願(ねが)いよ…」
その時だ。二人の前に、柊(ひいらぎ)あずみと神崎(かんざき)つくねが現れた。次の瞬間(しゅんかん)には、しずくの身体はあずみに抱(だ)きかかえられていた。あずみはロープを首から外(はず)して、二人はその場に倒(たお)れ込む。つくねはパチンコを構(かま)え、涼に狙(ねら)いを定(さだ)めて打ち込もうとしていた。
しずくはそれを見て叫(さけ)んだ。「だめ! やめてぇ!!」
<つぶやき>ほんと間に合ってよかったです。でも、何で涼はこんなことしたんでしょう。
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