みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0538「花火小会」

2019-05-08 19:14:33 | ブログ短編

 友人(ゆうじん)から花火(はなび)をやるから来ないかと誘(さそ)われた。僕(ぼく)は彼女を誘って行くことにした。何もいらないから手ぶらで来いと言われたが、そんなわけにもいかないだろうと、彼女がちょっとした手料理(てりょうり)を作ってくれた。
 僕は友人の家に着くと、勢(いきお)い込(こ)んで言った。
「さあ、どこでやるんだ。近くの公園(こうえん)か?」
 友人は静(しず)かに答えて、「あの公園は花火禁止(きんし)なんだ。だから家(うち)でやるんだよ」
 そう言って、友人は庭(にわ)へ出る窓(まど)の引き戸を開けた。友人の家には、小さいながらも庭があった。猫(ねこ)の額(ひたい)ほどの庭に縁台(えんだい)が置いてあり、近くには水の入ったバケツも用意(ようい)されている。僕はさっそく庭に出て…。縁台の上に置いてある花火を見て唖然(あぜん)とした。
「えっ? これって…」僕は友人に訊(き)いた。「これだけなのか? 他のやつは…」
 友人はビールやつまみを用意(ようい)しながら言った。「俺(おれ)、それが好きなんだよ。それに、ここ、住宅地(じゅうたくち)だろ。だから、あんまり煙(けむり)や音(おと)の出るやつはまずいからな」
「それにしたって、線香(せんこう)花火だけじゃつまんないだろ。せっかくの花火なのに」
 僕が不満(ふまん)そうに言うと、友人を手伝(てつだ)っていた僕の彼女が駆(か)け寄って来て言った。
「あたしも、線香花火って好きなんです。キラキラしてて奇麗(きれい)じゃないですか」
 彼女は目を輝(かがや)かせている。僕は、「そうだよねぇ」、と言うしかなかった。
<つぶやき>派手(はで)な花火もありますが、線香花火も風情(ふぜい)があっていいんじゃないですか。
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