○ 現物出資について、会社設立時は変態設立事項として会社法33条に、成立後については207条に規定されています。原則は、裁判の選任する検査役の調査が必要ですが、多くの例外事項を定めて、弁護士・公認会計士・税理士(法人を含む)の「価額が相当であることの証明」があればよくなりました。その内容は前回のブログで記載しました。
○ 株式を対価として、金銭以外の財産を出資するのが現物出資ですね。法では財産と言っていますが、資産ですね。財産的価値のあるものなら何でもいいわけですね。資産と言っても費用を資産化した繰延資産は財産的価値はないですから、例外です。
○ 現物出資財産といえば、例えば、不動産、特許権、ブランド、のれんなどですね。のれんについては、自己創設のれんは認められていないので、有償で譲り受けた場合ですね。パーチェス法ですから、時価ベース純資産と譲受対価との差額がのれんとなります。
現物出資は、単品あるいはひと塊りの資産を想定していますが、立法者にとっては想定外かもしれないですが、別に「事業」を現物出資しても言いわけですね。
○ というわけで、現物出資の方法による事業譲渡・譲受、会社分割(吸収分割と変態設立事項として新設分割)が可能になるわけですね。制限は株式を対価とするということですね。整理するといかぐらいでしょうか(簡易・略式手続の部分は除く)。また重要な財産の処分・譲受に該当するという前提での整理です。
現物出資 事業譲渡 会社分割
出資者 被出資者 譲渡者 被譲渡者 分割会社 承継会社
取締役会 ○ ○ ○ ○ ○ ○
株主総会 無 *1 特別決議 不要(*2) 特別決議 特別決議
対価 新株 ― 金銭・新株 - 新株等 -
債権者保護手続 無 無 無 無 必要 必要
株式買取請求権 無 無 有 原則無 有 有
公取報告 *3 無 無 有 有(*4) 有
*1 募集株式発行の手続きによる=公開会社は取締役会、非公開会社は総会特別決議。普通は第三者割当増資となる。公開会社でも有利発行の場合は特別決議
*2 会社成立後2年内のときは事後設立の特別決議(467I⑤)。事業全部の譲受の場合は特別決議
* 3 議決権の10%,25%,50%超の場合、今は事後報告、来年から20%、50%超の場合事前報告
* 4 分割会社・承継会社が共同で届出書作成(待機期間は届出後30日。届出日は届出書を公取に提出した日ではない。実務上45ぐらい必要)
○ 現物出資では、対価関係=割当られる株式数とその価値の判定が難しいですね。契約関係は、会社分割では分割計画書や吸収分割契約、事業譲渡では事業譲渡契約書ですね、現物出資の場合は、その会社と現物出資の契約を締結したうえで、当該会社が会社法の募集株式の割当ての手続きをすることになりますね。
誰か、大規模な事業譲渡・吸収分割を現物出資の方法でしませんか?
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