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1888 - 1922年 ヘンリー・ローソン
とてもいい短篇集でした。
オーストラリア出身のローソンによる、主にブッシュを舞台にした物語が10篇。
かなり前「不器用、ですから・・・」というCFがありましたが
あんな感じの男性たちがたくさん登場します。
オーストラリアの大地を駆け回る荒くれ者の話ばかりだと思ったら、かなり優しいです。
何百キロにもわたって牛を追い、羊の毛を刈り、小麦を育てながら
大きさがハンパじゃない大陸をさすらう労働者たちの素朴なエピソードが描かれています。
農場を出たら二度と会うことがないかもしれない仲間との
つかずはなれずなのに温かさが感じられる友情にじ~んときますよ。
好きだった物語を3編ご紹介します。
『家畜追いの妻(The Drover's Wife)』
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見渡す限り何も無いブッシュの中に立つ丸太小屋で夫の長い留守を守る妻と子供たち。
家に蛇が入り込んで寝ずの番をすることになった夜、妻は夫の留守中に切り抜けてきた
様々な危機を思い出していました。 山火事、洪水、浮浪者たち、そして子供の死…
唯一女性が主人公の物語です。
故郷を後にして働く男性たちもしんどかろう、しかし妻だって!
なぜか夫の留守中にばかり大切な物を失うという妻の不運も過酷です。
『帽子回し(Send Round the Hat)』
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人の不幸を聞きつけると帽子を回して金を集めようとする大男ボッブ。
仲間たちはうんざりしながらも金を入れてくれます。
女に無縁だったボッブが故郷の好きだった女のもとへ帰ることになりました。
その前日、ボッブの帽子が盗まれ町中で回されました。
優しい人がでてくる良い話、単純なんですけど、その書き方がさぁ…ズルい。
電車の中で泣けてきちゃって、でも前に戻って読み直したりして。
『爆弾犬(The Loaded Dog』
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鉱脈を掘っていた3人の男が魚を捕るために用意した爆弾を
いつの間にか犬がくわえています。
しかもごていねいに導火線に火まで点いて…
一目散に逃げる男たちと、じゃれつく犬の結末やいかに?
この物語と、もう一篇ニワトリが主人公の物語があるのですが、すごく笑えます。
ファンタジックではありませんが、動物たちの嬉しさや狼狽ぶりが目に見えるようで
読んでいて楽しくなりました。
ローソンは16年ほど暮らしたオーストラリアのブッシュを題材にした作品を
後年ロンドンで、しかもアル中の混沌の中で書いたそうです。
いくらオーストリアに実際に住んでいたとはいえ、まるで目の前にブッシュがあり
羊の毛刈り人がいるような話しっぷりには驚きました。
口当たりのいいことばかりを書いているような気もしますが
(例えば、白人以外は一切登場しません)そういう問題は他の方に任せて…
という感じで、自分が好きだった風景や人たちだけを思い出しながら描いた
作者にとって幸福な物語だったのではないでしょうか。
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