田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

明日の観光を考える Vol.3

2016-11-29 19:20:01 | 大学公開講座
 「お墓参りが観光に???」…、ちょっと意外な組み合わせに戸惑った。講師はお墓の考え方・在り方が近年変わりつつあるという。どのように変わり、どのように変化していくのか、講師とともに考えてみた。 

 北大の公開講座「明日の観光を考える」の第3講が11月24日(木)夜にあった。
 講座は、今回の講座の特徴である前回講師の下休場教授が前半の講師を務めた。
 氏のテーマは「自然・文化の保全と地域活性化につながるエコツーリズムとは」と題して前回の続きを講義された。

 下休場教授の講義の要旨は、「環境」は資源であり、護るべきものである視点に立つべきだという。その上に立って、「観光」があるべきだという主張である。
 そうした観点に立ったとき、「エコツーリズム」は今後の観光の在り方に大きな示唆を与える旅行形態であると氏は強調されたのだと理解した。

                    
                   ※ 第3回目の講義を担当された上田裕文准教授です。

 続いて登壇された上田裕文准教授は全く異なった観点から観光を論じた。そのテーマは「お墓参りがピクニック ~ドイツの樹木葬墓地」というものだった。
 上田氏は近年人々の「墓地」に対する考え方が大きく変化してきていると分析する。
 その上田氏の分析をやや乱暴にまとめると、人々の墓地に対する関心が、少子高齢化や家族構成の多様化から、死生観や墓地需要が多様化してきたと分析する。
 その結果として、人々は「墓地」に対して、これまでは〔尊厳性〕・〔永続性〕・〔固定性〕を求めていたものが、〔個人化〕・〔無縁化〕・〔流動化〕へと変化してきて、やがて〔共同化〕・〔無形化〕・〔有期限化〕に変化していくだろうと予想した。
 そうした変化の中から発想されたのが「樹木葬」ではないか、と問題提起をされた。

              
              ※ 樹木葬の一つの形態である「シンボルツリー型」の墓地です。

 その後、上田氏はドイツの「樹木葬」の実態について視察・研修した結果を話されたのだが、そのことは割愛し、氏が私たち受講者に出された課題について紹介し、それに対する私の思いも記すことにしたいと思う。上田氏から出された課題は次のとおりである。
 「今後、人口流動がさらに進んでいくと考えられます。そのとき、墓地とふるさとの関係はどうなっているでしょうか。 また、日本において遺族が集まれるお墓のしくみとはどのようなものでしょうか」 というものだった。

 このことは私自身が抱えている問題でもあるのだが、ここでは一般論として考えてみたいと思う。
 日本において「墓地」とは、人々の流動化が少ない昭和前期くらいまでは、上田氏が分析したように墓地は〔尊厳性〕・〔永続性〕・〔固定性〕という考え方が人々の間にいわば常識として存在していたと考えられる。しかし、時代の進展が人々に生まれ育ったところに定住し続けることを許されないような状況となってきた。それでも人々は前時代の常識を懸命に維持しようとしてきたのだが、それが今や維持することが困難な状況となってきて、新たな「墓地」の在り方が模索されてくるような状況になったと考えられる。
 人々の流動化がますます進むと考えられる今後においては、これまでの「墓地」の考え方を維持すること自体が難しく、新たな発想での「墓地」の在り方を考えるのが当然の流れのように思われる。そこには「ふるさと」という概念を人々が抱くことすら難しくなっているのではないだろうか。
 また、「遺族が集まれるお墓」という概念自体がはたして存在するのだろうか?少子化の今、遺族自体が一家庭ということも珍しくなく、遺族が集まるという概念すら消滅していくのではないかと考えられる。

 さて、「墓地」に対する考え方、在り方が上記のように変わってくることを前提としたとき、「お墓参りと観光」が果たしてリンクするものだろうか?
 私にはどうもリンクしないように思えるのだが…。敢えてリンクする場合を考えると、上田准教授で提起するように「樹木葬」という考え方だろうか?まるで公園のように整備された中、樹木などの周りに埋葬する「樹木葬」が隆盛を見せてきたとき、「お墓参りがピクニック」のようになるドイツの例を示されたが、果たして日本においてそうした現象が現出するかというと、私にはあまり現実感のない話である、と日本の現状においては言うことができるのではいかと思うのだが…。

              
              ※ こちらは「ガーデニング型」という樹木葬の一つの形態です。
 
 今回は予め回答を上田准教授のところに届けるのではなく、次回の講義においてそれぞれの考えを出し合い、上田准教授を交えてのディスカッションを行う、と上田氏からお話があった。
 どのようなディスカッションになるのか、興味深いところである。(またVol.4でレポします)