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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0542「煮え切らない」

2019-05-13 18:28:15 | ブログ短編

「えっ、どうして? あたしから誘(さそ)ってるのに…」
 彼女は耳(みみ)を疑(うたが)った。彼が口(くち)にした言葉(ことば)を聞き間違(まちが)えたのか――。彼女は聞き返した。
「あたし、今、デートしようって、そう言ったのよ。どうしてダメなの?」
 二人は付き合い始めてまだ日が浅(あさ)かった。彼の方から告白(こくはく)してきて、何度かデートして、この人だったら…そう思えるようになった。だから、今日初めて彼女の方から次のデートの話を切り出したのだ。それなのに、それを断(ことわ)るなんて…。
「僕(ぼく)、その日はちょっと、ほかの用(よう)があって…」
 彼はそれ以上(いじょう)のことは言わなかった。彼女は心の中で、
「あたしのこと好きだって言ったくせに…。あたしよりも大切(たいせつ)な用って何なのよ」
 彼女は少し頬(ほお)を膨(ふく)らませて、「ねえ、用ってなに? 何があるのよ」
 彼は彼女から視線(しせん)をそらして、「それは、ちょっと…。あれだから…」
 彼女の心の中で、不信(ふしん)の波(なみ)がただよい始めた。あれってなに? あたしに教えられないこと? それって、知られるとまずいってこと? まさか、ほかに誰(だれ)かと付き合ってるとか…。二股(ふたまた)かけてるの!――彼は彼女の心の内(うち)など気にもかけていないようだ。
「じゃ、今日はここで。あっ、それとも、家まで送った方がいいかな。僕は、どっちでもいいんだけど。君(きみ)は、どうしたい?」
<つぶやき>はっきりしない男は嫌(きら)われますよ。言わなきゃいけないこと、言ってますか?
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