あの夜、御巣鷹山で何があったのか。衝撃の三部作を読む

2018-09-24 21:45:33 | 私の愛読書

今月、読んだ衝撃の三部作。

元日本航空客室乗務員・青山透子さんの著書

「日航123便墜落 疑惑のはじまり 天空の星たちへ」

「日航123便 墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る」

「日航123便 遺物は真相を語る」

 

 日航機墜落事故は、私が大学4年生の夏。ちょうど就職が内定し、実家に帰省しようとする前夜に発生した。非常に衝撃的な事故だったことを覚えている。川上慶子さんを自衛隊のヘリコプターが救助する映像が何度もテレビで流され、マスコミも連日大きく取り上げていた。

 しかし、当時から、「空白の16時間」の謎など腑に落ちない点はあったが、裁判も不起訴になったこともあり、あまり気にも留めなくなっていた。ただ、日本航空の問題は、山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」全5巻も読み、映画も観るなど、労働問題としては、ある程度関心をもってはいた…

 さて、この筆者、青山透子さん、あの日航123便で亡くなった客室乗務員12名のうち、6名がかつて国内線の同じグループで仕事をしていたこともあり、何としても真実を明らかにしたいという執念を感じる、まさに生涯をかけて真実の一歩手前まで迫った力作である。

 なぜ、123便が墜落したかという原因、同機に付着したように見える謎のオレンジ色の飛行物体、そして日航機を追跡する2機の自衛隊機など、これまで一般的には知られていなかった事実を目撃証言から明らかにしている。

 そして、事故発生から生存者の救出までなぜ16時間もかかったのか、なぜ、テレビでは「墜落場所は長野県側」と偽りの情報が一晩中流されていたのか、その真相に迫っている。

 現場では、116体の炭化した遺体が発見されている。しかし、飛行機のジェット燃料は灯油と似た成分であり、遺体が炭化するまで焼け続けるというのはありえない。真っ黒の塊になった機体の一部を東大の研究所で分析したら、ジェット燃料には含まれていない大量のベンゼン、硫黄、クロロフォルムが検出された。つまり、墜落直後の火災の後に、何者かがガソリンのようなもので機体と乗客、乗務員を焼き払ったということになる。墜落してまだ数時間、おそらく重傷でありながらも、まだ生きている人たちが大勢いたはずだ。最優先で人命救助ではないか。見殺しにするだけでなく、おそらく証拠隠滅のために現場を焼き尽くすなど、とても人間のやることではない。このあたりは、推測の域を出ないが、状況証拠からすれば、それ以外には考えられない。その責任者は一体誰なのか。誰が命令を下したのか。

 私たちは、この33年間、騙され続けてきた。

 誰が、なんのために…

 青山さんの人間としての誠実さと熱意、その使命感に心を打たれた。深く感動した。歴史というのは、すでに活字になっていることを覚えることではなく、まだ闇に隠れた部分を歴史の表舞台に引きずり出し刻み込む、一人一人の人間の執念によってつくられるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「追及力 権力の暴走を食い止める」

2018-03-29 10:57:43 | 私の愛読書

 一昨日の証人喚問はひどかった。ある程度予想はしていたのだが、あそこまで佐川氏が証言拒否を乱発するとは思わなかった。まさに、事前のシナリオ通り。政権を守るためなら何でもするのか、と言いたい。前文部科学事務次官の前川喜平さんとは、同じ官僚でも対極にある方だと思った。しかし、この証人喚問で疑いが晴れたとはだれも思わないだろう。

 しかし、政権の関与が誰が見ても明白で、安倍政権の支持率がこれだけ下がっても、自民党の中から安倍おろしの声はほとんど聞こえてこない。逆に、改憲への執念をみせることで、求心力を維持しようとしているようだ。地方から「安倍退陣」の声を急速に強めていかないといけない。

 それにしても、財務省の公文書が300ケ所以上も改ざんされるという未曽有の国家犯罪。板挟みにあった近畿財務局の職員が自殺するという痛ましいできごとがありながら、そんなことなど大したことがないかのように、国会審議がすすんでいく。野党6党は結束してたたかっているが、この国の行く末はどうなってしまうのかという、危機感を感じる。国が壊れる、人が壊れる…。

 31日の土曜日に、多賀城革新懇の主催で講演会が行なわれる。東京新聞の望月いそ子記者がきて、「森友・加計問題 菅官房長官の記者会見に臨んで」と題して講演する。残念ながら参加できないので、いま「追及力 権力の暴走を食い止める」を読んでいる。望月記者と森ゆう子参院議員の対談だが実に面白い。 

 

 

 

 

 

 


渾身の力作 「空洞化と属国化 日本経済グローバル化の顛末」を読む

2018-01-18 16:20:11 | 私の愛読書

昨年12月以来、名古屋経済大学名誉教授の坂本雅子さんの著書「空洞化と属国化 日本経済グローバル化の顛末」を読み進めています。何しろ、750ページ近い大著です。しかし、文章が実にわかりやすく読みやすい。読み切るまで、あとわずかとなりました。

一人の研究者がこれだけの研究を深め、叙述することに感銘を受けています。以前にも、坂本先生の雑誌「経済」に掲載された電器産業の海外生産に関する論文の感想を書いたことがあります。そのときも、研究の深さに驚きました。今回は、電機産業、自動車産業の海外移転、財界のインフラ輸出と成長戦略、米国から日本への規制緩和の要望と安倍政権の政策、安倍政権の安全保障政策と財界の海外生産の関係、その背後にあるアメリカの要請、TPPの本質などをあらゆる文献と資料にあたり尽し、その本質は「空洞化と属国化」だとズバリ指摘しています。坂本先生の研究方法は、「私は研究を始めるとき、テーマに関する研究書や論争は山ほど読みますが、最初にテーゼ(命題)を設定するのではなく、資料や事実にまず当たりつくすことを何よりも優先して研究してきました」(「経済」12月号より)と述べておられるように、実に徹底しています。

私も、この本を読んで、この20年間の日本の経済と政治の大変動の背景が俯瞰できるようになり、世界的な1%の超富裕層と99%の諸国民の対決構図の必然性を理解するきっかけとなりました。

くり返し読んで、勉強したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最高のエンターテイメント

2017-09-02 15:46:48 | 私の愛読書

この8月から、経済小説に埋没している。やはり小説、読書はいいものだ。私にとっては、お金のあまりかからない最高のエンターテイメントだ。何しろ、小説を読んでいる時間は、外部の世界を遮断し、嫌なこともいっさい考えずに過ごすことができる。自分の世界だけに没頭できる。最高の娯楽だと思う。

いま読んでいる本は、少し古いが、真山仁さんの『ハゲタカ』シリーズだ。いま、若手の専従者とともに、不破さんの本をテキストに『資本論』を勉強している。でも、企業や金融の現場を知らない自分のような人間にとっては、バブルとかハゲタカファンドとかいっても、実感としてなかなかつかみにくい。経済学の概念としてはいろいろ知ったかぶりをして説明もするのだが、リアルな内情は知らないわけだ。元外務省情報局長の孫崎享さんは、「他国を知るにはその国の小説を読むのが一番だ」と書いていた。それに倣って、経済界の現実を知るには、経済小説を読むのが一番だと考え、まずは真山仁さんの小説から読み始めた。

『ハゲタカ』は、かつてテレビドラマや映画にもなったが、私はみていない。画像を見てしまうとそのイメージがインプットされてしまうので、私はあくまで原作を読んで、かってに想像しながら楽しんでいる。

『ハゲタカ』を読んで、ハゲタカファンドのイメージはちょっと変わった。私の故郷の栃木県の日光や鬼怒川も登場する。足利銀行(足助銀行)の経営破たんも取り上げられている。若くして、ミカドホールディングスの社長になった松平貴子さんは、実に素敵な女性に描かれており、惚れこんでしまった。

 とにかくいろいろな発見や楽しみがある。しばらくは、真山ワールドにのめりこみそうだ。

 

 

 

 

 


「対話する社会へ」(暉峻淑子著)その2

2017-04-09 17:56:41 | 私の愛読書

 

 前回に続き、「対話する社会へ」(暉峻淑子著)の感想です。

 暉峻さんは、対話の実践が希望ある社会をつくることを希望の実践として3つ紹介しています。そのなかで、白鳥勲先生という高校の物理の先生の実践に興味をそそられました。

 いま、多くの学校現場で外からの圧力と多忙さで諦めにも似た閉塞感に陥っている先生が少なくない中でも、行政による管理の言葉でなく、教師自身が自分で考え抜いた言葉で生徒に語り、対応している先生として、この先生が紹介されています。

 人間の間の理解も共感も、すべては対話に始まり、コミュニケーションの中で成長します。白鳥先生は、対話の中で中途退学者や引きこもりの生徒を大きく減らし、問題を起こす生徒との関係を自然にいい方向へ開いていきます。

 白鳥先生の最初の赴任校は、いわゆる「問題校」で、中途退学や不登校が多い学校でした。その中で、先生が自分にできることとして考えたのが、一人一人の生徒と毎日対話することでした。

 毎日、一人ずつ生徒を呼んで、一日に二人の生徒と対話をします。一ケ月で一巡して40人学級の生徒全員と対話することができます。それをまた何度もくり返し、一年間、対話が続きます。生徒のほうも、自分の順番がいつになるかを予定しており、対話を忌避する生徒は一人もいませんでした。

 対話するときは、何かあったの?というように、自然にすっと話題に入り、決して先回りしないこと、叱ったりせず、また、○○のために、とか、意図的にある結果にもっていこうとしないこと。上下関係で話すのではなく、あくまでも生徒の人格に対する尊敬の念を忘れず、聞き役に徹すること。生徒のよっては、大人に頼ったこともなく、頼り方も甘え方もわからず、心を開かない子もいるので、まずそういうときは教師のほうから先に心を開いて話し合うようにしたということでした。

 生徒は敏感で、一人の人間として対応されていることがわかると、自然に態度が変わり、信頼して誠実になり、時に甘えを出すようになります。生徒によっては、大人に寄り添ってもらって、一人前に対応してもらった経験のない子もいるので、対話するうちに変化していくのが先生のほうにもわかるそうです。対話をしたからといって何かすぐにいい結果がでるわけではないけれども、退学するかしないかというような分かれ目のときに、それがはっきりと出るのだそうです。

「退学者が教職員の努力で減るということは、生徒自身が自分を大切に思うようになるからです。そのように思うようになるのは、まわりの大人が自分を大切に『敬意』をもって接してくれるからです。自分自身を大切に思うということは、行動としては荒れる行為が少なくなり、何より勉強に取り組みます。…」

「そういう生徒たちに寄り添って対話を続けていると、深みにはまって、かえって生徒たちにとってもいい結果ではない、と忠告されることがあります。だけど、僕はそうは思っていません。たしかに、生徒とは距離を置いて、ほどほどにし、大人を頼らないように、自立して自分で問題を処理させたほうがいいと考えている教師もいます。でも、僕は、大変でも逃げる大人にはなりたくない。知らんぷりをして、自分も傷つかないようにしていることが生徒にあたえるマイナスよりも、深みにはまるマイナスのほうが小さい、ということが断言できるからです」

「僕自身、生徒や親から裏切られることもあったし、生徒の話を聞いても『それはつらいね』とか『先生も考えてみるから』としかいえないことが多いです。しかし、同じ裏切られるにしても、もし初めから距離を置いていたら、そういう経験も積めないわけだから、やっぱり経験をして、成長する人生のほうがいいと思っています」

 

 対話の力に希望を感じる実例だと思います。暉峻さんは「こういう小さな積み重ねが無数にあって、社会の壁に穴をあけ、やがて変わらないと思われているこの社会を変えていくのだと思いました」と述べておられます。

 

 いま、学生の新入生歓迎運動が取り組まれており、ある大学での対話の経験を聞きました。新入生は、声をかけられ、大学の履修のことなど、自分の心配事を親身になって聞いてくれる先輩、大人を待っていることを実感します。親身で丁寧な対話が若者の心に響くのです