まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

譲渡制限株式の譲渡手続きについての疑問

2012-03-03 11:40:40 | 商事法務

 

 譲渡制限株式の制度というのは変な制度ですね。譲渡を制限するかは定款に記載します。定款やその変更などは株主総会等で決めますね。ですから譲渡制限するか否かは、最終的には株主が決めるわけですね。それなのに、譲渡承認の請求は、会社の取締役会や代表取締役に求めます(取締役会設置会社の場合)。自分たちでルールを決めておきながら、自分たちで選任した取締役の会議等に承認を求めるというのは、理屈としてはおかしいですね。でも、まあ発起人や他株主に頼まれて少数株主になったとか、お金が必要になったとか事情が変わってきますので、時期が立てば株式を売りたいという事情も出てきます。非上場企業の譲渡制限株式の場合は、市場・相場・時価があるわけでもないので簡単には売却できませんけど。その会社の取引先とか、主要株主等に頼まざるを得ないわけですね。<o:p></o:p>

 

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 株式の売買価格は時価というのが常識だと思っていたのですが、最高裁は元本保証の株式買取を認めていますね(2010.7.18のブログご参照)。最高裁も結構でたらめですね。評価額1万円のものを、5年前の払込金額が5万円なので5万円で買うべし、「事業再編の効果による企業価値の増加も期待」とか「設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば、払込金額である5万円を基準とすることには、一般的にみて相応の合理性がないわけではなく」などという著しいこじつけ論理を展開しています。まあ、多分払込のときに、頼まれて将来元本+金利ぐらいで買い取るとかの裏約束があったのでしょう。でも、元本保証の約束があった等という根拠が表に出せなくて、こんなこと言っているのでしょうか? 昔、特金・ファントラで証券会社の裏約束が世間を賑わし糾弾された事件がありました。今回のオリンパス事件も、最初はこういった類いかも知れません。後で梯子をはずされたんでしょうね。<o:p></o:p>

 

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 だいぶ話しがそれました。譲渡制限株式の話しです。譲渡制限株式の譲渡承認の決定は、取締役会非設置会社の場合は株主総会決議ですね。株主総会等で承認された定款ですからその意味では理屈にかなっています。取締役会設置会社の場合は、取締役会の承認決議です。また定款で代表取締役の承認等に変更することが可能になりました(法139条)。今回はこれらの会社法の規定についての疑問です。<o:p></o:p>

 

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○ 話しがややこしくなるので、取締役会設置会社で、定款で特則を定めていない会社が、取締役会で譲渡承認をしない場合を前提として話します。譲渡承認請求しても、承認されないときは、①会社自身で買い取るか、②別の買取人を会社が指定することが必要です。①は特定株主からの自社株式取得なので、請求者に議決権を与えない株主総会の特別決議で決定しますが、財源規制(155条②&461条①)が働きますので、分配可能剰余金が無ければ、総会を開けないですね。②の買取人の指定は取締役会の決議で決めれば良いですが、事前に買取人に事情を話して、買取の準備をしておかないといけません。ですから主要株主とか創業者とか緊密な取引先等に頼むことになりますね。分配可能剰余金も無し、指定買取人を見つけられないときは、会社としてはもうどうしようも無いですね。みなし承認がなされて当初の譲受人に譲渡出来ます。

 

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○ 上記①で、総会を開催して承認決議を取る場合ですが、譲渡承認請求されれば会社は2週間以内に承認・不承認の通知をしなければなりません。2週間ぎりぎりでやはり不承認として、また買取人も見つからないので総会を開催する場合は、まず基準日を定めて基準日の2週間前までに基準日公告をしないといけません。公告もすぐに決めてすぐに出来ないですね。1週間ぐらいは前にアレンジが必要です。(まあ、124条は「基準日を定めたときは公告」と言っていますので、別に定めなければ公告などしなくてよいと考えても良いかもしれません。所詮譲渡制限会社ですから、株主は把握しています。譲渡制限会社に取っては、意味の無いどころか支障のある制度ですね。実際はあまり守られていませんけどね)。基準日の翌日ぐらいに総会招集通知を出しますが、これも総会の2週間前までに出さないといけません。公告に1週間の準備+2週間+2週間で5週間ぐらいかかります。不承認の通知から40日以内に買取通知を出さないと、当初の譲渡が承認されたとみなされますので結構ぎりぎりで忙しいです。<o:p></o:p>

 

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 譲渡等承認請求者は、譲渡承認請求をするときに、承認請求する株式数を定めなければなりません(138 条)。一方、譲渡承認株主総会では、買取対象株式数を決めなければなりません(140)。従い、100株譲渡したいのに、1株だけ買いますということが起こりえます。おかしいですね。こんな規定は。<o:p></o:p>

 

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 総会で決議するのは、自社株を買い取るかどうかです。その価格は、譲渡請求者と決める前です。即ち、どれだけ分配可能剰余金が必要か分からないのです。分配可能剰余金の金額は請求者以外の株主の利益に多きな影響を与えます。買取価格は、その後会社と請求者との協議により定めます。勿論、協議が整わなければ裁判所に売買価格の決定を申し立てますけれどもね。要するに売買価格が分からなければ承認するかどうかの判断が出来ない株主もいるかもしれません。この辺の事は会社法には規定していません。

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 譲渡制限株式の譲渡手続きの制度は、不完全な制度ということですね。

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