まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

企業価値とのれん代の算出

2009-08-16 11:19:35 | M&A

       会社計算規則11条には、「会社は、吸収型再編、新設型再編又は事業の譲受けをする場合において、適正な額ののれんを資産又は負債として計上することができる。」としていますね。のれんは買収会社の投資勘定と被買収会社の公正価値評価による純資産の額との差額ですね。純資産=資産―負債ですから、「買収金額=資産―負債+のれん」となります(特殊な場合はマイナスのれんもありますが)

       買収金額の算定で一般的な方法として定着してきたのはDCF法ですね。米国の経営大学院で教えているCorporate Financeの基本理論です。優秀な多くのMBAの人達・学者先生が、様々な疑問も提示せず・十分な批判もせず、単純に日本に持ち込んだ猿まねの考え方です。この方法が不適切であることは、このブログでもしばしば書いてきました。Warren Buffettも、「バフェットからの手紙」で、「企業の所有者、すなわち株主たちにとって、学者たちのリスクのとらえ方は全くもって的外れで、ばかばかしいほどです」と言っていることも紹介しました。

企業価値・投資収益評価-DCF法について

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070206

資本コストWACCの誤った考え方

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20080102

       DCF法による、企業・事業価値の算出は、その企業の将来のfree cash flowの現在価値の総和ですね。つまり企業が永久に存続する(Terminal Valueperpetual baseで計算した場合ですが←そんなことは現実にはあり得ませんが)前提等で計算されますね。前提の置き方と算出する人の意図で、いくらでもと言うと言い過ぎかも知れませんが、かなり自由に数字が作れる数字遊びの世界です。

       投資銀行(証券会社)などが、売り手Rep. ・アドバイザーとしてInformation Packageを作って持ってきます。大きく分ければ、①事実の記載、と②将来の業績予想・事業計画の2部構成です。事実はともかく、②の部分については、これ程信用出来ないものは無いですね。売り手企業は、買い主を見つけて企業・事業を買って貰えば良いわけですね。自分はこの企業を見捨てて売却します。あんたが買えば将来こんなにもうかりまっせというのが、事業計画の内容です(普通の金融商品販売では、必ず儲かると言えば金融商品販売法違反ですね)。勿論リスクファクターは書いていますけど。自分が経営を継続するわけでも無い将来の事業計画に基づいてDCF法等に基づき企業価値を算出しています。

  経営が替わるのに(一部は残るケース、あるいはMBO等もありますが)、また株主が替われば、相互補完・相乗効果も替わってきますが、そういう重要ファクターを無視したDCF法に基づく企業評価は、ばかばかしい方法です。

  これから事業が成長し利益も出るのに、何故売却するのですか?(勿論戦略転換等いろいろ理由があるにしても)。儲かるなら何故継続して自分で経営しないのですか。

では、話を元に戻して、どのようにして企業・事業価値を算出すればよいかですが、いろんな方法がありますが、一つとして方法としては、上記の算式の「のれん」を計算すれば良いのですね。

       事業は、人を前提として、物・金・情報(知恵)・(メーカ等なら)技術等が有機的一体として機能することによって始めて成り立ちます。上の算式を分解すると以下ですね。 

企業価値・事業価値・買収金額=資産―負債+のれん

         物+金=資産―負債

        のれん=情報(知恵)・技術等

  「のれん(営業権)とは、当該企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術及び特殊な取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と判例では言っていますね。簡単には「超過収益力」等を言われています。

   まあ、「超過」かどうか別として、資産・負債だけ、特に例えば有形・無形固定資産等は収益・利益を生み出す基盤ですが、それ自体では収益・利益は生みません。従い、情報(知恵=例えばビジネスモデル等)・技術などに基づく利益創出力がのれんなわけですね。

   のれんは維持、改良・強化、追加等しない限り、急激に低下しぼんで行きます。のれんは非償却資産だなどという考えが、欧米(国際会計基準と米国会計基準)では一般的です。不可解な考え方です。

       ではのれんの適正な額はいくらなのでしょうか。簡単です、公正な価格とか適正な価格とかは無いのです。当事者が交渉して合意した価格がのれんの価格です。公正な価格では無く、合意価格です。即ち、税引き後利益の5年分とか、税前利益の3年分とか、あるいは経常利益の3年分とか、当事者が合意すれば良いのです。豚に真珠、のれんを取得する意味の無い人には、価値はありませんが、自分の事業と相互補完等ができる人には価値がありますし、高値で買ってくれる可能性があります。

       単体のれん(営業権)は、耐用年数5年の無形の減価償却資産です。これを有償取得した企業にとってみれば、やはり取得後3年目ぐらいには利益を出さないと買収する意味がありません。勿論相乗効果を十分考えれば、経常利益の5年分ぐらいののれん代を払っても3年目ぐらいで利益が出せるかもしれません。従い、のれん代は利益(税後、税前、経常)の3-5年分ぐらいが妥当だと思いますが、その範囲内で、当事者が交渉を重ねて合意した価格がのれん代となりますね。

       利益やキャッシュフローで企業価値を算出する方法がいくつかあります。例えば、EBITDAmultiple等ですね。利益だけということで、ちょっと単細胞的ですね。

私は、「資産―負債+のれん」という考え方は、結構合理的な考え方だと思います。

コメント
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