まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

フランス王シャルル9世妃 エリザベート

2009-03-13 01:19:13 | フランス王妃・王女
敬虔すぎるのが玉にキズ
シャルル9世妃 エリザベート・ドートリッシュ


1554~1592/在位 1570~1574

フランソワ2世の死で弟シャルル9世が即位して再び摂政になった母后カトリーヌ
旧教と新教の融和を図ろうと、シャルル9世をイングランド女王エリザベス1世
結婚させようとしましたが、17歳も年上のエリザベスに相手にされませんでした。
エリザベス1世は、自分が旧教徒か新教徒か立場をはっきりしていませんでしたが
両方に寛容で、教徒間の争いはおさまっていました。

そこでカトリーヌは、神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世皇女エリザベートに注目します。
神聖ローマ帝国は旧教国でしたが、マクシミリアン2世は新教徒に寛大だったからです。

         

カトリーヌは後年のサン・バルテルミーの虐殺のせいで
日頃から新教徒に対して弾圧を与えていたような印象がありますが
イングランドのメアリ-1世などと違って
新教と旧教の争いの平和的な解決を模索していたと言われています。

縁談はまとまり、1570年、シャルル9世とエリザベートは結婚しました。
エリザベートは平穏で敬虔で心優しい純真無垢な淑女でした。
また、白い肌と美しいブロンド、非のうちどころのないプロポーションで
当時もっとも美しい女性と言われていました。

シャルル9世はエリザベートの肖像画を見て「頭痛をおこさせない顔だ」と
素っ気なく言い放ったそうですが、実は気に入ったとみえます。 素直じゃないんだから
シャルル9世には長年の愛人マリー・トゥーシェがいましたが
エリザベートにも愛をそそぎ、ふたりは信頼しあう良き夫婦となったそうです。

いいところだらけのようなエリザベートですが、ただひとつだけ責められる点があるとしたら
それはあまりにも純粋に神を信じていたことでしょうか。
エリザベートはカトリックでしたが、新教徒の家臣や政治家を嫌ってまったく顧みず
臣従の礼である手への口づけも拒否していました。
カトリーヌがなんとか旧教徒と新教徒の争いを治めようとしている中
嫁として浅はかな振る舞いではありますね。

ところで、平和主義者という説もあるカトリーヌは
なぜシャルル9世にサン・バルテルミーの虐殺の令をだすよう、執拗に説得したのでしょう?

息子シャルル9世が父親のように慕っていた新教徒コリニー提督を殺害することが
大きな目的でしたが、その理由には諸説あります。

擁護派は、大きな力を持ったコリニーがスペインに戦争を仕掛けようとしていて
カトリーヌは国際的な宗教戦争が勃発するのを阻止したかった、と言います。
一方、シャルル9世へのコリニーの影響力が大きくなりすぎて
自分の権力が衰えるのを阻止するために思いついたのだ、という人もいます。
いずれにしても、大虐殺をすることはなかったんじゃないのかしら?

このサン・バルテルミーの虐殺のことを聞いたイングランド女王エリザベス1世は喪に服し
ローマ教皇やスペイン王フェリペ2世は祝杯をあげたそうですが
シャルル9世は気に病んで酒浸りになり、2年後の1574年亡くなりました。

エリザベートには、シャルル9世の弟アンリ3世との再婚話ももちあがりましたが
彼女はこれを断り故郷に戻りました。
1592年、エリザベートはこの世を去りますが
その年は奇しくもヴァロア王家が終わりを告げた年でもありました。

(参考文献 福本秀子氏『ヨーロッパ中世を変えた女たち』
      川島ルミ子氏『息子を国王にした女たち』
      桐生操氏『世界悪女大全』 Wikipedia英語版)

ヨーロッパ中世を変えた女たち 日本放送出版協会



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『アンダスン短編集』大国アメリカの薄闇

2009-03-13 01:18:07 | アメリカの作家

1919年~ シャーウッド・アンダスン

20世紀初頭のアメリカといえば(たぶん)人が増え大都市が出来、経済も成長著しく
大国としての歩みを加速していた時代にあたると思うのですが
そういう成長の波に乗り切れない、あるいは取り残されがちな人々を描いた
せつない9編が収められています。

もう、ものすごく好きなラインの1冊です。

『卵(The Egg)』
養鶏場の経営に失敗した両親が、辺鄙な駅の向いでレストランを開店しました。
ふたりは交代で朝から夜中まで真面目に営業し、わずかな常連もついたのですが
寡黙で陰気な父が、急に愉快な人気者のおやじになって店を繁盛させようと決心します。
それは悲劇を招く決心でした。

あるがままの自分でもちゃんとお客さんは増えていったと思うのに
どうして人気者おやじになろうなんて考えついたのでしょう?
少しでも繁栄を享受したいという小さな欲望がもたらしたのでしょうか?
人には、向き不向きがあるのでねぇ… 心がけは立派でも上手くいかないことがあります。

『悲しいホルン吹きたち(The Sad Horn Blowers)』
子供っぽい父がびっくりパーティではしゃぎすぎたばっかりに大けがをしてしまい
冬の生活が台無しになってしまったウィルは仕事を得ようと都会に出ます。
列車の中で出会ったホルン吹きの老人の下宿に部屋を借りたウィルですが、
なかなか都会に馴染めず、つまはじきになっている老人の話し相手にされてしまいます。

ウィルって優しい人ですよ… 老人たら毎晩部屋にやってきてはおしゃべりするんです。
私なら「ちょっと眠いんで 」とか言って出ていってもらいます、きっと。
故郷を出るということが、簡単なことではなかった時代を少し感じることができました。
でも長年いれば都会に染まっていくのでしょうね?  そういうもんです。

『森の中の死(Death in The Woods)』
農家の女中からならず者の妻になり、ならず者の母親になった女性の辛いだけの一生。
彼女は家族や家畜や飼い犬に食べさせることだけに人生を捧げていました。
ある雪の日、彼女は食料を買いに出かけ、森の中で一休みをして、そのまま死にました。

これは… 時代やシチュエーション関係なく、こういう女性はいると思うんですけど
世が世なだけにならず者のレベルが違いますよね。
「死んだ方が幸せだったろう」と他人が言うのは、とても残酷なことですが
そう思わずにはいられない人もいるんじゃないかなぁ…

『とうもろこし蒔き』はドーデーの『老人』という話しが思い出されて好きでした。

ヘミングウェイの『移動祝祭日』の中でアンダスンを褒めたたえている部分がありました。
また、スタインベックもかなりアンダスンの影響を受けていたということです。
ノーベル文学賞を受賞した作家たちに認められていたというのは
もちろん作家としての才能もあるのかもしれませんが
アンダスンの物語の中にアメリカの魂みたいなものが宿っているからかもしれないですね。
悲しいかな、私には容易に見つけられませんけれど…
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