天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

東直己著『半端者』刺青の方お断り立札あっても憲法で戦力放棄謳いつつ自衛隊ある様に体に絵描いた人が混入

2012-01-17 21:12:36 | 日記
今日の日記は、今読んでいる東直己著『半端者ーはんぱもんー』(2011年3月刊 ハヤカワ文庫版)のことです。添付した写真は、この著書の表紙です。
私は昨日紹介した『探偵はバーにいる』の次に読む東直己ススキノ探偵シリーズの作品は、この『半端者ーはんぱもんー』に決めていました。何故なら、この小説は<俺>や高田の北大生だった頃の若き日が登場するからです。また、いわばデビュー作の前日譚だから、彼らのことをよく知ることができると私が思ったからです。
そして、この著書にもとても興味深い指摘に私が強く共感し、何か因縁みたいなもの感じる記述がありました。その記述を、この著書から一部引用・掲載します。
『昼下がりの<フィンランド・センター>は、本当にのどかな世界だ。一応、刺青の方お断り、などと書いた立て札が正面玄関真ん中に直立しているが、憲法で戦力の放棄を謳いつつ自衛隊があるのと同じように、体に華麗な絵を描いた人々は混じっている。・・俺の左隣にザブンと男が入って来た。・・俺はしみじみ、相手のようすを眺めた。胸板から背中一面、華麗な色とりどりが踊っている。・・この男に確かに質問したのだよ。「どうして刺青は、消えないんでしょうか」・・つくづく自分がイヤになった。なにバカなことをやってるんだ。・・「俺もな、ちょっと気になって調べてみたんだ。まず、あんたの言うとおり、体の細胞は、全部入れ替わるんだそうだな。とすると、当然スミも消えるよな。いや、消えるような気がするんだ。俺はな。じゃ、まるっきりの大損だ。ちょっと困る。せっかくガマンしたのに、無駄ってことになっちまったらな。で、これを彫ってくれた彫り師に聞いたよ。消える心配はないのか、ってな。」「大笑いされたさ。そんな話、聞いたこともないってな。」・・思わず溜息が出た。とにかく、顔は覚えた。街で見かけたら、近寄らないようにしよう。』
この思わず笑ってしまう”くだり”を読んでいて、私はふと去年狸小路のホテルで体験した出来事を思い出しました。東直己氏が書いた当時(私注:映画『ブレードランナー』がこの著書に登場するので封切られた1982年頃か?当時私も札幌に仕事で居た)から30年近く経っていながら、”憲法で戦力の放棄を謳いつつ自衛隊があるのと同じように、体に華麗な絵を描いた人々は混じっている”と筆者が興味深く言及したように、サウナや公衆風呂には混入して来るのでした。
そして、最近某ストリップ嬢のネット掲示板に、彼女が自分の腕に彫ったタトウー(イニシャル?だけ)のことがとても話題になっていました。その刺青も程度の差はありますが、”元々それほど目立たないし経年変化で薄くなってきた”と書き込みした投稿者に、この彫り師が語った”消える心配はないのか?そんな話、聞いたこともない”の言葉を、私は捧げたいです。
この小説の<俺>の若き日の熱き生き様を、札幌に居た当時の私とダブらせて、私は、この『半端者ーはんぱもんー』を、とても興味深く読ませてもらっています。
コメント
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