「人間の復興か、資本の論理か 3・11後の日本」(石川康宏著)

2011-10-06 22:38:23 | 私の愛読書

最近感動した本を紹介します。

神戸女学院大学の石川康宏先生が書いた「人間の復興か、資本の論理か 3・11後の日本」(自治体問題研究所発行)です。

石川先生は、「若者よ、マルクスを読もう」「マルクスのかじり方」など青年向けの著作を出しています。私も、7年前に先生の「現代を探究する経済学」という本を読み、そのエネルギッシュな文章にすごく感銘をうけてから、ファンになりました(笑)。

「10年後、20年後のちかい未来に、2011年3月11日は、歴史のどういう瞬間としてとらえ返されるのでしょう。たいへんな犠牲を生んだ地震、津波と原発災害の後、日本社会の全体が『人間の復興』と安全・安心の社会づくりにむけて大きな努力を開始した年としてなのか、あるいはたいへんな犠牲にもかかわらず、復興にも原発にも、その後の国づくりにも、さらに強く野放図な『資本の論理』が吹き荒れることになった最初の年としてなのか。2011年に生きる私たちは、その重大な分岐点に生きていると思います」と著者は述べています。

宮城県でも、水産特区構想のみならず、仙台空港の周辺にカジノ構想(世界中からの富裕層の集客を見込んでカジノ施設や高級ホテルを津波被災地に建てようというもの)が持ち込まれようとしているなど、「創造的復興」の名で、財界・中央資本の金儲けのプランがどんどん具体化されようとしています。被災地に来たのは、善意のボランティアだけではありません。20兆円をこえる復興市場を中央資本が虎視眈々と狙っています。

石川先生は、最後に、「政治に強い市民になろう。学びの力で社会の変革を」と呼び掛けています。

「たたかいに勝ち抜くには、市民に力が必要です。その力の核心は世論であり、世論の強さは論理と数の力です。それをしっかりとしたものにするには、市民の一人一人がしっかり学んでいかねばなりません。よりよい世の中をめざすには、誰もが賢い社会をつくることが必要です。少数の賢い人が引っ張る社会はもろく、ときに危険なものになります。それに対して、誰もが賢い社会であれば、話し合いや実践を通じ、社会の仕組みを着実によいものに変えていけます。日本とヨーロッパのたたかいの伝統の相違にふれましたが、過去の歴史に格差があることが、未来の格差を宿命づけるわけではありません。人間社会の発展には、穏やかな変化の数十年を一日に凝縮したような急速な変化の瞬間があるからです。ただし、そのような変化を手前に引き寄せるには、多くの市民による学びの蓄積が必要です。伝統の不足を学びによって埋め合わせ、それを新しい「たたかい」の中に生かしていく意識的な取り組みが必要です。…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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