私も今月12月10日にとうとう50歳に。今月は職場の先輩でもある五島平さんの死というショックな出来事もあり、今後、自分自身がどういう姿勢で生きていくべきか、毎日考えを巡らせています。
そんなこともあってか、最近、あらためて学び直しているのが「科学的社会主義の哲学(世界観)」。高村是懿氏(広島県労働者学習協議会)の『変革の哲学・弁証法 レーニン〝哲学ノート″に学ぶ』『科学的社会主義の哲学史』を読み始めていますが、これが実に面白い。恥ずかしながら、ここ10年くらい、哲学はまともに勉強していなかったに等しいわけで、本来、科学的社会主義の背骨あるいは屋台骨といってもいい「哲学」を軽く見ていては、複雑な情勢の変化に対応することはできません。
「科学的社会主義の哲学」といえば、「唯物論」「弁証法」「史的唯物論」。『空想から科学へ』も『フォイエルバッハ論』も『反デューリング論』も『唯物論と経験批判論』も昔何回も読んで一通り勉強したし…という驕りがあったかとも思いますが、「哲学」の勉強を軽視していたことは否めません。同時に、いま若い世代と一緒に活動するようになり、また、全体の運動を見渡していても、「哲学」分野での私たちの陣営の立ち遅れがあることを感じずにはいられません。「理想」をかかげて運動する、あるいは「理想」をもって生きることを嘲笑する現代日本の風潮(これは巷に溢れています)は、決して過小評価できないものです。社会を批判していても自分は動かず、もっぱら論評のみに走る人々も大勢います。もちろん、昨今の官邸前抗議行動のように、即行動に参加する方々がふえていることは実に喜ばしいことですが、全体から見ればまだまだ少数です。
レーニンは、「科学的社会主義の三つの源泉」として、ドイツ古典哲学、フランス社会主義思想、イギリスの古典派経済学を挙げています。(近代民主主義が抜け落ちている不十分さがありますが)。「マルクス主義は、すべての価値ある人類知識の総和」と言われています。しかし、「科学的社会主義の哲学」の源泉は決して「ドイツ古典哲学」だけではありません。ソクラテス、プラトン、アリストテレスなど古代ギリシャの哲学を始め、歴代の哲学者の思想から多くのヒントを受け継いでいます。(高村是懿氏の著作で詳しく述べられています)。私も初めて知ったことですが、マルクスが『資本論』の商品論で明らかにしている使用価値と交換価値も、その着想はすでにアリストテレスの商品論に含まれていたのです。「人間論」についてもマルクスは、アリストテレスから多くを学んでいます。科学的社会主義の立場から古代ギリシャ以来の2500年に渡る哲学史を学ぶことは、「科学的社会主義の哲学」をより豊かにより多面的に深めるうえで、大きな力になると思います。
私たちが青年運動をしている時代には、科学的社会主義の立場から、若者に「いかに生きるか」を問いかける哲学関係の本がたくさん出版されていました。「ただ一度の人生をいかに生きるべきか」という問いかけは、古今東西を問わず、若い世代にとって(もちろんそうでない世代も)、最も関心のあるテーマです。「科学的社会主義の哲学」には、そうした若い世代の関心にこたえる力があるはずです。私は、哲学者の真下真一さんや宮本顕治元議長等の「生きがい論」にいっぱい刺激を受けてきました。宮本顕治さんと宮本百合子さんの『12年の手紙』は貪るように読みました。そうした読書が私の生きる指針となったことは間違いありません。しかし、今日では、若者に生き方を問いかけるものであっても、科学的とはいえない、社会と生き方を切り離す非合理的なものが溢れています。運勢占いもあたりまえのように、マスコミに登場しています。それだけに、「科学的社会主義の哲学」を創造的に今日的に発展させる努力が求められているのだろうと思います。
高村是懿氏の著書は、こうした観点から見て、非常に「野心的」「独創的」「大胆」「目から鱗が落ちるような」刺激的なものです。個々の論点では、いよいよ異議もあるのだろうとは思いますが、多分に吸収出来る「滋養」に満ちた著作であり、毎日読み進めるのが楽しみです。
https://www.youtube.com/watch?v=slRQ5CJCKc0&feature=player_embedded
高村是懿さんの講義が動画でアップされています。