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アントン・パブロヴィチ・チェーホフ
もちろんチェーホフがポップでご陽気な作家でないことは重々承知していますが
やけに暗い気がします。
やはりその世界を知りすぎているだけに、リアルな暗部が滲み出ているのでしょうか?
チェーホフはお医者さんで、医者を題材にした短篇が多々ありますが
いったい旧体制のロシアにおけるお医者さんの地位ってどうだったの?という
謎が深まる一冊でした。
『脱走者/1887年』
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肘を痛めて手術をすることになり、ひとり病院に残された7歳のパーシカ。
病院の食事、入院患者の死などを目にするうちに「母ちゃん」と叫んで病室を飛び出し
陽気な医者に会いたくなって窓の灯りをたよりに走っていきます。
なんだかパーシカの腕の病は深刻そうなんですが、それはおいといて…
7歳の子供の入院に母親が付き添えない病院なんて、考えられないですよね。
この物語のお医者さんは、子供には優しい人だったみたいで、それが救いでした。
『アニェータ/1886年』
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医大生のステパンは、一緒に暮らしている女アニェータの肋骨を見ながら勉強します。
アニェータは今まで5人もの学生と暮らし、卒業と同時に捨てられていました。
もちろんステパンもそうするつもりです。
私はこのタイプの女の人が出てくる物語に弱いのよね。
捨てられるって分かっているのに尽くすのは何故なんだろうか?
年をとって学生たちに相手にされなかったらどうなるの? 想像が尽きません。
『敵/1887年』
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医師のキリーロフの息子が死んだ直後、妻を助けてほしいと言って男がやってきます。
キリーロフは断りますが男は食い下がり、1時間の約束で出かけて行きます。
すると、男の妻の病気は嘘で、他の男と駆け落ちした後でした。
この後キリーロフはすごく怒りを覚えるんだけど、それは騙されたからじゃないの。
アボーギンていう男に対して怒るんですが、その気持ちは分かる。
この物語によると、医者は仕事に値する尊敬と報酬を得ていなかったような感じです。
上の3篇以外もすべて病院やお医者様が題材になっています。
表題の『六号病棟』は精神科をテーマにしたちょっと寒気を感じる物語。
精神科医に睨まれたら、もう人生終わりなのかしら?
『退屈な話し』は自分の死を悟った老教授の、晩年の嘆きを描いた物語です。
どんなに高潔な思想や信念を持った人も、死を前にして「ま、いいか」の
境地に陥ってしまう切なさが悲しい一篇でした。
ソ連では医者にも勲章や官位があったみたいです。
出世のみが目標の人がいますし、制度自体をあきらめてなげやりになった人も登場します。
どうやら報酬は充分でないようですが、上手くやって貯め込んでいる人もいます。
患者のために寝る間を惜しむ医者、研究命の学術肌な医者、地位や出世に血眼な医者、
いずこも同じか…
チェーホフは、何か医者の世界に疑問を感じてこれらの小説を書いたのでしょうか?
自分への戒めだったのでしょうか?
いつかチェーホフの人と也を読んでみようと思います。
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文庫で全集があったとは… 探さなきゃ