まりっぺのお気楽読書

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『O侯爵夫人 他六篇』悲劇につぐ惨劇 ・(>_<;)・

2009-02-23 00:06:30 | ドイツの作家

ハインリヒ・フォン・クライスト

クライストも劇作家だそうで、当時流行のオペラや演劇のことを考えれば悲劇
それもちょっとやそっとじゃない悲劇を書きたくなるのは分かるのですが
救いのない話しって、読んでてブルーになるのよね
凡人の私はやっぱりハッピーエンドが好きですよ。

ドイツの作家はそんなに読んでないんですけど、ヘッベルだっけ?
彼もこのクライストも脳髄や脳漿飛び散るって話しが何編かあるんですが…
ドイツの方って腕力強いんでしょうか?

敢えて、特に救いがないものを選んでみました。

『チリの地震(Das Erdbeben in Chili)/1807年』
罪深い痴行で処刑されることになった貴族の娘ヨゼーファと家庭教師イェロニモ。
しかしまさに刑が執行されようとした時、大地震がおこり2人は命拾いしました。
避難先で大ミサが行われることを知った2人は知人が止めるのも聞かず出かけ
怒り狂った町の人びとに見つかり、取り囲まれてしまいます。

出かけなきゃよかったのにね…
それにしても未婚で子供ができたからって死刑ですか?
今の芸能人なんか半分ぐらい死刑になっちゃいますけど。

『聖ドミンゴ島の婚約(Die Verlobung in St.Domingo)/1811年』
使用人だった黒人たちに制圧されたドミンゴ島の白人たち。
指導者的人物コンゴ・ホアンゴーは、自分の混血の妻と娘トーニーをつかって
逃れ出た白人たちを殺戮していました。
ある日スイス人グスターフが助けを求めて訪れ、ふとしたことから
トーニーと愛し合うことに…トーニーはグスターフを助けようとします、が…

この物語の黒人たちはたしかに残虐です。
でも彼らもいきなりやってきた者たちに生活を破壊された人びとです。
悲恋の姿をして人種の問題をなげかけた1篇だと思います。

『拾い子(Der Findling)/1811年』
亡くなった息子の代わりに孤児となった貧しい少年ニコロを連れ帰った富豪ピアキ。
本当の息子のように愛し、なにもかもを譲ったのですが
ニコロの邪悪さは成長するにつれに増していきます。
とうとう母がわりの美しい妻に手をかけようとするニコロを見つけたピアキは…

愛を注いでも孝行息子に育つわけではないのですねぇ。
実の親子でもうまくいくわけではない親子関係、養子縁組というのも難しいものです。

けっこう暗い話しでもちょっとしたシニックとかユーモアが潜んでいるという
物語は多いのですが、この短篇集の中には鐚一文そういう話しはありません。
まっくろけです。

作者自身も34歳で人妻と心中したそうで…根っからの悲観論者でしょうか?
根が真面目すぎたんですかね?
他にクライスト作品を見かけたことがないのですが、長篇の方が持ち味が
表れているんじゃないでしょうか? あったら読んでみたいです。

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