8月15日の終戦記念日を前に、NHKが連日、実に意欲的な番組を放映しています。
一つは、昨夜12日夜NHKBSプレミアムで放映された「スペシャルドラマ 返還交渉人」。1960年代に沖縄返還交渉を指揮、「返してもらうのではなく、取り戻す」を信念に取り組んだ外務省北米局課長の千葉一夫氏の実話。以前に読んだ孫崎享さんの著書「戦後史の正体」の中にも、千葉課長のことは出てきます。今の外務省では想像もできませんが、当時の外務省には、米国と正面から渡り合おうという気概を持った外交官が存在していました。
交渉時、沖縄はベトナム戦争の米軍の出撃拠点で核兵器も存在しました。沖縄をこれまで通り使いたい、「核密約も必要だ」という、米国との交渉は厳しい。しかし当時、外務省は、「核抜き本土並み」返還を目指します。背景には、沖縄の核兵器も米軍基地も撤去して沖縄返還を求める沖縄県民の不屈のたたかいがありました。こうした県民のたたかいも交えて、返還交渉が描かれています。
政府の官僚の中にも、これだけ気骨のある人がいたことに感動をおぼえます。
もう一つは、これも昨日12日夜のNHKスペシャル「本土空襲・全記録」です。これも、米国に保管されている当時のフィルムを分析し、米軍の日本本土空襲の全貌を明らかにした貴重な番組です。B29戦闘爆撃機にカメラを内蔵し、空爆や機銃掃射の様子を克明に記録するということに戦慄をも覚えますが。
当初、米軍は、日本の軍事工場などを攻撃目標にしますが、高度1万メートルからの爆撃では、命中率が低い。そのために、悪名高きカーチスルメイが陣頭指揮をとり、民間人を含む無差別爆撃に方針を転換します。その理由は、日本国民は全員が軍事活動に組織されているので、日本に民間人はいない、非戦闘員はいないというものです。攻撃目標は、工場だけでなく、鉄道、学校など、地上で動く人間すべてが標的となります。日本が連合国にポツダム宣言の受諾を通告した後にも、B29の空襲は続き、多くの民間人が殺されます。1年余の空襲で死亡した人は、45万9千人にものぼります。
戦争は、一度開始されると、どこまでもエスカレートし、やめることができなくなります。
今日の北朝鮮をめぐる事態も、絶対に軍事衝突は避けなければなりません。
これだけの番組を企画・制作したNHKの気骨ある職員のみなさんに敬意を表したいと思います。