☆・・・むつ市に戻った私は、県道4号線を北上、霊場<恐山>を目指した。
ここから、20キロ程なのだそうだ。
近い!
まさか、世にその名を轟かす<恐山>にそんなにも気軽に行くことになるとは思ってもみなかった。
◇
東北の夜は早い。
流石の私ではあるが、この東北でのアグレッシブな行動は、午後4時までと決めていた。
午後5時には、既に、この地には夜の帳が否応なく降りる。
暗闇の中で、<恐山>に向かうような行為だけは避けなくてはならない。
午後4時になったら、「撤収ー!! 」が鉄則だ。
◇
山に入ると、すぐに、いつもの「樹海」の中の道が始まる^^;
私は、この旅全部を通し、絶対に見つからない「死体遺棄」に相応しいスポットを一万箇所は見つけられると思う^^;
それほどに、あまりにも日本は広いのだ。
◇
・・・山道に不釣合いな、プードルを散歩させている老婆がいた。
私が車を走らせながら見ていると、こちらを向いて目を「クワッ!」と開いた。
私は、身の毛をよだ立たせた。
そして、どうやら、行き先は<恐山>だけという、山の一本道に入ると、道の脇に、お地蔵様が、距離をおいて定期的に立っていた。
基本的に、お地蔵様は好きな私だが、場所が場所だけに、ビビらされる対象だ。
でも、5,6体が並んでいると、「多いな、おい!」とツッコミを入れてしまう^^;
一人旅なので、私は「独り言」が非常に多くなってきている^^;
◇
・・・で、初めはお地蔵様ばかり目に入っていたのだが、その横に石柱もある。
どうやら字が書かれている。
通り過ぎるたびに、注意深く観察していたら、「五捨一丁」「五捨丁」「四捨九丁」などと記されている。
<恐山>までの距離のカウントダウンなのだ。
◇
・・・到着した。
荒涼とした土地が広が・・・ッ、と、感想も言うまもなく、異様な匂いが車内に充満してきた。
「こ、これは、遂に、西松建設の攻撃か! 毒ガス攻撃か!」
と思いきや、霊場の硫黄の匂いであった。
私は、いつも、排気ガスをシャットダウンするように、外気取り込みはしないでいたのだが、<異様な硫黄>臭は、どこからか車内に入ってきていた。
私は、喉が痛くなった。
◇
脇を見ると、<三途の川>があった^^;
しかし、この<恐山>にも人がほとんどいない。
迷い込んだらしい中年の観光グループが、私と入れ違いに、車で出て行っただけだった。
駐車場も空っ欠だった。
私は、チケット売り場と思しい小屋に近づいた。
そこには、「年内は閉門」の文字があった。
<恐山>と言ったら、なかなかの観光スポットだと思うのだが、東北の方は欲がない、と言うか、それ程にこれからの冬が厳しいのかな。
◇
かくして、私は、今夜の眠る場所を三沢辺りと定め、国道338号線を南下する。
行きとは道が違うが、なるべく、同じ道を通りたくないのだ。
だって、違う風景を見たほうが楽しいじゃん^^
しかし、もう暗くなっていた・・・。
◇
おそらく、進行方向の左手は太平洋で、昼間ならば、いい眺めが広がっているのだろう。
しかし、暗闇のドライブだ。
道は適度に車が走っていて、なかなか道がクネクネしているので、他の車との兼ね合いでハイテクニックを必要とする。
道に高低差もあるので、対向車のライトがアップに見えたりして、眩しいし、危ない。
状況では、私が数珠繋ぎの先頭になることもあり、後続の車は、私を「遅い奴!」と思っているかも知れないが、
前の車のテールランプをトレースすれば良い後続と違って、先頭の車は、不鮮明な視界に、道を切り開いていかなくてはならないので大変なのである。
しかし、私の後続の車は、「督戦隊」の如く、私を監視し張り付いてくる。
「だったら、お前、抜かせよ!」
と、私は独り言・・・。
「抜かせない以上は、お前は俺のドライビングに敬意を表すべきだ!」
と、独り言は続く。
◇
さて、下北半島の根元、三沢市の外れで、私はモバイルパソコンを起動させ、今夜のヤサ(インターネットカフェ)を探す、が、三沢市には24時間営業のインターネットカフェはなかった。
では、青森に戻るか・・・?
しかし、同じ場所を戻るパワーがなかった。
「ならば!」
と、私は八戸に向かうことを決断する。
ちょうどフルマラソンと同じくらいの距離だった。
私は、<Kマート>で缶コーヒーを購入し、先を急ぐのだった。
「また、どうぞ~^^」
と、バイトの娘っ子が、私の背中に向かって言うのだが、その申し出を受けるのは難しい。
◇
暗闇のドライブが再開される。
狢の礫死骸もあった。
それを避けるのも一苦労である。
途中、漁港で小休止する。
この町には、イカが特産物として、看板に多く描かれていたので、明るいのはイカの水揚げか?
私は暗闇の中で、舫いにつながれ、波間に漂う船を写真に収めておいた。
何が何やら分からないだろうが、まあ、雰囲気を感じてくれ。
途中から、眠気も酷かった。
私は、大声を張り上げて歌う。
サザンやアニメの歌を歌うのだが、そもそもレパートリーが少ないので、すぐに、歌う楽曲も底がつく。
仕舞いには、
「♪カーッパ、カッパ、カッパのマークのカァッパ寿司!!」
なんてのも歌ってしまう始末^^;
また、坂道では、ブレーキペダルを常に意識していなくてはならず、私は右足が痛くなってきてしまった。
まあ、一晩寝れば直るだろうけど・・・。
◇
八戸に着くも、目的のインターネット・カフェ<フリークス・八戸店>が見つからない。
たまらず私は、市川という地名の公民館の陰で立ちションした。
私は、今回の旅ほど、立ちションを繰り返したことはない。
それ程に、人がいないのである。
街中にも、夜となれば、人が消える。
◇
やっとこさ、目的地に辿り着き、私は、バタンキューで寝るのだった。
硫黄でやられた喉は痛く、風邪の前兆かもしれないと、私は薬を飲んでおくのだった。
(2009/11/11)
☆下北半島・・・。
本州最北端のダム、<川内ダム>を目指していた。
川内川に沿った県道46号線を北上する。
まだまだ紅葉が美しい。
途中で左折し、県道253号線に入ってから、次第に、肝が縮み上がってきた。
段々と急峻な渓谷を進むからだ。
「肝が縮みあがる」とは、オチンチンが竦むことである。
女性には分からない人もいるだろうが、オチンチンは、長い部分と金玉と、そして、「根っこ」もある。
その「根っこ」の部分が、恐怖でキュキュキュと萎縮するのだ。
・・・高さを強調する撮り方は私にはでけん^^;
どうやら、私は、高所恐怖症であることが今更ながら分かった^^;
その、平地から高所への移行時、その「肝が縮む」境界線も、今回、分かってきた。
が、今回は、本州最北端という寂しさも心理的に作用し、恐怖を増加させていよう。
◇
・・・11/09
第15のダム<川内ダム>に到着!
・・・「北の孤高の王者」の風格です。
こうして写真を撮るのも怖くてたまらなかった。
近くにある「道の駅」でも、帰路のことを考えると、恐怖でそわそわして、そそくさと退散するのだった。
◇
まだ、午後の二時半で、余裕があったので、いったん、むつ市まで戻ることにした。
で、そこが<川内ダム>との分岐点だったので、<恐山>に向かうことにした。
だから、平地になってから、水を得た魚のように、私は、高速で飛ばした。
陸奥の海岸線、国道338号線をギュンギュン飛ばした。
多くの車を引き離した。
しかし、バックミラーの彼方から、追いついてきた車があった。
ツートンカラー・・・。
パトライトこそ付いていなかったが、パトカーであった。
私は、節操なくスピードを落とす。
「やべ・・・^^;」
私は、いつ停められるか、ひやひやした。
パトカーは何キロも、私の後方に張り付いていた。
そして、いつしか消えた。
私はホッと胸を撫で下ろし、その後も、法令速度を慣例速度程度の超過で走行するのだった・・・。
◇
(おまけ)
「海上自衛隊大湊航空隊」のゲート前に展示されていたヘリコプターと飛行機。
この辺は、自衛隊の施設が多い。
弾薬庫(補給所)もある。
(2009/11/11)