なんじゃこれは?と首をかしげたのである。ほかでもない、先ごろ亡くなった浅川マキの、今度発売される追悼企画盤なんだけど。レコード会社が重い腰を上げて10枚組の追悼盤(なのだろう、きっと)を出すと聞いたので、その広告を今ちょっと覗いてみたのだが。
とりあえず、下にその”10枚組ボックス”のレコード会社による告知をコピペしておいたんでご覧ください。
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浅川マキの世界 CD10枚組BOX自選作品集【復刻限定生産】
1990年に発売され、現在入手困難のため復刻の要望がとても強かったアイテムの自選作品集を緊急復刻!
1.浅川マキの世界(1970.9.5)
2.裏窓(1973.11.5)
3.浅川マキライヴ 夜(1978.2.5)
4.ONE(1980.4.5)
5.CAT NAP(1982.10.21)
6.SOME YEARS PARST(1985.2.21)
7.アメリカの夜(1986.3.1)
8.こぼれる黄金の砂-What it be like‐(1987.2.25)
9.UNDERGROUND(1987.12.25)
10.Nothing at all to lose(1988.12.21)
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どうなんだろうね、この作品選択って。浅川マキファンのあなた、これで納得できますか?私は全然出来ないんだが。
なにより、レコーディング・アーティストとして彼女がもっとも輝いていたのは70年代である、これは彼女のファンのほとんどが同意してくれると信ずるのだが、この”緊急企画”には、70年代作品が3作しか収められていない。その代りに、ファンの間でも毀誉褒貶のある実験的色合いも濃い80年代の作品が7作も復刻されるという。
”Blue Spirit Blues”はどうしたんだ?また、名作と世評も高い”灯ともし頃”を倉庫の隅に眠らせておくというのか?それから、山下洋輔4とくんずほぐれつの死闘を繰り広げた”Maki Ⅵ”もか?それから、それから・・・
ちょっとこれは信じられない処置であり、担当者のセンスを疑うものである。
あるいはこのラインナップ、浅川マキ本人の選択になるものなのかもしれないが、だとしたらマキ、あなたはこの選択をした際、自分というものをまるでわかっていなかったと言わざるを得ない。
晩年、自身が世に送り出した作品の復刻を世人には理解しがたい理由で拒絶していた浅川マキであり、何ごとか意固地になって自分の殻に閉じこもっていた感のある晩年の彼女だった。この選盤も、その意固地の発露の一つと、私には見える。おそらくその頃、入り込んでいた音楽実験の袋小路を正当化するための歪んだセレクトではないのか?
なあマキよ・・・もう”雲の向こうには何があるか分かった”あなたなのだから、肩の荷物は下ろしてかまわないのではないか。”凄い芸術”なんか、もうどうでもいいよ。そうじゃないか?
なんだかなあ・・・こんな場所で私が何を言おうと、浅川マキの追悼企画盤はこのラインナップで世に出、そしてその他の作品はおそらく、レコード会社の倉庫の中で資源ゴミかなにかになって行く可能性も大かと思う。哀しいなあ。淋しいなあ。情けないなあ。
それからレコード会社よ。”在庫がなくなり次第、終了となります”ってどういうことかね?
売切れたら、またプレスしろよ。また売ろうよ。ずっと売ろうよ。”あの娘がくれたブルース”が、この虚ろな世間を彷徨う限りは、いつまでも売り続けようじゃないか。