まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

純資産を株主資本というのは誤りです

2009-12-13 21:23:54 | 企業一般

       今回は、普通の考え方からは非常識と思えることですが、私に言わせれば超常識ということを言いましょう。即ち純資産は株主資本(評価・換算差額は除く)であると考えるのはおかしいということです。資本はリスクキャピタルであり、ハイリスク・ハイリターンである。払込資本は零になるかもしれないが、利益がでればそれが留保されていても株主のものという考えが一般的となっています。しかしそうですか?と言いたいですね。単純に現実のお金の流れから見てみましょう。

       投資家の視点から言うと株式取得はCash outですね(会社にお金が入る場合はCash Injection)。現金が出ていきます。それに対し配当を受け取ります。現実のCash Inですね。分配可能剰余金(普通の配当原資はその他利益剰余金ですね)がいくらあっても配当がないと投資家には、お金は戻ってきません。しかし上場株なら売却できます(勿論現実的には流動性等も問題もありますが)。キャピタルゲインも得られますが、キャピタルロスが出るケースも多いですね。

       現実のCash OutとCash Inという視点で言えば、留保利益は投資家には関係がありません。それなのになぜ留保利益を含む純資産を株主資本と言うのでしょうか?会社型ファンド等のケースを除いて、会社が解散するときは残余財産分配請求権を持っていても実際に残余財産を受けられる例がありますか?まずないですよね。

       ところで貸借対照表の純資産の項目区分は、計算規則141条に定められています。纏めると以下ですね。(新株式申込証拠金と自己株式申込証拠金は除外しています。)

【純資産】

○ 株主資本

I 資本金

II資本剰余金 (資本準備金&その他資本剰余金)

III利益剰余金 (利益準備金&その他利益剰余金)

IV自己株式(これは控除項目)

○ 評価・換算差額等

(+新株予約権)

上記の内、評価・換算差額等は性質が違いますので、今回の議論の対象外ですね。問題は「株主資本」ですね。いつの間にか利益剰余金も含めて「株主資本」だとされました。

       「純資産は全て株主のもの」と言う意識は昔からありましたか?そうではなかったのではないでしょうか?「会社は株主のモノ」→「純資産は株主のモノ」。こういう考え方は、米国の市場原理主義にかぶれた学者・経営者、企業人等が米国から、常識だとして日本に持ち込んだ認識ではないでしょうか。

○ 会社法のどこに、株式会社は株主のものである等と書いてあるのですか。書いていません。それなのに、会社計算規則により「株主資本」と言うようになりました。何が株主資本ですか! 昔の商法時代は、純資産は資本の部と言って、資本金、資本準備金、利益準備金、その他の剰余金(任意積立金・当期未処分利益)に区分しており、「株主資本」等という言い方は無かったですね。

○ 一方、株式とは、株式会社における出資者である社員の地位を細分化して割合的地位の形にしたものですね。株式の保有者は株主です。株式の払込が行われると、原則は資本金ですね、但し、1/2までの金額は資本準備金とすることができます。即ち、上記の内で株主のお金は資本金と資本準備金だけです。まあ、資本金と資本剰余金と言っても良いでしょう。

○ 利益剰余金(実際は「その他利益剰余金」だけのケースが多い)は、株主が拠出したお金ではありません。その会社の役職員が、汗水たらして稼得したお金部分です。勿論株主は元手を出してくれましたから、配当で報いないといけません。しかし、元手が自動的に増幅した訳ではありません。役職員が働いたから利益剰余金ができたのです。利益剰余金は株主が生み出したモノではありません。それなのになぜこれを株主資本と呼ぶのでしょうか?利益剰余金はその会社の役職員のモノです。まあ、そうは言ってもタダの計算上の数字(資産―負債)ですけどね。

       多くの人が、純資産は株主のモノと思いこんでいます。この基本認識が間違っているのです。日本の株式会社の純資産は、役職員と株主のものです。

関連のブログは、以下ですね。こちらも合わせてご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070624

コメント (1)
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