まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『若かった日々』若いうちに読んでおこうか…

2011-06-12 10:50:18 | アメリカの作家
THE END OF YOUTH 
2003年 レベッカ・ブラウン

作者の “ 自伝的短篇集 ” ということで、アリス・マンローの『林檎の木の下で』的な
世界観を期待して手に取ったのですけど(Book-offで100円だったし…)

うぅぅん…『林檎の~』が自分の過去を題材にして創作した作品という印象が
強かったのに対して、こちらは完全に自分の記録、私小説という感じがしました。
とても正直すぎて少し戸惑った…というのが率直な感想です。

他人の人生なのでとやかくいう資格はないですけど…
印象に残ったお話しをいくつかあげてみます。

『暗闇が怖い(Afraid of the Dark)』
小さい頃は暗闇が怖くてよく叫び声をあげ母を起こしていました。
毎年母と訪ねていた祖母の家では、祖母が叫び声をあげ母が慰めていました。
大きくなってからは逆に叫び声をあげる母を慰める役にまわっていました。
祖母も母も私も、皆同じような声をあげます。

母娘三代に渡って夜中に叫び声をあげるとは…いったいなにがあったっていうんでしょう?
暗闇、恐怖心、叫び声という一般的な材料で描いているというのに
ありきたりではなくどこか哀しみが漂ってます。
詳しくは書かれていませんが、時代も内容も異なる女の事情があるのでしょうね。

『ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ(Nancy Booth,Wherever You Are)』
毎年参加していたサマーキャンプに行った最後の夏、他の女性とはタイプが違う
スカフというキャンプネームのスタッフがいました。
ある眠れない夜ポーチで彼女と会話してから、毎晩語り合うようになりました。

このお話しと、次の『A Vision』というお話しは、作者の性、つまりレズビアンへの
目覚めのようなことが書かれているようです。
私だって年上の女性や凛々しい女性教師への憧れが思春期に無かったとは申しませんけど…
人はこのようにして自分の性向に気づいていくものなのね。

『母の体(My Mother's Body)』
母の家で看病をする合間にクリスと部屋で眠っていると、姉が入って来て
「母が死んだ」と言いました。
良い香りのするお湯で拭き、ジャスミンのオイルをぬって洗い立てのシーツでくるみました。

作者はご存知の通りホームケアワーカーとして末期の人々をケアした経験をもとに
(私は読んでないけど)『体の贈り物』を書いた人です。
見慣れていると言ってはなんですが、落ち着いています。
でも淡々とした話しの中に、母親への感謝が込められているような気がしました。

ほとんど家にいなかった父親と母親の愛憎がちりばめられていますが
それはあまり気になりませんでした。
結婚生活から離婚に至るまでの話しは、どんなことであれキレイにはいかないものね。

しかし年を経てから思い出すことで、両親に、特に父親に対する苦々しさはかなり薄まり
良い思い出として語られているような気がしないでもありません。
過去を許すとはこういうことかもしれないですね。

それより死をテーマにした後半がリアルで、ちょっと気が滅入ってきました。
20年後ぐらいに読んだら身につまされて恐怖を感じそう…
今のうちに読んでおいてよかったです。

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