まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

英国法上のReceiver①

2014-12-13 09:41:37 | 商事法務
○ 以前Floating Charge(浮動担保)について記載しました。今回は、英国の倒産処理の法律であるInsolvency Act 1986のReceiverについて記載します。旧英連邦即ち、豪、ニュージーランドのみならず、India, Malaysia, Singapore等の担保・倒産制度の参考になりますね。日系企業では金融機関を除き、一般的に取引先から担保(特定担保=fixed charge)等を取れませんので、無担保の一般債権者を念頭に置いて記載しますが、結論を先に言いますと、Receiverが選任されたら、まあ回収はあきらめた方が良いですね。殆ど回収できません。あきらめた方が楽なのですが、社内の審査部などからぎゃぎゃ言われて、税務上損金処理をしないといけないので、それなりの書類を揃えて社内手続きを進めます。労多くして回収が殆ど見込めない、後ろ向きの処理ですね。

○ 英国では、会社が銀行等から資金借入を行う場合には、社債=Debentureを発行する形式が多く、融資の条件とともにDebentureの担保として、流動資産等も含む会社の全財産を担保物とするFloating Chargeを設定するのが一般的です。借入会社が元本・利息支払その他一定の事由=Defaultが生じた場合には、Debentureの条件に基づき、裁判所の介入なしに銀行などがReceiverを選任することができ、その選任は会社登記所で登記されます。Receiverの役割は、社債権者へ出来るだけ有利な弁済を目指して会社財産を処分することですが、必要有り、それの方が有利だと判断される場合は会社の事業を継続することもあります(この場合は、Managerとも言われます)。Receiverは、社債権者の為に選任されますが、Fixed Charge等を押さえている、社債権者に優先する債権を持っている債権者もいますから、その債権者への弁済が優先されます。
  尚、Receiverには2種類あり、Floating Chargeを実行するためのReceiverをAdministrative Receiverと言います。以下の説明はこのReceiverの事です。裁判所が選任するReceiverは、Official Receiverと言います。

○ 債権者の法律上の優先順位は以下です。
 ① Fixed Chargeの権利者
 ② 法人税、VAT(付加価値税)、社会保険料、賃金等のPreferential claims(優先的請求権)
 ③ Floating Charge(浮動担保)の権利者
 ④ 一般債権者(Unsecured creditors)
Receiverの目的は、社債権者への返済ですので、①②は自分よりも優先順位だから仕方なく行いますが、④は関係ないです。即ち、一般債権者への弁済には関与しません。即ち、一般債権者の事など知りませんという対応です。もし仮に一般債権者に回す財産がある場合には、会社(清算手続き開始後は清算人)に引渡し、会社が分配を行います。

長くなりそうなので、Receiverの権限・義務、関連事項などは次回に記載します。
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