懐かしさと感動

１９９１年の秋、私は主人に誘われてお食事に出かけました。
結婚に至る初めてのデート…と言うことになります。

主人が卒業した大学に近い私鉄沿線に、そのお店はありました。
お店の中に張り出している厨房では、焼き物や揚げ物が作られていて、
その周りのカウンターと壁に沿って並ぶテーブルは、お客さんで賑やかでした。
その当時の私には、そんな居酒屋さんに入るのは初めての経験でした。

何を頼んだらいいのかわからない私に、主人が勧めてくれたのが
「揚げだし豆腐」と「つくね」です。
どちらも初めて食べたのですが、そのおいしさは今でも覚えています。

思い出の地での懐かしさと感動を味わうため、
今回、私達はそのお店に行くことにしました。
実はそのお店、阪神淡路大震災の被害に遭って改装してあり、
当時、お店の真ん中にあった厨房は、今は壁沿いになっていました。
お店の客席は満員で、順番待ちをしなければ入れないほどの盛況ぶりでした。

４０分ほど待った頃、カウンターに通してくださいました。
私はアレルギーということもありますので、マヨネーズ、からし、
ドレッシングやソースなど、食べないものもあります。
まず注文の時、係りの人が希望を一つ一つを細かく聴いてくださり
次に作る人も確認に来てくださいました。
最後に、出来上がったものを私に手渡す時、もう一度確認をしてくださるのです。
そして、お店を出るときには、待ち時間が長かったことも詫びてくださいました。

決められているから挨拶をする…のではなく、
しなければいけないと言われているからするのでもない…。
お客様がお店に入ってこられてから出られるまでの間、
どの係りの人も、お客様を心からもてなそうという気持ちが伝わってきました。
心地良くて、とても感動しました。
こんなお店って、今ではほとんどなくなっているような気がするのです。

昔から感じていたこの雰囲気が、２０年経った今でも足を向けさせてくれる…、
それを確認することができました。

そうそう、「揚げだし豆腐」はメニューから消えていて残念でしたが、
「つくね」は注文して食べてきました。
とっても美味しかったです。
又、機会があれば、是非行きたいお店です。


今度、いつ行けるかわかりませんが、
記念にいただきました。