☆つくづく、ブラッド・ピットは、現在進行形のスターなんだなと感心する。
プチ過剰な演技の数々が、異国フィルターを通した私の目には、とても魅力的だ。
・・・惜しいトコまで行くのだけど優勝を逃し続けるメジャーリーグ・アスレチックス、
そのGM・ビリー(ブラッド・ピット)が、予算が少ないと言う現実の中で、
シーズンオフになると活躍した選手が強豪球団に引き抜かれると言う事態を繰り返されるに及び、
勝利のため、他のチームとは全く異なるやり方を求め、エール大出の数学の天才による統計学に拠って「常勝チーム」を目指す。
この数学の天才役・ピーター(ジョナ・ヒル)も良かった。
この作品の作り手は、『ソーシャル・ネットワーク』も作ったそうだが、『ソーシャル…』の主人公の超然としたキチガイ天才ではなく、
天才であり、自分のマネーボール理論に圧倒的な自信を持ってはいるが、それを他者に認めてもらえるかの不安を常に持っていると言う、観る者が共感を得られる点がある。
ビリーのワンマン性もまた、「天才」の一種であろう。
私は、先日の選挙で大阪知事から大阪市長になった橋下徹氏とビリーを重ね合わせて見た。
非常に鋭くも誤解を受けやすく、独善的でエキセントリックな点が似ていると思う。
さて、ビリーのチーム改革は、周囲との軋轢を生む。
そこが、どうしても、組織論を深く考えずにはいられず、身にしみるし、「何が正しいのか?」「何の結果を持って正しかったと判断できるのか?」と悩ませられるのだった。
この作品では、「優勝」がその成果とされる。
しかし、数年に及ぶ「マネーボール」理論の実践も、惜しいところまで行くも、アスレチックスの地区優勝とまではいかないようだ。
対して、豊富な資金で、GMとしてのビリーの引き抜きを、破格の値段で行なおうとまでしたレッドソックスは、ビリーに断られつつも、「マネーボール」理論を行ない、メジャー優勝までしている。
資金のない苦肉の策ではじめた「マネーボール」理論によるチーム強化が、結局は、資金の豊富なチームによって行われると、より結果を残すという皮肉な結末になっている。
「マネーボール」理論の是非を語っておきたい。
私は、この理論が「持たざる者の福音」だとは思っている。
私は、現在、バイトのほうで、六ヶ月くらいずーっと平均実績1位を継続している。
だが、他のバイトの人に比べ、圧倒的に作業に対しての知識・情報はない。
でも、元々持っていた知力・体力・時の運・機転・知恵で実績ナンバー1をずーっと継続している。
そういった経験もあり、「マネーボール」理論とは、個人レベルにはあてはまらないものだと思う。
だが、組織においては、分業制が厳密に分かれていれば、確実に機能すると思う。
簡単に分ければ、「予算を許可する側」、「頭を使う管理側」、「体を使う作業者側」などだ・・・。
分業のそれぞれの対象者が、その場を全うして全力で仕事を続ければ、システムは機能し、結果は向上しよう。
展開的に、やや、システムのチームへの浸透具合の描写が弱い気もするが、それは、管理者側の視点ではないと思うことにした^^;
◇
ビリーの娘役のケイシー(ケリス・ドーシー)は、その顔立ちやはにかむところが普通っぽくてなかなか良いが、
何よりも歌がうまい!
その歌声(クリック!)が、クライマックスで、ビリーの寂しい心を浮き上がらせるシーンが、この作品の完成度を非常に、非常に高めた。
しかし、アメリカの球場の、「熱気」や「情熱」の雰囲気は独特でたまらないものがありますね^^
(2011/12/04)