笑うとき 目覚めるとき
眠るとき 海をながめるとき
必ずママを思い出します
「グレイスが消える」、これが原題です。
6月13日、京都シネマにて鑑賞。イラク戦争で揺れるアメリカの異色作品です。グレイスとは、主人公スタンレーの妻の名前です。
アメリカがイラク戦争を始めてどのくらい時が経過したのか?はっきりと記憶していません。多くの兵士が戦死したことだけはしっかりと覚えています。その中には男性兵士と肩をならべた多くの女性兵士もいたのですね。女性兵士が戦地で戦うようになったのは、旧ソビエト連邦が最初だったそうです。「大祖国戦争」とも称された第二次世界大戦では、いつ戦死するかわからない危険な第一戦に相当数の女性兵士を送り出し、実際に多数の女性が戦死しているというのですから、驚きです。
今のアメリカ社会では、男女同権ということが認められるようになったため、現在軍人の14.3%が女性、階級も様々らしい。そして何とこの女性たちの4割が子持ちというのだから、これも驚きです。
そんな実情をモチーフに作られた「さよなら いつかわかること」。妻が戦場に出征し、残された夫と、その娘たちのお話です。
突然にもたらされた妻の訃報・・・・。夫スタンレー(ジョン・キューザック )は悲しみに暮れる 間もなく、この事実を幼い娘たちに伝えなければならない現実と向き合うことになる。遠方にいる母親が恋しくて仕方がない2人の娘とのコミニュケーションが上手くいっていない彼は、なかなか切り出すことが出来ない
絶望から、時間をかけてどのように立ち直り、生きる希望を見出していく3人家族の姿が何となく愛おしさを感じる。
スタンレーはホームセンターで働いていた。12歳の長女ハイディ(シェラン・オキーフ)はしっかりもので大人っぽいそして8歳の次女 ドーン(グレイシー・ベドナルジク)
ハイディは父が不在中にこっそり、戦争のニュースを見る。次女ドーンは、毎日母親と同じ時間に互いのことを想うという約束を守っていた。母を恋しがる娘たちとなかなかうまく接することが出来ないスタンレーはぎこちなく毎日食卓を囲むのだった。
そんなある日、妻の訃報がスタンレーの元に届く途方にくれるスタンレー、幼い娘たちにどう伝えたら良いのかわからないまま2人を外食に連れ出す。衝動的にドーンが以前から行きたがっていたフロリダの遊園地までで行くことに・・・・。
父親の突然の行動に?がるハイディ、無邪気に喜びはしゃぎまわるドーン夜中にこっそり自宅にして、妻の声で録音されている留守電の応答メッセージを聞くスタンレー。
フロリダまでの道中、プールでの遊び、ショッピング等を楽しみながら、時間を共有しながら、3人は徐々に絆を深めていく。
フロリダへ行く途中、父の実家へ・・・・・。叔父ジョンとの食事
父の弟ジョン(アレッサンドロ・ニヴォラ)は、彼女たちに世の中のすべてを鵜呑みにせずと話す。自分たちで考えることを教える。
ハイディは、父の様子がおかしいことに気づき、何か隠していると・・・・。
遊園地で至福のときを過した後、覚悟を決めたスタンレーはいよいよ娘たちと浜辺で向き合った。
どんな思いで彼は娘たちに伝えたのか・・・・・・。
戦死した女性兵士であり、妻のグレイスはワンカットもありません。戦闘シーンもまったくありません。でも戦争によって、家族を失われたこの3人の心情がひしひしと伝わります。
アメリカ政府が起こしたイラク戦争は、ベトナム戦争のときと同様、国内ではかなりの批判が高まっていると聞きます。
弟ジョンとスタンレー、それぞれの考えや思いも対照的です。スタンレーはアメリカの戦争に対して、正しいと考えていました。それがベストだと・・・・・。妻の戦死を知って戸惑い、その意義が分からなくなっている。ジョンはそうではありません。だから、娘たちに教えたのです。戦争が正しいのか?それを自分たちで考えて、判断して欲しいと。
クリント・イースト・ウッドが音楽を担当
これまでにも、「ミスティック・リバー」(03)や「父親たちの星条旗」(06)で作曲を手がけ、放送批評協会賞やグラミー賞にノミネートされたイースト・ウッドだが、ジョン・キューザックから依頼を受ける。家族愛を描いた本作に心を打たれて快諾
ジェームス・C・ストラウス(監督・脚本)
米・インディアナ州出身。短編作家、漫画家として活躍し、作品が文学雑誌に掲載されている。「リターン・トゥ・マイ・ラヴ」(05)の脚本で注目され、「さよなら いつかわかること」が脚本2作目。監督初挑戦となる。
http://www.graceisgone-themovie.com/(英語版)
※シンプルなストーリー展開ですが、父スタンレーと2人の娘の心情が上手く表現され、素晴らしい作品だと思いました。戦争によって家族を失われた家族の思い、悲しみがひしひしと伝わります。戦争がもたらす悲劇を二度と繰り返して欲しくないですね。
この監督さんは、新人とは思えません。
脚本も兼任していますが、しっかりしたものです。