みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0541「旅する…」

2019-05-12 18:21:31 | ブログ短編

 僕(ぼく)は電車(でんしゃ)の中の忘(わす)れ物だった。ある人が首(くび)に名札(なふだ)を付けてくれて、そこから僕の旅(たび)が始まった。僕はふとしたことから自由(じゆう)を手に入れたのだ。
 これは幸(しあわ)せなことなのか、それとも不幸(ふしあわ)せなこと?
 そりゃ、ひとりで旅するんだから、辛(つら)いことだってある。出会う人は、良(い)い人ばかりじゃないからね。駅(えき)のゴミ箱(ばこ)に捨(す)てられたこともある。ここで僕の旅も終わりなのかと諦(あきら)めかけたとき、優(やさ)しい駅員(えきいん)さんが手を差(さ)しのべてくれた。嬉(うれ)しかった。助けてもらったお礼(れい)に、僕はその駅でしばらくマスコット役(やく)を引き受けた。
 旅する間に、いろんな持ち物が増(ふ)えていく。メモ帳の入った小さなリュックとか、可愛(かわい)い帽子(ぼうし)や、バッジを付けてもらったこともある。時には、無(な)くしてしまうこともあったけど、僕にとっては忘(わす)れられない思い出になった。
 乗り合わせた女の子の家に泊(と)めてもらったときは、奇麗(きれい)に洗(あら)ってもらって、ほつれたところを治(なお)してくれた。その子の家はとても居心地(いごこち)がよかったが、やっぱり僕の居場所(いばしょ)じゃなかった。僕は自由に生きると決めたのだから。
 僕は、また旅に出ることにした。今度は北へ行くのか、それとも南へ行くのか…。人任(ひとまか)せの僕の旅はいつまで続くのだろう? でも、いつかは終着駅(しゅうちゃくえき)へたどり着くはずだ。旅の終わりに何が待っているのか。それを楽しみに、僕の旅はまだまだ続く。
<つぶやき>人の手を離(はな)れて自由に旅をするなんて…。うらやましいと思うのは私だけ?
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