まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

RoyaltyのWithholding Tax(源泉税)について

2020-09-03 09:51:48 | 商事法務
〇 海外の合弁会社やその他外国企業に、投融資や技術支援するケースが多いですね。その際、当該外国企業が利息、配当、ロイヤルティ等の支払いを提供元の企業に支払うお金について、現地でWithholding Taxが課せられます。この源泉税は、投融資元・技術提供元が現地の課税当局に支払う税金で、投融資先、技術援助先が、提供元のために源泉徴収して支払います。提供元が、現地にP/E (Permanent Establishment =恒久的施設)をもっていなくても課税されます。
  従い、ローン契約、技術支援契約等には、源泉税の取り扱いについて規定を設けておくことが必要です。

〇二重課税防止条約
支援元の日本企業が、支援先国で源泉課税されています。支援先の企業から受領する収益について日本で課税されたら、同じ収益に二重に課税されることになりますね。この二重課税を防ぐために、各国間で二重課税防止条約が締結されています。従い、現地で源泉税の納税証明書を取得して、これを日本の税務署に提出すれば、日本の税金から当該源泉税を税額控除(Tax Credit)してくれます。

〇技術支援契約書中のWithholding Taxに関する例文
a. When JV (技術提供先の合弁会社) receives invoices for the technical assistance from the Parent Company, JV shall make the payment by the end of next month after the month in which JV receives the invoices. For the avoidance of doubt, JV sends the amount of invoice for the technical assistance fee after deducting the withholding tax.
b. Any income tax imposed on payments to the Parent Company under this Agreement shall be borne by the Parent Company and shall be computed and paid in accordance with the laws of xxx (JV所在国), and any convention, treaty or other agreement relating to taxation between xxx and Japan. In the event that JV is required to withhold such tax from the amount to be paid to the Parent Company, and to pay the tax for the account of the Parent Company, JV shall provide the Parent Company with certificates of such tax payment.
技術支援契約では、派遣するエンジニアの旅費・交通費・宿泊費等を派遣先が負担するのが一般的です。派遣時には金額はわからないので、派遣終了後に立替金請求書を支援先に送付して回収します。この実費は、技術支援の対価ではないので、源泉徴収は不要です。別請求書にして全額を支援先から回収します。しかし、この実費を技術支援料に加えて請求する場合は、明瞭に支援料と実費の区別ができないので、現地の課税当局は全額に対して源泉税を課税するのが通例ですので注意しましょう。
また、現地税務当局の納税証明書は、ロイヤルティ支払毎に発行してくれる税務当局もありますが、国によっては3か月に一度しか発行しない国もありますので注意が必要です。

〇 Withholding Tax部分を相手にMark-up してもらう場合
 配当については、当然株主平等の原則ですので、配当金額を増額してもらうことはできませんが、ローンの支払利息や技術支援料については、相手に源泉税部分を増額してもらうことも考えられます。その場合の例文は以下です。でも、これはがめついですね。
All payment of interest on and principal of each note shall be free and clear of, and without deduction for, any and all present and future taxes (including withholding taxes), levies and imposts imposed, levied, collected or assessed with respect thereto by the Government of xxxx or any political subdivision thereof.

〇 関連事項
1) 日本の居住証明:契約書には、上記のような文言を書きますが、実際に現地政府から納税証明書の交付を受けるには、日本の会社であること、即ち二重課税防止条約の対象会社であることを証明する書類、例えば、インドネシアでは、指定のForm=Certificate of Domicile of Non-Resident for Indonesia Tax Withholding、指定のフォームのない場合には、日本の会社であることを証明するCertificate of Residenceに税務署の確認Stampを貰う必要がありますね。
2) 現地政府から納税者番号取得:ローン契約の場合などは要求されない場合もあるのですが、技術支援料をもらうときに、これは日本の会社の現地政府への納税ですので、日本の会社自体の納税者番号を現地政府から取得しておく必要がありますね。例えば、米国企業からロイヤルティを受け取る場合には、種々の手続きが必要です。①法人用 Form W-8BEN-Eの提出、②米国納税者番号Employer Identification Number: EINの取得ですね。詳しくは、JETROの解説(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-001117.html )を見てください。結構邪魔くさいですよ。

〇逆に海外企業にRoyaltyを支払う場合
1) 上記とは逆のケース、即ち日本企業が海外の企業にお金を支払う場合の源泉徴収税について言いましょう。即ち、非居住者等に対して、日本国内で源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、原則として、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収しなければなりませんが、工業所有権、著作権等の使用料等の場合は、所得税20% + 復興特別所得税が加わり20.42%ですね。

2) 租税条約締結国の企業へ支払うロイヤルティの源泉徴収税率は、10%とか5%等に軽減されていますが、支払いをする前までに、外国企業が、租税条約に関する届出書(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/pdf2/252.pdf )を源泉徴収義務者=支払者を管轄する税務署に提出する必要があります。

3) よくある問題点
(a) 相手方担当者が、源泉徴収税や二重課税防止条約を理解していない。
(b) 相手が、公的な研究機関の場合は、この種届出書類を作成しないので、支払者=日本企業がかわりに記載して税務署に出すのが便宜のためによい。(届出書のP2の代理人に関する事項に、支払者の名称・住所を記載)
(c) 便宜のため、日本側企業が書いて税務署に届出を出そうとすると、税務署の担当者が、不当な要求をいとも簡単に求める場合がある。例えば、①該当契約の日本語訳文を出せ。②相手から委任状を取れ等ですね。
-30-40ページもある研究開発や技術支援契約の日本語訳等つくれるか!!どうせ、数字のところしか見ないくせに、税務署員が生意気ことをいう(言わなかった人もいました)。また、給与所得を会社は源泉徴収して納税していますが、従業員は会社に委任状を出していますか!
⇒税務署員が、不当な事を言ったら、はっきり反論しましょう!言われたら倍返し!!



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