ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

フィンランドの合言葉は森

2013-01-04 17:35:15 | ヨーロッパ

 ”SUDENMORSIAM”by JOHANNA KURKELA

 この人も初めて聴く人だが、フィンランドの人気ポップス歌手とのこと。北国の澄んだ大気の広がりに、いかにも似合いの澄んだ可憐な歌声を響かせる。音楽そのものも、またジャケ写真など見ているとその外見も妖精めいて、アイドル歌手かとも見えるのだが、既に彼女、歌手としてのキャリアは10年近いものがあるようだ。

 在フィンランドの日本人によるネット上の文章に、「フィンランドの大衆音楽はヘビメタやラップなど、どうも好きになれないものが多く残念なのだが、彼女だけは別」といった表現があり、かなりかの国では独自のポジションを保つ歌い手のようだ。いわゆる、「こんな世の中で耳にするとホッとさせられる」という存在か。

 彼女の歌声も、それを包むサウンドも、シンプルながら極北の森の国の幻想に聴く者の心を遊ばせてくれるのだが、その元ネタは汎ヨーロッパ的な中世的官能美演出や神秘なケルト趣味などでもなく、これもフィンランドの大地の上に伝承されてきた素朴なフォークロアにもとずくもののようだ。
 などということを書いていると、ムーミンなどという絵物語などふと思い出してしまったのだが、あれはフィンランドのスエーデン語圏で書かれた物語だったか。

 決して激することなくじっくり世界を見据え、内なる物語を静かに語り継いで行く。ある人のレポートにあったような北国の小さな教会における彼女のライブなど、いつか見ることができればと想う。



バルト海のロック姉ちゃん

2013-01-03 05:25:31 | ヨーロッパ

 ” Egle Jakstyte”

 とりあえずアーティスト名、どう発音するやら見当がつきません。エグレ・ジャススタイテ?まさかねえ・・・
 リトアニアの新人歌手のデビュー盤であります。とは言っても2010年発売の盤なので、もはやここで聞かれる音は歌い手にとってすでに過去の思い出になっているのかも知れません。

 ”あのバルト三国”の一国であるリトアニアのポップス、なんてあたりに思い入れしてかの国の流行歌を聞いてみる、なんてのは極めて作為的な側面のある音楽の楽しみ方で、もう聞く前から思い切り偏見や過大評価やら勘違いな思い込みやらが入り込み、しまいには聞こえてもいない音を聞いてしまうことだってあるのでして。
 いかにも大変な思いをしそうな位置にある小国、そして実際、彼らが刻んできた苦難の歴史、なんてものがその音楽にも影を落としているのではないか、なんて気を回してみたりですな。

 というわけでエグレ嬢の歌でありますが、少女時代からコンテスト荒しとして恐れられ、実力派の新人として堂々のデビューを飾った人ですから、そんな悲痛な影は見つからない。むしろ、アメリカのロックや黒人音楽から受けた大々的な影響を前面に押し出し、過剰に鑑賞に溺れることなくクールに、そのぶっとい声でドスコイ!と歌い倒す、その男勝りのロック魂が爽やかだ。
 なんか、こちらの感傷や思い入れをせせら笑われているみたいで、それが逆に心地よい、みたいな気分になってくるのですなあ、年老いた浪漫主義者としては(?)