天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

正義に絶望、現実が思い通りにならないと知り、弱き者の恨みを晴らす仕置人になった主水は藤田さんそのもの

2010-04-12 22:25:00 | 日記
今日の日記は、キネマ旬報4月上旬号に掲載された『追悼 藤田まこと 最後まで庶民の側に立った俳優』(金澤誠著・映画ライター)の投稿文です。以下に、私がとても共感した金澤誠さんの藤田まことさん追悼文の一部を引用します。
『藤田まこと最大の当たり役は、やはり「必殺」の中村主水。亡くなる前年まで、36年にわたってこの役を演じ続けた彼は、最後の仕事になった「時代劇専門チャンネル」のオリジナル番組「必殺を斬る」のナレーション収録が終わった後に、「必殺とは一生縁が切れないでしょう。<京都殺人案内>も<剣客商売>も、主水が変身した姿ですよ。時代劇役者としての原型は、主水ですね」と言っている。・・・中村主水はかって佐渡金山奉行所に勤務し、やがて同心株を持つ中村家へ婿養子に入った男である。佐渡金山時代に囚人たちの凄惨な姿を見て、一度正義に絶望した人間でもある。現実が思い通りにならないことを知っていて、だからこそ、弱き者の恨みを代わって晴らす仕置人として働くことを決めたのだ。・・・その主水の立場と心持のあり方に、藤田まことの俳優としての基本姿勢を感じる。・・・最も印象的だったのは昨年10月、最後の「剣客商売スペシャル 道場破り」を京都で撮影中にインタビューした時である。この日の撮影が終わって撮影所の楽屋に帰った彼は、体力的につらそうだった。それでも「剣客商売」と他の池波正太郎作品について精力的に答えてくれたのだが、市井の中で飄々と生きる「剣客商売」の秋山小兵衛の魅力を語る一方で、「だけど僕は<鬼平犯科帳>は嫌いだね」と強い口調で言った。藤田まことの中では、世の悪を幕府の側から裁く「鬼平」の火付盗賊改方長官・長谷川平蔵の世界は、自分と相容れないものがあったのだろう。あの時の語気の強さを思うにつけ、最後まで彼は庶民の側に立つ俳優だったと感じる。今はその冥福を祈るばかりである。』
金澤さんが指摘したこの俳優・藤田まこと像に、私もまったく同じ思いです。必殺とは一生縁が切れないと語った藤田さんの中村主水の最後を、スペシャル作品「必殺2010」でどのように見せてくれるか?私はとても楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする