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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

こっちがわとあっちがわ

2008-08-24 14:55:42 | 好きな絵本
今、私たちが居る場所が「こっちがわ」なら、
もう生きている間は会うことができない人が居るのが「あっちがわ」。

そんなふうに、生と死の2つで、居場所を分けていたけれど‥

今日、この本を読んだら、今自分が居る「こっちがわ」へ、来る前の人たちも
「あっちがわ」にいたのかもしれない、ということに気がつかされ、
それなら「あっちがわ」に行った人たちも、そんなに淋しくはないかも
しれないと思いました。



     『わたしのおじさん』  湯本香樹実  植田真・画


 わたしは、みわたすかぎりの草原で目を覚まし、
 ずっとむこうに見えている大きな木のところまで、
 歩いていきました。、その木の下には、青いシャツをきた
 コウちゃんが座っていました。

 コウちゃんは、8歳の男の子だけれど、「わたしのおじさん」なんです。
 わたしの、(まだ見ぬ)おかあさんが11歳のときに、
 車にぶつかって死んでしまった、おかあさんの弟だから。

 わたしは、コウちゃんと遊び、コウちゃんと眠り、コウちゃんの
 おとうさん、おかあさんといっしょにごはんを食べます。

 コウちゃんとの別れの日、むこうがわへのダイブを躊躇しているわたしに、
 コウちゃんは、ここでのことを忘れてしまうわけではないのだと、
 教えてくれます。

 「むこうで、たとえばどこかはじめての場所に行って、
 はじめてなのに来たことがあるような気がするって思ったり、
 そういうことが‥」
 「あるの?」
 「ある。なんだかはじめて見たって感じがしないものを見たり、
 はじめて会ったって感じがしない人に会ったり」



rが生まれた時、私の祖母はもういなくって、それを残念だといつも思ってきたけれど、
rはもしかして、あっちがわで、私のおばあちゃんに遊んでもらってきたのかもしれません。

初めて会ったはずの人なのに、いつかどこかで会ったような気がする人や、
初めて来た場所なのに、懐かしい気持ちを感じたなら、それもやはり
自分がこっちがわへ、ダイブしてくる前の記憶のせいなのでしょう。



植田真さんの絵が、お話を一層、味わい深いものにしています。

※体裁や、文章の量からすると、「絵本」には入らないのだと思いますが、
植田さんの絵は、挿絵の域を超えている!という個人的な好みで、
「好きな絵本」のカテゴリーに入れました。







                      
コメント (12)
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