まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『永遠の夫』そのココロは?

2008-08-31 23:16:40 | ロシアの作家
ВЕЧНЫЙ МУЖ 
1869年 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー

地位と財産が無かったら、女性から相手にされないだろうなぁ、と思われる男性は
世界中に少なからず存在しますね

この物語の主人公の一人、トルソーツキーはそんな人です。
妻は社交界の花形で、機智に富んだ会話をし尊敬も集め、男性関係もちらほらあります。
トルソーツキーは、その女性の夫ということだけが人々の印象に残っている男性でした。

かたや、もう一方の主人公ヴェリチャーニノフは経験も豊富な
上流階級で人気と実績を積んできた男性。
彼はトルソーツキーの妻ナターリアと一時関係が有り
他の男性の登場で彼女のもとを去った過去があります。

物語は、ペテルブルグでトルソーツキーがヴェリチャーニノフを
つけまわすところから始まります。
ナターリアは既に亡くなっていました。

その後、ヴェリチャニーニフの娘と思われるリーザが登場したと思ったら
亡くなったり、トルソーツキーが名家の15歳の少女に求婚したりといろいろあるわけですが…

もう、トルソーツキーって人、すごくイライラしちゃう
持って回った言い方や、卑屈になったり開き直ったり、帰れって言うのに居座ったり
求婚した少女たちに思いっきりバカにされたりでいいところひとつもなし!!

ヴァエリチャ-ニノフは、嫌悪しながらも憎めないってぇことを言ってますが
私はごめんこうむるね

訳者(千種堅さん)がロシア語で “永遠” 以外に “万年” という意味がある、と
解説に書いておられましたが、ニュアンスとしてはそっちが近いみたい。
夫以外に役割が無い男性。 美しく人気者の妻の側にいるだけで満足なの。

でも、情けないけど旦那さんとしてはいいんじゃない?
お金はあるし、好きにさせてくれるし、浮気も黙認。
お互いが妥協づくの結婚なら、相手がこういう人の方が楽かもね
UNOんちみたいな感じでしょうか?

“ドストエフスキーでも読んでみようかしら?”と思って
最初に手にしたのが『永遠の夫』でした。理由は短かったから。
そしたら面白かったもんで、次に『白痴』を・・・ 失敗したわ。
そんなわけで他の作品に手が出せずにおります。

永遠の夫 新潮社


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『カシタンカ・ねむい』カシタンカって何なの?

2008-08-30 04:10:47 | ロシアの作家

アントン・パーブロヴィチ・チェーホフ

新潮社版短篇集が晩年だとしたら、岩波文庫版は前期になりますかね。
若くして亡くなっているので。

しかし、若い頃から落ち着いていらっしゃる。
ちょっとしたペーソスを織り交ぜた、小市民的な9篇のエピソード。

『嫁入り支度(Прпданое)/1883年』
初めて訪れた時も、7年後に訪れた時も、母と娘はひたすら嫁入り支度で
ドレスを縫ったり刺繍をしたりしていました。
そして最後に訪れた時には娘の姿が見えなくなっていました。

なんら教訓的なことの無い物語ですが、哀れな親子が印象的です。

『富くじ(Выитрышный билет)/1887年』
妻が買った富くじが、あと一文字で当たりになります。
大金のことを考えた夫婦は、いきなりお互いが憎らしくなります。

ジャンボが当たったらどうします? 分け合いますか?奪い合いますか?
うちは分け合います。今はそのつもりです。

『カシタンカ(Каштанка)/1887年』
ご主人様とはぐれた犬のカシタンカは、親切な男の人に拾われます。
そこで猫、ガチョウ、豚たちとともに芸を仕込まれたカシタンカは
晴れて初舞台にあがりますが・・・

猫、ガチョウが可愛らしくてねぇ。
チェーホフは動物好きでしょう、って思うわ。
ガチョウが死んだところは泣けました。

チェーホフはお医者さんだったんですって。
そういえばよくお医者さんが出てきますね。
しかし36歳で亡くなるとは・・・医者の不養生ってやつでしょうか?

『桜の園』や『かもめ』は、もちろん読んでみたいんだけど
私、戯曲ってどうも苦手なんです あのト書きの部分が気に食わなくって。
そのうち読んでみるつもりですが・・・。

カシタンカ・ねむい 他七篇 岩波書店


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『かわいい女・犬を連れた奥さん』ヨーロッパ的ロシア

2008-08-30 04:10:33 | ロシアの作家

1896-1904年 アントン・パーブロヴィチ・チェーホフ

チェーホフの短篇集。
これが良かったもんで、『チェーホフ・ユモレスカ』2巻買っちゃって大失敗さ

私がロシアの作家で初めて読んだのは、たぶんこれだと思います。
あるいはツルゲーネフの『初恋』か、いずれにしても一昔前です。

私は時々、ロシアの作家の物語は(作品の善し悪しは別にして)
“う~るさい”と思っていますが、それは物語の中に主義・主張を盛り込んで
延々と論じる場面が多いから。
話しと関係なくない? とイライラさせられることも多々あります。

チェーホフにもそういうところはちょっとありますが、
この短篇集の中の7篇については落ち着いて読むことができました。

『かわいい女』
気だてがよく愛情深いオーレンカは、夫が変わるたびに自分も変わっていきます。
そんな彼女を、まわりの人は “かわいい女” と呼ぶのです。
彼女が最後に愛情をかけた相手とは・・・

こういう話しはよくあります。あなた色に染まる女っていうんですか?
ベイツなんざそのものズバリ『かわいい女』という短篇書いてます。
(チェーホフへのオマージュでしょうか?)
男性はやっぱりこういう女性がいいのかしらね?

『イオーヌイチ』
青年医師イオーヌイチは、赴任した街で一番愉快だと名高いトゥルキン家に
出入りするようになり、娘のエカチェリーナに求婚しますが断られます。
4年後、成功した彼の前にエカチェリーナが姿を現します。
それも未練たっぷりなかんじで・・・

エカチェリーナのフリ方はちょっと良くなかったかしらね?
後でかわいい顔しても上手くいかなくなっちゃう。

『谷間』
羽振りの良い食料品屋を営むペトロフ一家の、愛無き日常。
主人のグレゴリーは長男の嫁に、隣村から白痴同然のリーパを迎えますが
それが一家の悲劇の始まりでした。

正義は無いのか? と声高に言う気はありませんけど
次男の嫁アクシーニャは、リーパの赤ちゃん殺して捕まらないの?
しかも店の実権握って繁盛させるっていう・・・
これは、悪がはびこる政府や高官への暗喩でしょうか?

晩年(といっても若いです)の作品を集めた短篇集らしいです。
だからしっとりした雰囲気なのかしら?
他の4篇もユーモアと哀愁の入り交じった物語です。
名前のことを考えなければヨーロッパ的な感じかもね。

かわいい女・犬を連れた奥さん 新潮社


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最新版は表紙が素敵よね
コメント (4)
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『幼年時代』セレブキッズが心を痛める上流のお作法

2008-08-15 23:57:43 | ロシアの作家
ДЕТСТВО 
1852年 レフ・トルストイ

セレブですな
“ 子供の夜会 ” ってなんですの?

手袋がないからダンスができないって困惑したり
あぶれ者にならないように、年上の少女をダンスに誘ったり
お金持ちの世界もいろいろ大変です。

ママのこと、パパのこと、老家庭教師のこと、ばあやのことを中心に
子供時代の素直な思いや、淡い恋心を綴っています。

草稿で読者に向かって“多感であっていただきたい”という呼びかけがあったそうです。
たしかに子供の考えることって単純に見えるから
大人はつい、たいしたことじゃないって考えちゃう。
きっと子供なりに深い思いもあるんでしょう。

でもバスの中でバカみたいに叫んでる子とか見ると
やっぱ何にも考えてなさそうなんだけどさ

印象に残ったのは、パパがね、すぐ怒るんですけど
その理由が人前で恥をかいたってことなのです。
子供がダンスで失敗してたら慰めてあげるのが先じゃない?

貧しい者から見れば優雅な悩みです。
いくら子供らしいと言ったって住む世界が違い過ぎ…

今日何を食べたらいいのか? 夜の寒さをどうしのげばいいのか?
明日は命があるのか? と切実な悩みに直面する当時の下々の子供たちにくらべたら
ダンスでステップを間違えたぐらいがなんですか!

でも、とりあえず礼儀作法を覚えなきゃ世には出れないという
上流社会の教育方針は支持します。
日吉の日能研の子供たち、バスでスゴく行儀悪いんだよね!!
 そんなに騒ぐなら歩いて帰るがいいでしょう)

優しく優美だったママが亡くなったところで物語は終わります。
子供の、素直そうでわりと世の中を理解してるところが伺い知れる一冊でした。

この後物語は『少年時代』、『青年時代』へと続きます。

アナトール・フランスの『昔がたり』、谷崎潤一郎の『幼少時代』と続けて読んだのですが
他に比べるとセレブ感が強すぎて、素直な心を読み取るところまで気がまわりませんでした。
庶民なものでね…

どうか鼻持ちならない貴族にならず、真っすぐな心で育ってほしい…

幼年時代 講談社


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こちらはハードカバーです。
最近出版されたんじゃないかしら?『少年時代』『青年時代』もそろっていた気がする…
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『アンナ・カレーニナ』ロシア版“男女七人夏物語”

2008-07-24 00:50:09 | ロシアの作家
АННА КАРЕНИНА 
1873年 レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ

ロシア版 “ 金曜日の妻たちへ ” でもいいんですけどね…
なんなら“不揃いの林檎たち”でも。(どっちにしても古い例え…)

文豪トルストイですから面白くないわけなかろう、と言いたいところですが
私はあまり楽しめなかったんですよねぇ。
なぜかというと、なんだか自分勝手な不倫妻の話しに思えちゃって…すみませんね。

題名に『アンナ・カレーニナ』とついているくらいですから
アンナと夫カレーニン、情夫ウロンスキィ伯爵はもちろんのこと
アンナの兄オブロンスキィ公爵とその妻ドリィ
オブロンスキィの友人で裕福な農園主レーヴィンと、ドリィの妹キチィの
3カップル、7人の男女の恋愛や結婚を軸に物語が展開します。

発端は、兄を諌めようとモスクワにやってきたアンナがウロンスキィと出会い
恋に落ちて、夫も子供も捨てて家をでたこと。

別居をし(夫のお金で)ウロンスキィと優雅な暮らしを続けるものの
アンナは息子のこともあって、夫からの離婚の申し出を断固拒否します。
ここでは夫かレーニンは体面ばかり気にする男性のように描かれています。

ところがアンナは歳をとるにつれて、ウロンスキィが自分から離れていくのでは?
と不安にかられるわけね。
そこで一転して夫と離婚しウロンスキィと結婚して保証を得ようとします。
しかし今度は夫が世間のアドバイスを受けて離婚を拒みます。
ここでも夫はいやみったらしい男性に書かれています…可哀想。

一方、ウロンスキィにふられたキチィは、彼女を一途に思ってくれるレーヴィンと結婚し
それなりに幸福な毎日を送ります。

またドリィは、夫が浮気や政治的根回しで浪費し
どんどん家が傾いていくことにじっと耐えながら日々を送っています。

この二組の夫婦のあり方も興味深いところです。

ウロンスキィの言葉が信じられなくなり、小さな行き違いも手伝って
次第に絶望を感じていくアンナ…彼女がだした結論とは?

うーん…やっぱりアンナの人生、同情できない。
浮気をする人全てがいい気なもんだとは思いません。
ほぼ完全に理解できる不倫もあります。
でもアンナの浮気には “ 陰翳 ” ってものが感じられないのよね。

なにしろ夫カレーニンが悪人扱いなんですけど、逆に彼に同情しちゃうわ。
真面目な堅物で何が悪い! 世間体を気にしてどこがいけない? しかも当時のロシアで。
ここらへんのトルストイのお考えがよくわかりません。
もう一度読んで考えなおしてみたいと思います。

ところで、ドストエフスキーもそうだったけど
ストーリーからみて農園改革とか政策を長々と語る必要あるのかな?
ロシアの作家の人は、検閲とかがあるので自分の主張を作中人物に語らしてたのかしら?
よくわかりませんが、物語を堪能する上では少し邪魔な気がします。
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『白痴』大音響小説

2008-07-13 15:14:14 | ロシアの作家
ИДИОТ 
1868年 フョードル・ドストエフスキー

世の中に、しーんと心にしみ入る小説があるとしたら
『白痴』はなんと騒々しい小説でしょうか?
もう、アナーキーでデストロイでレボリューションってなくらいの大音響

ざっくり言えば、2組の男女の恋がどうなるかしら?っていうお話ですが
そこは社会にもの申すドストエフスキー、たくさんの社会的問題をとりあげていて
話しが複雑になりすぎちゃったんじゃないかと…

誰が主人公?ってくらいたくさんの人物が登場するんですけど
どいつもこいつも喋るったらありゃしないわけです。
「それ、必要ですかね?」ってことまでページを裂いて喋りまくり
私はロシアの方々って“寡黙”で“冷静沈着”っていうイメージがあったんですけど
考えが少し変わりました。

それはさておき
主人公は、スイスの精神病院を退院してロシアに帰って来たムイシュキン侯爵という
汚れを知らぬ子供のような心の青年で合ってるんでしょうね?
彼が、ナスターシャとアグラーヤという二人の女性を好きになってしまい
ナスターシャを愛するラゴーシン、アグラーヤを愛するガヴリーラなどが入り乱れて
不幸な結末をむかえる、というお話です。(すごくはしょってます)

とにかく、愛し合う男女がくっついたり離れたりを激しく繰り返す物語で
次第に「もう、どうでもいい…」という気分になってきてしまいました。
愛しているなら素直になればいいじゃない?
なにもわざわざ奇抜な行動に走らなくたっていいと思うんですけど。

もしかして、それが名作を書くコツなの?

主役・準主役級の人たちでさえ、かなり軌道を逸しているというのに
その他にも、どこか興奮気味なたくさんの人々が登場して
主義だの主張だの、自分の不幸な境遇、死んでやる!という
聞いてて楽しくも嬉しくもないことを、延々と喋り続けるわけです、いやでしょう?
これだけの登場人物の中で、私がまともな人に思えるのは3人くらいでしょうか。

最後の最後にムイシュキン侯爵は、再起不能に陥り
再びスイスの病院に戻るわけですが、その気持ち分かります。
毎日いろいろな人がやってきては、あんなにイライラさせられちゃあねぇ。
早く余所に行ってしまえばよかったのに…

たぶん、ムイシュキン侯爵の美しい人柄を描くためだったのでしょうが
なんか、腹立たしいエピソードが盛り込まれすぎてると思います。
物語の面白さ云々より、台詞ひとつひとつに腹をたててしまうようになって
読み通すのが大変でした。

人間の奥底や深層なんか垣間見えなくていい、深遠な思想も理解できなくていい
バカと言われてもいい… もう少し気軽に読める物語が好きです。
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