



フランク・オコナー(マイケル・オドノヴァン)
何もかもをつまびらかにする必要はないとは思いますが
何もかもを明け透けにしたがる現代人から見ると謎が多い…
そんなお話が収載された短篇集でした。
「この人は誰を殺したの?」「この人は過去に何があったの?」と
ついつい聞いてみたくもなりますが、余計なものを削ぎ落としたストーリーは
そんな野次馬根性を寄せ付けることもなく
あたかも「これこれ、野暮な詮索はしなさんな」と
村の長老に諭されているような気分にさせてくれました。
『法は何にも勝る(The Majesty of the Law)/1935年』


一人暮らしの老人ダンの家を馴染みの警官が訪ねてきます。
ダンはお茶の支度をしパンやバターをふるまって、彼をもてなします。
二人は禁酒法以前の酒のうまさなどの話しに花を咲かせ、警官は腰を上げます。
そしてダンにどう罪を償うか、穏やかに問いかけます。
男の正義ってなんなんでしょ? 男から敬意をはらわれる男ってどんな人?
どんな経緯で相手を傷つけたか分からないのですが、ダンは被害者の男性より
村人たちに敬われてるみたいです。
『ジャンボの妻(Jombo's Wife)/1931年』


飲んだくれで暴力を振るう夫に嫌気がさしていた妻は
ある手紙を、夫の暴力から救ってくれた知人のパア・ケネフィックに見せてしまいます。
このことからジャンボは彼らの団体に追われる身になりますが
妻はなんとか夫を助けようと、逆にパアのことを密告します。
やっぱり夫婦は夫婦なのね・・・(ため息)
ジャンボはヒドい男にしか見えないんですけど、それでも庇うんですね。
『僕のエディプス・コンプレックス(My Oedipus Complex)/1950年』


戦争中ほとんど家にいなかった素敵なパパが終戦で家に帰ってくると
幼い少年ラリーの生活が一変します。
パパは、ママとラリーの幸せなひとときや楽しいお茶の時間を邪魔する
イヤな男でしかありませんでした。 ラリーはパパと闘います。
このあとラリーはパパと徒党を組んで、産まれたばかりの弟ソニーと戦いますよ!
男だらけの家にいるとママも大変ですね、愛情の奪い合いです。
上にあげた3つは私が好きだったもので、どちらかといえば謎めいていないものですが
どうやら罪を犯したらしい女性や、アメリカで何かがあってアイルランドに帰って来たらしい
息子の嫁などが登場する、ミステリアスな雰囲気のものもあります。
小説の決まり事からいえば「実は私・・・」とか打ち明けても良さそうな内容なんですが
彼女たちは何も語ってくれません。
まわりの人々も知りたい心を(グッと)抑えて彼女たちを許していきます。
白黒はっきりすることなく、グレーゾーンをたゆたうのもまた心地よし
っていう感じの一冊です。
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