報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「悪夢からの朝」

2024-08-28 16:13:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明 天候:不明 地中海上 豪華客船内]

 枕が変わったせいか、私は変な夢を見た。
 羽田空港のカプセルホテルに泊まった時は、そんなことはなかったのだが。
 それは船の中だった。
 それも、ただの船ではない。
 Tアビスという生物兵器ウィルスに感染し、ウーズという化け物に変化してしまった船内の人々の猛攻を交わしながら進む猛者の後ろを付いて行くという夢だった。
 TウィルスやCウィルスに感染した人間は、腐乱死体の見た目になる。
 しかし、Tアビスは水死体のような見た目から更に体が変化する。
 この船は……クイーンゼノビア号?
 ウーズの猛攻を交わしながら船内を探索しているのは、BSAAの猛者達だろうか。
 彼らは船内で手に入れた鍵やカードキーを手に、施錠されたドアを開けたり、中にはヴェルトロの隠し金庫を開けたりしている。
 クイーンゼノビア号は、老朽化した豪華客船であった。
 船会社が倒産して廃船寸前だったところを、FBCというヴェルトロに肩入れしている組織がタダ同然で引き取り、それをTアビスの秘密研究施設やヴェルトロのアジトに改造してヴェルトロに引き渡した船である。
 FBCとは、アメリカ合衆国が肝煎りで設立した組織。
 テロ組織ヴェルトロと繫がり、ヴェルトロにウィルステロを起こさせ、FBCがそれを鎮圧することにより、その存在を世界中に知らしめるというマッチポンプを行っていた。
 そう、正に消防団員が、自分が活躍している所を見せたいが為に放火事件を起こしていたようなものである。
 そんな船内を探索していると、ヴェルトロの隠し金庫があったにも関わらず、それをスルーして行くBSAAの猛者達がいた。
 折しも船内には、自爆装置が起動した旨のアラームとアナウンスが鳴り響いている。

 愛原「おい!ここの金庫は開けんのか!?」

 私は後ろから彼ら……恐らく、ジル・ヴァレンタインとパーカー・ルチアーニというBSAAの古参組と思しき後ろに声を掛けた。
 しかし、2人は私のことなど見えないかのように、船橋に向かうエレベーターに乗ってしまった。

 愛原「この金庫は……!?」

 他の金庫はヴェルトロの紋章が描かれていたが、彼らがスルーした金庫には別の紋章が描かれていた。
 それはアンブレラの紋章。
 開いた傘を上から見た図をデザイン化したもの。
 このマークはあの2人……特にジルにとっては忌むべき物だろうに、どうしてスルーしたのだろうか?

 愛原「リサのゴールドカードがあれば開けられるかも……」

 しかし、それはリサしか持っていない。
 何とかして開けようとした時だった。
 部屋の天井にあるダクトから、見覚えのある者がウーズ化してやってきた。

 レイチェル「愛原センセイ……見ィ~つぅけたぁぁぁぁぁ♪」
 愛原「わぁぁぁ!?」

[5月9日06時15分 天候:晴 沖縄県那覇市大道 沖縄ホテル・愛原と高橋の客室]

 愛原「わぁぁぁぁっ!?」

 そこで目が覚めた。

 高橋「先生!?どうしました!?」

 バスルームにいた高橋が、ドアを開けて出て来た。
 どうやら、先に顔を洗ったりしていたようだ。

 愛原「あー……びっくりしたぁ……」
 高橋「先生?」
 愛原「あ、いや、悪い。ちょっと、変な夢見ちゃって……」
 高橋「マジっスか。大丈夫っスか?」
 愛原「大丈夫大丈夫。枕が変わると、寝付きが変わるせいだな」
 高橋「もうちょっとしたら、洗面所開けますんで」
 愛原「ああ」

 高橋はまたバスルームに戻っていった。
 私はベッドから出ると、冷蔵庫に保管していた水を一杯飲んだ。
 それにしても、あの金庫は何だったのだろう?

 愛原「ん……?」

 それにしても、あれは本当にクイーン・ゼノビア号だったのか?
 船内の様子を思い出してみると、船内には日本語の看板とかもあった。
 クイーン・ゼノビア号は、ヨーロッパの船会社が造船・保有していたものだ。
 船会社在りし頃は世界一周クルーズなども行っており、日本にも立ち寄ったことはあったそうだ。
 もちろんその頃はちゃんとした船会社が運航していたものであり、けしてFBCの秘密研究施設でもなければ、ヴェルトロのアジトでもなかった。
 とはいうものの、当時は日本人の乗客も少しはいたのかもしれないが、外国籍の船で日本語の案内看板が設置されているとは思えない。
 クイーン・ゼノビア号のことについては、私もデイライト主催の研修で公開された資料映像などで見たことはある。
 その際、特に船内で日本語表記の案内板など見たことも無かった。

 愛原「! まさかあれは、破邪顕正号……うっ!」

 日本船籍の豪華客船で、今はこの世に存在しない破邪顕正号を思い出した。
 あれは日本船籍なので、当然船内の案内板は日本語表記が主流だ。
 あれも船内でバイオハザードが起きて……最終的には沈没したと聞いているし、姉妹船にあっても廃船処分となったと聞いている。
 確かに、あの船内にはアンブレラの紋章が付いた金庫とかがあったような気がしたのだが、それを思い出そうとした時、激しい頭痛が起きた。

 愛原「……くそっ!」

 一体、何だというんだ?
 目の前に軍服姿の高橋が現れた所で、我に返った。

 高橋「先生、どうしました?」
 愛原「いや、何でもない」
 高橋「具合が悪いんですか?」
 愛原「いや、そんなことはない。そんなことはないぞ。それより、洗面所は?」
 高橋「ど、どうぞ」

 私は洗面所に行って、顔を洗うことにした。

 高橋「あ、あの、先生……」
 愛原「何だ?」
 高橋「実は先生が寝落ちされた後、俺、タバコ吸いに行ったんです」

 この客室は禁煙だ。
 タバコを吸いたければ、外に出るしかない。

 愛原「それで?」
 高橋「あのレズガキが訪ねて来まして……」

 我那覇絵恋さんのこと。
 彼女はLGBTのLで、リサの事が大好き。

 愛原「夜中にか?」
 高橋「はい。それで何の用だと聞いたら、『早苗さんからもらったお菓子、先生達も食べますか?』って聞いて来たんスよ」
 愛原「斉藤早苗が絵恋の家に行く際の手土産として持って行ったという、手作りのクッキーとかか」
 高橋「そうです」
 愛原「それで、オマエは何て言ったんだ?」
 高橋「『バカヤロウ!先生に手作りクッキーを食べて頂く権利があるのは、この俺様だけだ!』と怒鳴りつけて追い返しました」
 愛原「オマエな、いくら非常識な訪問だからって、そんな近所迷惑な声を上げなくてもいいだろう」
 高橋「さ、サーセン」

 その割に、私は起きることはなかった。
 夢を見ていた割には、案外深い眠りに陥ったというわけか。

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