まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

中国独禁法の執行強化

2017-11-03 00:09:45 | 商事法務
○ 中国の独禁法は、2008年に施行されまだ10年も経っておりませんが、日本の企業でも課徴金を課されている例も種々あり注意が必要ですね。同法では、競争者との水平的な反競争的協定、メーカと販売者との垂直的な反競争的協定、支配的地位の濫用、反競争的合併等を禁じています。更に、再販売価格の維持の禁止、市場支配的地位を有する企業の価格設定、ダンピング、排他的取引、差別・取引拒否と不公平な取引条件要求(優越的地位の乱用)等を禁じていますね。

○ 中国独禁法13条では、水平的反競争協定の締結することを禁じています。価格協定、生産・販売制限、市場分割、新技術等の購入制限、共同ボイコット等を定めていますが、更に特徴的なことに「国務院独占禁止法執行機関が認定するその他の独占的協定。」というのもあります。ガイドラインもきちんとしていないようです。これだと、恣意的運用が可能ですね。現に摘発事例を見ると、米国、ドイツ、日本、フランス、台湾等の企業がやり玉に挙がっています。中国国内企業では、酒や粉ミルク等の再販価格維持の重要産業ではない企業の「やりすぎ」を摘発している程度ですね。やはり狙い目は、儲けている外国企業ですね。また、組立型産業、典型的には基本設計ができたあとの詳細設計で下請企業と一緒に詳細設計の検討会を行う談合体質の自動車業界ですね。自動車業界の摘発事例では、米国が有名ですね。米国では価格協定は、実際に競争を制限しているか否かを認定するまでもなく全て違法(per se illegal)で刑事罰ですね。ただ再販売価格維持行為(resale price maintenance = RPM)については、合理の原則(rule of reason)により判断され、競争制限的で無い場合は違法では無いという米国最高裁判決はでています。米国では、日本人で米国の刑務所に収監されている人が20人ぐらいいるとされています。

○ 中国の独禁法執行機関は、日本の公取と違い、3つに分かれています。国家工商行政管理総局(SAIC)は、非価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・権限の濫用等を担当し、国家発展改革委員会(NDRC)は、価格関連の反競争的協定・支配的地位の濫用・、権限の濫用等を担当、中国商務部(MOFCOM)が合併規制等を担当します。つまり、日本等は一般の省庁から独立した独立行政委員会である公正取引委員会やFTCが担当するのですが、中国はまさに担当部局が担当しているところより、当然政策・担当部局の方針に従って運営されているわけですね。ですから、独立性など無い、即ち政策に沿って行われる、これが恣意的運用される原因ですね。また、非価格関連と価格関連が分かれていますが、実際の事例では、これら明確に分かれることはなく両方の要素があるため、例えば、SAICが非価格関連から調べても、ついでに?価格関連も権限を越権して調査しているようですね。

○ 課徴金(罰金)最高額は、通信用半導体の独占企業、米国クアルコムですね。ダントツの約61億元(x17円1000億円)ですね。2番目はMercedesの3.5億元です。これは車の再販売価格維持を理由としています。3番目には日本企業登場です。自動車のワイヤーハーネス等のメーカの住友電気工業で2.9億元です。そのあとは常連の矢崎、デンソー等が続きます。ただ、この調査では、日立に2014.3への抜き打ち調査で、イモずる式で判明したもので、日立は調査に全面的に協力してリニエンシー制度が適用され、免責罰金0ですね。続いて2014.8には日系ベアリングメーカ4社が狙われ、日本精工に1.7億元等の罰金を科しています。

○ クアルコムがダントツで高い罰金を科されたのは、不当な価格設定(失効済の特許にもRoyaltyを課した。クロスライセンスを否定して自分の特許のみにRoyaltyを課した。)、抱き合わせライセンス契約を締結、また不公正な販売条件を課した等の、やりたい放題をしたからですね。

○ ここ数年、中国は独禁法の執行強化を図っています。当然、事業者が海外で中国向けの価格協定・顧客分割を協議しても適用される域外適用(効果が及ぶ国の独禁法が適用効果主義)もされます。従来、独禁法は米国・EUの独禁規制が厳しいとの常識に加えて、中国が要注意国になりましね。
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