みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0537「助手の秘密」

2019-05-07 18:26:42 | ブログ短編

「所長(しょちょう)! あたしを戻(もど)してください。あんなところにいても、何も――」
 とある研究機関(きかん)の所長を前にして、見覚(みおぼ)えのある女性が詰(つ)め寄っていた。彼女は、あの等々力(とどろき)教授の助手(じょしゅ)として働いていた女子大生。教授(きょうじゅ)の研究室を飛び出して、こんな所へ来ていたのだ。
「待ちたまえ。私は君(きみ)の才能(さいのう)を認(みと)めているんだよ」
 温厚(おんこう)そうな顔つきの所長は、彼女に微笑(ほほえ)みかけて言った。「君には、まだまだやってもらわなきゃいけないことがあるんだ。これは、君にしかできないことだ」
「でも、あんな教授の研究(けんきゅう)にどんな価値(かち)があるんですか? 今だって、スカートの流行(りゅうこう)を予測(よそく)する装置(そうち)を作ってるんですよ。あたしに、ミニをはかせようとしてるんです」
 所長は驚(おどろ)いた顔をして、「それは変(へん)だ。等々力がそんなことに興味(きょうみ)を持つはずがない。あいつとは大学の同期(どうき)でね、その頃(ころ)から女性に関心(かんしん)などなかった。……これは何かあるな。すぐに戻りたまえ。どんな研究なのか突(つ)き止めるんだ」
「そんな、あたしは…。わかりました、戻ります。でも、あたし28ですよ。それなのに、何で二十歳(はたち)の女子大生ってことになるんですか? 絶対(ぜったい)、無理(むり)があると思うんですけど」
「大丈夫(だいじょうぶ)だ。君は童顔(どうがん)だから、18って言っても誰(だれ)も疑(うたが)わないよ。何か分かったら逐一(ちくいち)報告してくれ。それと、君…。スカートはもう少し短い方がいいんじゃないのか?」
「イヤです! 所長までなに言ってるんですか。絶対(ぜったい)、短くしませんから!」
<つぶやき>等々力教授の研究を探るために助手になったんですね。上司(じょうし)の命令(めいれい)じゃ…。
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