日に日に涼しく(寒く)なってくると、(風邪をひく人も身近におりますが…)、読書をするには絶好の季節です。最近は、仕事は非常に忙しくなってますが、本を読みたくて読みたくて仕方がないという感じです。
引き続き、読みふけっているのが、元外務省国際情報局長の孫崎享さんの著作。『戦後史の正体』『日本の国境問題』『アメリカに潰された政治家たち』。推理小説よりもおもしろいというか、推測の域を出ないものもありますが、いかにもありそうな話です。日本のアメリカへの従属関係は、表舞台だけではわからないことが多いので、日米安保の裏側を知る上では興味深い。
尖閣問題(領土問題)も、孫崎さんの著作に刺激されて、いろいろ手を広げて読んでいます。以前、共産党の比例代表候補も務めたこともある松竹伸幸さんの『これならわかる日本の領土紛争』も、尖閣、竹島、千島問題の基本的な知識、また問題になっている海洋問題の基礎(領海、排他的経済水域、暫定措置水域…)を勉強するには、わかりやすい本です。
孫崎さんの本はおもしろいのですが、尖閣問題では、「尖閣は日清戦争で日本が奪い取った台湾の島嶼に含まれる」という中国側の主張に無批判な点が、気になります。実際は、1895年の「台湾受け渡しに関する公文」で、中国政府も、台湾の付属島嶼は、台湾の北東56キロにある彭佳嶼(ほうかしょ)までで、尖閣諸島を含めないことを了解しています。ですから、尖閣諸島は、台湾の付属島嶼でないことを中国政府も了承しているのです。そのことを孫崎さんは、ご存知ないようです。
尖閣諸島問題を勉強するうえで、尖閣諸島の地権者の栗原さんの本も読んでみました。石原慎太郎さんは、40年も前から、栗原さんに尖閣諸島を売ってくれと持ちかけていたのですね。その執念自体は、是非はともかくすごいものです。ただ、中国を刺激するような行動は自制してもらいたいと思います。
尖閣とは全く別ですが、湯浅誠さんが8月末に出版した『湯浅誠ヒーローを待っていても世界は変わらない』もおもしろい。橋下市長批判というよりは、橋下氏に期待を寄せるその国民的な土壌は何か、水戸黄門的ヒーロー待望論では問題の解決にはならず、民主主義の積み重ね、(隅のないオセロゲームともいわれている)そのためにも、多数の意見を調整できるコミュニケーション能力を磨くことが強調されています。
社会運動に対する厳しい指摘もあります。原則論ばかり言い放ち、それが実現できないのは、相手が悪い、行政が悪いですましている。解決すべき問題があるときに、それを誰かの責任にすることで自分は免責するという思考、それは真に問題を解決する姿勢ではないと批判します。
これは、私たちも考えなければならない点だと思います。「支持が広がらないのは、マスコミが取り上げないのが悪い」ーーこれは事実ですが、それを嘆いていても、支持が広がるわけではありません。野村式「弱者の戦法」ではありませんが、お金がないならないなりに、知恵を出し合って、私たちの見解を知らせる努力が必要です。
最後に、いま若手で毎月開催している「資本論学習会」、昨日、講師の先生から興味深い言葉が紹介されました。「過程は結果において消え失せる」。商品をいくら眺めていても、そこにどんな生産者がかかわっていたのか、どんな労働がなされたのかは見えてこないという意味ですが、政治の分野は、まさに結果が問われる世界です。いくら、途中までいい経験がたくさんあっても、選挙の結果が悪ければ、全部消えてなくなる(実際はそうではないのですが…)。厳しい結果責任が問われます。資本論を読みながら、いろいろなところに思いを巡らせました。
勉強は面白い、そう感じる今日この頃です。