渾身の力作 「空洞化と属国化 日本経済グローバル化の顛末」を読む

2018-01-18 16:20:11 | 私の愛読書

昨年12月以来、名古屋経済大学名誉教授の坂本雅子さんの著書「空洞化と属国化 日本経済グローバル化の顛末」を読み進めています。何しろ、750ページ近い大著です。しかし、文章が実にわかりやすく読みやすい。読み切るまで、あとわずかとなりました。

一人の研究者がこれだけの研究を深め、叙述することに感銘を受けています。以前にも、坂本先生の雑誌「経済」に掲載された電器産業の海外生産に関する論文の感想を書いたことがあります。そのときも、研究の深さに驚きました。今回は、電機産業、自動車産業の海外移転、財界のインフラ輸出と成長戦略、米国から日本への規制緩和の要望と安倍政権の政策、安倍政権の安全保障政策と財界の海外生産の関係、その背後にあるアメリカの要請、TPPの本質などをあらゆる文献と資料にあたり尽し、その本質は「空洞化と属国化」だとズバリ指摘しています。坂本先生の研究方法は、「私は研究を始めるとき、テーマに関する研究書や論争は山ほど読みますが、最初にテーゼ(命題)を設定するのではなく、資料や事実にまず当たりつくすことを何よりも優先して研究してきました」(「経済」12月号より)と述べておられるように、実に徹底しています。

私も、この本を読んで、この20年間の日本の経済と政治の大変動の背景が俯瞰できるようになり、世界的な1%の超富裕層と99%の諸国民の対決構図の必然性を理解するきっかけとなりました。

くり返し読んで、勉強したいと思います。