みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0544「運命の囁き」

2019-05-15 18:32:12 | ブログ短編

 もし、付き合っている女の命(いのち)があとわずかだと言われたら。しかも、あなたの命と引き換(か)えに助(たす)けることができると言われたら――。あなたなら、どうしますか?
 これは死に神(がみ)の囁(ささや)きに耳(みみ)を傾(かたむ)けてしまった男の物語(ものがたり)です。
 病室(びょうしつ)のベッドで苦(くる)しそうに横たわっている彼女。ベッドの傍(かたわ)らには、彼女の顔をじっと見つめている彼。何だかひどく悩(なや)んでいるようだ。彼は心の中で呟(つぶや)いた。
「俺(おれ)、この女と付き合い始めてから、何かしてもらったことって…。食事(しょくじ)に行けば、いつも俺が支払(しはら)いをした。デートのときは、何かしらプレゼントがないと機嫌(きげん)がわるいし。俺は、この女に愛(あい)されていたのだろうか? まるで、召使(めしつか)いのように使われていただけじゃなかったのか…。俺は、命をかけても、この女を助けたいのか…」
 彼の自問自答(じもんじとう)は続(つづ)いた。どこからか声がした。
「結論(けつろん)は出たかね? もうそんなに時間は残(のこ)されていない。手遅(ておく)れになるぞ」
 彼はどこにいるのか分からない死に神に向かって言った。
「ちょっと待ってくれ。そんな簡単(かんたん)に決(き)められないよ。俺の命がかかってるんだ」
「難(むずか)しく考えることはない。この女のことを愛しているなら、答えはおのずと出るはずだ。心配(しんぱい)するな。この女が死んでも、誰(だれ)もお前を責(せ)めやしない」
「……分かった。……決めたよ。俺は…、俺は、この人のことを――」
<つぶやき>彼はどんな結論を出したのでしょうか。それによってこの二人の運命(うんめい)は…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする