二人は結婚(けっこん)して三か月。今がいちばん楽(たの)しい時のはずなのに…。一緒(いっしょ)に住むようになって、今まで知らなかったことがいっぱい出て来た。最初(さいしょ)はほんの些細(ささい)なことだったのだが、それがだんだん膨(ふく)らんで、お互(たが)いに我慢(がまん)の限界(げんかい)まで達してしまった。初めての夫婦喧嘩(ふうふげんか)は、お互いにとって、とても辛(つら)いものになってしまった。
そこで二人は考えた。これからは、我慢しないで言いたいことは言い合おう。不満(ふまん)は吐(は)き出して、お互いの気持ちを確(たし)かめ合おうって。そこで妻(つま)は、気づいたことをどんどん指摘(してき)した。ここは、こうしてよ。何でそんなことまでいちいち言うのよ。言ったことはすぐに実行(じっこう)して…、などなど。ほんとに簡単(かんたん)なことなのだが、できないことじゃないはず。
夫(おっと)は、そんなに我慢していたのかと驚(おどろ)いた。そこで、妻に訊(き)いてみた。
「君(きみ)は、どうして僕と結婚したんだい。僕のどこを好きになったんだ?」
妻はしばらく考えた。結婚してから、夫の嫌(いや)な面(めん)ばかり目について、何でこの人を好きになったのか思い出せない。そこで妻は正直(しょうじき)に答えた。
「あなたの、どこが好きだったのか、分からないわ。――今のあなたに、好きなところあるのかしら?」
夫は茫然(ぼうぜん)として呟(つぶや)いた。「そんな…。僕のこと、嫌(きら)いになったのかい」
「あなただって、わたしのこと、愛してるって、言ってくれなかったじゃない」
<つぶやき>夫婦(ふうふ)といえども、別々(べつべつ)なんです。考え方や生活(せいかつ)リズムが違(ちが)うのは当(あ)たり前。
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