報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「旅行出発当日」

2024-01-23 16:14:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日08時15分 天候:晴 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校2年5組]

 淀橋「へー!魔王様、今日出発なんだー!」
 リサ「うん。学校が終わったら、すぐに」
 小島「制服のままで行くってこと?」
 リサ「今日のところはね。でも私服も持って行くから、愛原先生の実家で着替えるよ」
 淀橋「愛原先生の実家って、太いんでしょ?」
 リサ「太い?」
 小島「要は、お金持ってるってこと」
 リサ「どうなんだろう?でも確かに駐車場を経営していて、裏庭には地下空洞まであったりするしねぇ……」
 淀橋「地下空洞!?」
 リサ「それも、地下鉄のトンネルと直結」
 小島「逆に愛原先生の実家って、何やってるの?」
 リサ「先生曰く、普通のサラリーマンで、今は悠々年金生活」
 小島「いや、聞く限り、家の状態からして、そういう風には想像できないんだけど」
 淀橋「いつ帰ってくるの?」
 リサ「今週の日曜日。要は2泊3日だね」
 淀橋「いいなぁ。制服で新幹線なんて、修学旅行みたい」
 リサ「逆にわたし達、修学旅行で新幹線に乗ることは無かったね」
 小島「無かったねぇ……」

 小島は眼鏡を外し、フッとレンズに付いた埃を吹いた。

 淀橋「中等部の時に乗ったあれは?」
 リサ「あれはスキー合宿でしょ。新潟に行った時の」
 小島「ガーラ湯沢ね。修学旅行とはまた別だよね。確かに、上越新幹線で行ったけど」
 淀橋「本当だったら中3の時、修学旅行で関西方面に行くことになっていたから、その時新幹線に乗れるはずだったんだけどね」

 残念ながら、コロナ禍で中止になった。
 しかし、そこが中高一貫校のメリットで、コロナが少し落ち着いた次の年、代替修学旅行が行われた。
 とはいえ、南会津方面になってしまったが。
 新幹線ではなく、今や珍しい夜行列車に乗れたことが最大の思い出だという生徒もいる。

 リサ「で、来年度は飛行機で沖縄と」
 淀橋「羽田から飛行機だから良かったね。LCCでケチられなくて」
 小島「いや、分かんないよ」
 淀橋「えっ?」
 小島「羽田からでも、LCC出てるし」
 淀橋「マジ!?」
 小島「マジです」
 リサ「愛原先生が、『せめてスカイマークにでも乗れればなぁ』とか言ってたけど?」
 淀橋「PTAでそんなこと言ってるの?」
 小島「いや、スカイマークなら全然マシだよ。あれ、厳密にはLCCじゃないから」
 淀橋「斉藤……じゃなかった。えー……」
 リサ「ガナハ」
 淀橋「そうそう!我那覇さんと会うんだね?」
 リサ「そのつもり。エレンのヤツ、わたし達と同じホテルに泊まるつもりでいやがる」
 小島「いいのかな?飛行機代はヘタするとケチられるかもしれないけど、ホテルは豪華なんでしょ?」
 リサ「愛原先生が、『海の近くのリゾートホテルに泊まりたい』って言ったら、何だか校長先生達がノリノリだったみたいだよ」
 淀橋「何で校長が出て来るの!」
 リサ「わたしが校長先生のレクサス反転したから、目ェ付けられてるみたい」
 小島「また女子レスリング部と勝負したみたい」
 淀橋「懲りないねぇ……」

[同日15時30分 天候:曇 東京都台東区上野 JR上野駅改札外コンコース→新幹線改札内コンコース]

 学校が終わってから、リサとその取り巻き達は上野駅まで行った。

 レイチェル「今度は東北新幹線ですか。リサはよく乗りますね」
 リサ「先生が乗せてくれるんだよ。いいでしょー?」
 淀橋「お土産よろしくね」
 リサ「何がいい?」
 淀橋「“かもめの玉子”」
 小島「それ、仙台じゃないし!」
 淀橋「えっ、違うの?」
 小島「どっちかっていうと、三陸の方」
 淀橋「えーと……」
 小島「とにかく、仙台のお土産じゃない」
 淀橋「そ、そう」
 小島「やっぱり“萩の月”でしょ」
 淀橋「そう、それ!聞いたことある!」
 小島「尾久駅辺りの上に、でっかい看板があるでしょ?」
 淀橋「あったっけ?」
 リサ「後で確認しとく。先生は『笹かまぼこ買って行きたい』とか言ってたな」
 小島「ああ、あれ。愛原先生のことだから、お酒のつまみにするつもりでしょ。うちのお父さんも、仙台に出張に行った時、そうしてたから」
 リサ「なるほど。じゃあ、“萩の月”買って来る」
 淀橋「あざっす!」

 リサはコインロッカーから荷物を取り出すと、そこのポケットに入れていた新幹線のキップを取り出した。

 リサ「15時50分発、“はやぶさ”33号、仙台行き。1号車」
 レイチェル「1番前の車両ですか?」
 小島「いや、1号車だと1番後ろだね」
 レイチェル「OK.ちゃんと決まりは守っていますね」
 リサ「先生はそういうの、ちゃんと守る人だから」

 リサはキップを制服のブレザーのポケットに入れた。
 そして、まずは在来線の改札口へ向かう。
 他の3人も、自分の通学定期なら、在来線コンコースにまでは入れる。
 小島や淀橋は京浜東北線や常磐線でそのまま帰ればいいし、レイチェルも山手線で秋葉原までなら日比谷線に乗り換えることができる。
 そして、新幹線改札口でお別れ。

 

 小島「それじゃ気をつけてね」
 淀橋「お土産よろしく!」
 レイチェル「何かあったら、ヘリで駆け付けます」
 リサ「それじゃ、行ってきまーす」

 リサはキップを自動改札機に突っ込んだ。
 ゲートが開くと、リサは新幹線コンコースに入った。
 そして、『魔王軍』らの見送りを受けて、新幹線ホームに向かった。

 

 リサ「地下深いな。何か、鬼が出て来そう」

 長いエスカレーターで地下ホームに向かう。
 地下にある新幹線ホームというのも、珍しいのではないだろうか。

 リサ「NewDays発見!」

 リサは人間形態をしていたが、コンコース内にある売店を見つけると、一瞬だけ瞳を赤く光らせた。

 リサ「まだ時間あるし、おやつとジュース買って行こー!」

 リサはスタコラとNewDaysに入って行った。
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“私立探偵 愛原学” 「旅行出発当日の朝」

2024-01-21 21:50:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日07時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング→1階ガレージ]

 私は6時半に起床し、朝の身支度を整えると、7時には食卓についた。

 リサ「先生、おはよう」
 愛原「よっス。旅行の準備はできたか?」
 リサ「まあね。でも、キャリーバッグ持って満員電車に乗るのは大変」
 愛原「心配するな。今日は高橋が車で上野駅まで送って行ってやる」
 リサ「えっ、いいの?」
 高橋「チッ。先生の御命令じゃ、しょうがねぇ」
 リサ「事務所の方はどうするの?」
 愛原「高橋がいないのは朝の、お前の送りだけだし、どうせ今日は事務所はそんなに忙しくない。何せ窓のシャッターが開けられないんじゃどうしようも無いし、今日は2件のアポイント客と会うだけだし」
 パール「私は事務所に残りますから」
 愛原「そういうこと」
 リサ「2人でいる間、パールにイタズラしちゃダメだよ?」
 愛原「そんなことしないって」
 パール「いくら先生でも、『流血の惨を見る事、必至で』ございますよ?」

 パールは冷たい笑みを浮かべると、愛用のサバイバルナイフを取り出して刃をペロッと舐めた。

 愛原「な?いくら俺でも命は惜しい」
 リサ「う、うん。それなら大丈夫だね」

 リサは安心すると、朝食のベーコンエッグをガツガツ食べ始めた。

 愛原「ちょっと学校終わったらすぐ駅に来てもらう形だから慌ただしいけど、よろしく頼むな?」
 リサ「うん。制服のまま新幹線に乗るなんて、修学旅行みたいだね」
 愛原「俺には、入試受けに行く受験生に見えるよ」
 リサ「東京中央学園は中高一貫校だから、高校入試は無いんだよね」

 ただ、完全中高一貫校ではない為、高校から入学する生徒も一部にはいる。
 これを『併設型中高一貫校』という。
 実際、東京中央学園は中等部から大学部まであるが、短期大学部と4年制大学部を除き、各校バラバラの場所にある。
 その為、完全中高一貫教育は行われていない。
 ただ、高校入試の場合は、池袋にある工業科や商業科のある池袋高校で行われる為、上野高校が受験会場となることはない。
 2000年代までは上野高校で入試が行われていたらしいが、受験生までもが上野高校内で怪奇現象に巻き込まれるという事態が発生し、行われなくなった。
 その原因が殆ど取り除かれている今、上野高校で再開しても良いだろうに、今のところその動きは無い。
 殆どリサが牛耳っているとはいえ、未だに『学校の七不思議』が存在する以上、実施できないのだろう。
 リサが高等部を卒業して、完全に生きている七不思議が無くなった時、再開されるのかもしれない。

 愛原「そういうことか」
 リサ「でも、バッグには私服とか、着替えは入れておいたからね」
 愛原「うん、その方がいい。……これ、新幹線のキップな?無くすなよ」
 リサ「コインロッカーの中に、荷物と一緒に入れておけばいいかな?」
 愛原「それでもいいよ。高橋、一応お前、駅まで着いて行ってやれ。車の駐車場代は後で払ってやるから」
 高橋「分かりました」

 朝食を食べ終えたリサと高橋は、1階のガレージに移動した。
 リサは荷物と一緒に、助手席後ろのリアシートに座った。

 愛原「気をつけて行けよ?」
 リサ「うん、分かった」
 愛原「俺達は東京駅から乗るから、お前は上野駅からだ。乗り遅れるなよ?」
 リサ「うん、気をつける。先生こそ、先生の隣の席、空けておいてよね?」
 愛原「いや、元々指定席だから大丈夫だぞ」
 リサ「あ、そうか」
 高橋「じゃあ先生、行ってきます」
 愛原「ああ、頼むぞ。駐車場代、領収証もらってこいよ」
 高橋「うっス」

 高橋とリサを乗せた車は、ガレージを出て行った。
 一応、周囲を確認してから、電動ガレージを閉めた。
 善場主任の話では、栗原蓮華は夜しか活動できないのではないかと言われる。
 それなら、太陽が出ているうちは安全だということだ。
 但し、昼間でも、太陽の当たらない場所に隠れれば良いことなので、油断はできない。
 吸血鬼だって、隠れ家の地下室に昼の間は潜んでいるのと同じことだ。
 ここなら例えば、地下鉄とか。
 あくまでも太陽の光に弱いというだけであって、蛍光灯などの照明は何ともないらしい。
 ガッシャーンという音を立てて、電動シャッターが閉まり切ればもう安心だ。
 私は再びエレベーターに乗って、3階に移動した。

 愛原「高橋とリサが出発したぞ」
 パール「かしこまりました。今、食後のコーヒーをお淹れ致します」
 愛原「悪いな」

 既にキッチンでは、パールが洗い物をしていた。
 コーヒーメーカーが、ちょうどドリップコーヒーを淹れているところだ。
 私は購読している新聞に目を通したが、今朝の新聞においては、蓮華がやったと思われる猟奇殺人事件の記事は無かった。

 パール「今日は9時からクライアントが1件と、11時から1件入っております」
 愛原「うん。どちらも不動産屋さんなことから、事故物件の調査依頼だな」

 多くは何とも無いのだが、たまーにヤバい事象の物件もあるので、油断はできない。
 ただその場合、高額な報酬があったりするので、ヒマな時は引き受けるようにしていた。
 大体は数日間その物件に住んでみて、実際に何か起こるかどうかを調査するだけだ。
 病死や事故死などの孤独死、自殺の場合は世話無いが、殺人事件の現場となると厄介だ。
 いや、本当に幽霊が出るとか、そういうことじゃなくて、もしもまだ殺人犯が捕まっていなかったり、実は共犯者がいましたなんてオチだった場合、犯人が現場に戻ってくる恐れがあるのだ。
 不動産屋が殺人事件の現場となった事故物件の調査依頼に対して、特に報酬を高めに設定している理由はそれだ。

 愛原「まだ少し時間があるから、パールも出発の準備とかしておきなよ」
 パール「ありがとうございます」

 私もコーヒーを飲み終わったら事務所に移動して、来客を迎える準備をしておこうと思った。
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“私立探偵 愛原学” 「事情聴取」

2024-01-20 21:26:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日21時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家]

 この家の全ての窓にはシャッターが付いている。
 昭和時代に建てられた家なら雨戸があるだろうし、平成時代以降に建てられた家ならシャッターだろう。
 だが、普通は窓の外側にあるものだ。
 しかし、この建物のシャッターは何故か窓の内側にあった。
 後付けなのだろうかと首を傾げていたが、いざシャッターを閉めてみて、その意図が分かった。
 そもそもが、この建物の窓ガラスは全て防犯性を高めた防弾ガラスである。
 にも関わらず、窓の外側にシャッターがあるのなら、せっかくのガラス窓を開けて開閉作業をしなくてはならない。
 その際、外敵に襲われる恐れがある。
 それで、窓を開けずに開閉作業ができるよう、シャッターを内側に付けたのだ。

 愛原「これで少しは凌げるだろう」
 リサ「ゾンビはこれで防げるだろうけど、私みたいなヤツだったら、簡単にこじ開けちゃうよ?」
 愛原「分かってる。リサも見ただろ?蓮華のヤツ、漬物石みたいな大きな石や岩をカタパルトの如く投げて攻撃してくるんだぞ。こんなシャッターでも、無いよりはマシさ」
 リサ「まあ、そうだけど……」
 パール「先生!1階に、善場主任が到着されました!」
 愛原「よし、俺が行く!」

 私は階段を駆け下りた。
 そして、同じく強化ガラスの玄関扉を開ける。
 防弾ガラスだが、外側からはこちらが見えないように、スモークフィルムが貼られている。
 曇りガラスにしてしまうと強度が落ちてしまう為、自動車に貼られているものと同じ、外側からは中が見えないスモークフィルムが貼られているのだ。
 なので、善場主任からは私が見えないだろうが、私の方からは見える。
 ドアスコープ要らずだ。

 愛原「善場主任、お疲れ様です」
 善場「こんな夜分に恐れ入れます」
 愛原「善場主任こそ、お休みだったでしょうに、大変ですね」
 善場「仕方がありません。私もエージェントの端くれですから」

 善場主任、自ら政府機関のエージェントだと認めている。
 私はガレージのシャッターを開けて、善場主任達が乗って来た車を入れてあげた。
 いつもなら運転手役の部下が1人いるだけだが、今は他にも黒スーツ姿の男達が車から降りている。

 愛原「シャッター閉めますか?」
 善場「お願いします。あなた達はここで待ってて」
 部下A「はっ!」
 部下B「承知しました」

 私と善場主任はエレベーターに乗って、事務所のある2階に向かった。

 愛原「これです。この手紙です」

 そして、リサから回収した手紙を善場主任に見せた。

 善場「拝見します」

 主任は手袋をはめると、封筒を確認した。

 善場「リサ宛てですね」
 愛原「はい。『果たし状』とあります。中には写真と手紙が入っています」

 主任はそれも確認した。

 善場「嬉々として人食いを報告するとは、救い難いですね」
 愛原「人食い鬼を憎む少女が、憎まれる側になってしまいましたね……」
 善場「この手紙を見つけた時の状況を教えてください」
 愛原「はい」

 私はその時の状況を話した。

 愛原「……というわけで、本人自らこの手紙を投函してきた可能性が高いです。警戒の為に一応、この家の窓のシャッター全てを閉鎖しています」
 善場「良い判断です。手紙には、決闘を行う日時や場所が記されていませんね」
 愛原「そうなんです。だから、彼女がいつ襲って来るか分からないんですよ」
 善場「手紙の内容から推測するに、彼女が雪辱を味わった藤野かもしれませんね」
 愛原「藤野ですか」
 善場「はい。つまり今度の春休み、藤野に行った時が警戒だということです。BSAAに連絡して、警戒を強化してもらおうと思います」
 愛原「それは助かります」
 善場「ん?」
 愛原「どうしました?」
 善場「この写真、裏にフィルムが貼られているようです」
 愛原「えっ?それは気づきませんでした」
 善場「ちょっと剥がしてみます」

 主任は写真の裏に張られているフィルムを剥がした。
 すると、その下には赤い字でこう書かれていた。

 愛原「『愛原先生も鬼にならない?』だって!?」
 善場「なるほど。栗原蓮華は、愛原所長を仲間に引き入れようとしているみたいですね」
 愛原「人間を辞めたくありませんよ」
 善場「当然です」
 愛原「リサにも、『いっそのこと、先生がBOWになれば一緒になれるじゃん!』と言われましたし」
 善場「後で説教しておきます」
 愛原「上野利恵からも、『愛原先生が鬼になってくれれば、どんなに幸せなことか』と求愛されましたし……」
 善場「後で警告文を送付しておきます」
 愛原「その娘達からは、『先生が鬼化して、私達のお父さんになってください』と言われたこともあります」
 善場「同じく警告文を送付しておきます。……というか愛原所長は、BOWにモテますね」
 愛原「人間にはモテず、未婚のままアラフォーを迎えました」
 善場「り、リサが早く人間に戻れるといいですね」
 愛原「明日から私達はどうしたら良いでしょう?明日は午後……夕方前には2泊3日で仙台方面に行く予定なんですよ」
 善場「それは予定通りに行って頂いて構いません。むしろ、ここから離れた方が良いかもしれませんね」
 愛原「やはりそうですか」
 善場「ここで決闘したらどうなるかは栗原蓮華も分かっているでしょうが、油断はできないと思っています」
 愛原「分かりました」
 善場「一応、明日以降の予定を教えて頂けますか?」
 愛原「そう来ると思いまして、行程表を先ほど作成しました。こちらです」
 善場「ありがとうございます。さすがは愛原所長は用意が宜しいですね」
 愛原「恐れ入ります」

 あとは栗原蓮華がどのタイミングでこの手紙を郵便受けに投函したのかであるが、あいにくとガレージのシャッターは閉まっていた為、ガレージの外は防犯カメラには映っていない。
 だが、近所のスーパーやマンションの駐車場にはカメラが仕掛けられているようで、それで解析したいとのことだった。
 とはいえ、今日はもう夜だから、明日以降になるだろう。

 善場「明日の出発前までは戸締りをきちんとして、なるべくアポ無しの来訪者は受け入れないことをオススメします」
 愛原「はい。そうさせて頂きます」

 善場主任らが帰ったのは、22時台になってからだった。
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“私立探偵 愛原学” 「手紙」

2024-01-20 14:51:28 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日20時17分 東京都中央区築地 築地駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 レイチェルを築地駅で見送った後、私達はこの駅前から出る都営バスに乗り込んだ。
 往路と同じバス路線で、菊川まで来た道を戻る感じである。
 つまりは、前に住んでいたマンションと旧・事務所の前を通るというわけだ。
 今度は進行方向左側にあるので、往路よりも確認しやすいはずだ。
 外が確認しやすいよう、後ろを確保する。
 今度は2人席に座った。
 1番後ろの座席よりも狭いが、リサ的には私と密着できるから嬉しいようだ。
 お腹が一杯になり、食欲は満たされたからか、リサは今度は私の腕と自分の腕を絡めて寄り掛かっている。
 この路線は都営バスの中では比較的本数が少ない為、あまり利用者は多くない。
 発車時刻になっても、席が全て埋まるということはなかった。

〔「20時17分発、浜町中の橋、森下駅前、菊川駅前経由、錦糸町駅前行き発車致します」〕

 折り戸式の前扉が閉まる。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 バスは定刻通りに築地駅前停留所を発車した。
 ルート的には、都道50号線(新大橋通り)をしばらく進むことになる。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは新富町、浜町中の橋経由、錦糸町駅前行きでございます。次は築地二丁目、築地二丁目でございます。中央区役所、築地警察署はこちらです。警備会社の全日警、東京中央支社へおいでの方は、菊川一丁目でお降りになると便利です。次は、築地二丁目でございます〕

 バスは夜の都道を走行する。

 高橋「先生、本当に料金とか大丈夫っスか?随分高かったみたいっスけど……」
 愛原「殆どが、栗原家からもらった商品券で支払ってるからね。こっちが自腹なのは、交通費くらいのもんだ。京成スカイライナーは成田エクスプレスよりも安いし、戻りは快速だし、快速のグリーン料金は特急のそれよりも安いから、そんなに経費は掛かってないんだよ」
 高橋「そういうことっスか」

 狡賢い考えだが、今後、栗原家はお家取り潰しになる可能性が高い。
 支払い能力が無くなる前に、頂いた物は使っちゃおうという魂胆だ。

 愛原「リサ、明日は学校は早めに終わるのか?」
 リサ「その予定。わたしが赤点取らなかったらね」
 愛原「赤点を取らないことを願うよ」
 高橋「取ったら、お前だけ置いてけぼりだw」
 リサ「そうならないようにするよ」

 リサは肩を竦めた。

 愛原「まあまあ。夕食は母さんが鍋でも用意してくれてることになってるから」
 リサ「鍋!?すき焼き!?」
 愛原「かもしれんな」
 リサ「よっし!」
 高橋「さっき、あんだけ魚食ったのによォ……」
 リサ「今度は肉だよ!」
 愛原「そ、そうだな」

[同日20時33分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス錦11系統車内]

 バスは前のマンションの最寄りのバス停で、乗降を取り扱った。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 ここからでもマンションは見える。
 工事用の仮囲いがされており、通り側からマンションを見ることはできない。

〔ピンポーン♪。次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営バス、とうきょうスカイツリー駅前方面、豊洲駅前、新橋方面と都営地下鉄新宿線をご利用のお客様は、お乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕

 リサが降車ボタンを押した。

〔次、止まります。お降りの際はバスが停車してから、席をお立ちください〕

 事務所が入っていたビルの前を通過する。
 一瞬だけだったが、私の事務所が入居していた5階はまだ空室になっているようで、『テナント募集』の貼り紙がしてあった。
 あの騒ぎでは、借り手が付かないのかもしれない。
 今の事務所だって、前は設備工事会社が入居していたらしいが、その前はどうも暴力団の組事務所だったという噂があり、それで入居しやすかったというのはある。

 愛原「なるほど。やっぱり俺達がいた影響はあったわけか……」
 高橋「いや、それは無いですよ、先生。考え過ぎですって」
 愛原「うーん……」

 しばらくして、バスが菊川駅前のバス停に到着する。
 私達は席を立つと、中扉から降りた。

 愛原「うっ、冷えるなぁ」
 リサ「寒い?わたしが温めてあげる」

 リサはガシッと私の左腕に絡みついて来た。
 リサのようなBOWは、概して体温が高い。

 愛原「ありがとう。温かいよ」

 バスを降りたら、菊川駅前交差点の横断歩道を渡る。

 愛原「帰ったら、明日に備えて……」

[同日20時45分 天候:晴 同区菊川2丁目 愛原家]

 無事に事務所兼自宅に帰宅する。
 郵便受けを開けると、郵便物やチラシなどが入っている。
 祝日は普通郵便は配達されないはずだが、何か入っているということは、速達か何かだろうか?

 愛原「『愛原リサ殿へ。果たし状』……果たし状!?」
 リサ「!?」
 高橋「ケンカの申し込みっスか!?」
 愛原「らしいな」

 家の中に入る。
 リサも学校では『魔王軍』の『魔王』をやっているものだから、特異菌や寄生虫の非感染者や非寄生者を中心に敵がいるらしい。
 何としてでも、再びブルマを廃止させようという動きとか。

 パール「すぐにコーヒーお淹れしますね」
 愛原「悪いな」

 手紙は郵便で届いたわけではなく、直接投函されたようだ。
 リサに渡すと、リサは早速中を開けた。

 リサ「これは……!」
 愛原「どうした?」
 リサ「栗原蓮華からだ!」
 愛原「なにっ!?」

 手紙と一緒に写真も入っていた。
 それは鬼姿の栗原蓮華が人間を襲った後に撮った写真のようだ。
 返り血を浴びても尚不敵な笑みを浮かべ、しかもその両手には人間の首を髪を掴んで持っている。

 愛原「う……」
 高橋「エッグ……!」
 パール「これは……ヤってますね」

 手紙には『人食いをしていないリサよりも、多くの人を食った自分の方が強いはずだ。藤野での雪辱を果たすから、首を洗って待っていろ』のようなことが書かれていた。
 BOW化すると人間だった頃の記憶は失われるというが、どうも特異菌とかの場合は、そこまで記憶が無くなるというわけでもないらしい。
 確かにリサ、藤野で人間だった頃の栗原蓮華と戦って勝ったことがある。
 どうやらその時の悔しさが、鬼になっても尚残っているらしい。
 『鬼同士の戦いなんて不毛なことは分かっているけど、これだけは譲れない』ともあった。

 高橋「せ、先生!昨日の新聞っスけど、群馬の山道で事故った車に乗ってた人達、首が無くなってるって書いてありますよ!?」
 愛原「それか!」

 しかし、手紙は直接投函されている。
 ということは……。

 愛原「気をつけろ!多分あいつ、直接ここに来て手紙を入れて行ったんだ!」
 高橋「ま、マジっスか!?」
 リサ「フザケやがって!わたしが返り討ちにしてやる!」

 リサもまた一気に鬼化した。

 愛原「待て待て!ここで戦ったら大騒ぎになる。多分、蓮華もそのことは知っているはずだ。今は襲ってこないだろう。もっとも、どこか遠くからこの家を見張るくらいのことはしそうだがな。とにかく、俺は善場主任に連絡する。お前達は窓のシャッターを全部閉めてくれ」
 高橋「分かりました!」

 元々は暴力団組事務所だった建物ということもあってか、窓ガラスは全て強化ガラスかつ防弾仕様。
 全ての窓にはシャッターが付いている。
 鉄格子は、いざという時の脱出用としてか、それは付けられていなかった。

 リサ「わたし、ちょっと屋上に出て、様子を見て来る」
 愛原「分かった。無理はするなよ。本当はBSAAが退治する奴だから」
 リサ「分かってるよ」
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“私立探偵 愛原学” 「寿司三昧」

2024-01-19 20:28:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月23日17時45分 天候:晴 東京都墨田区菊川 都営バス錦11系統車内]

〔発車致します。お掴まりください〕

 私達を乗せている都営バスは、私の事務所兼住宅の最寄りバス停を発車した。
 もちろん、ここでは降りない。
 バスは新大橋通りを西進する。
 ここから森下駅前バス停までは、バイオハザード発生の為に通行止めになったことがあった。
 私達が前に住んでいたマンションの住人達が、突然ゾンビ化してしまったのである。
 地元の警察はおろか、BSAAが出動する騒ぎとなった。
 今は当然普通に通れるようになっている。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは森下駅前、浜町中の橋経由、築地駅前行きでございます。次は菊川一丁目、菊川一丁目。警備会社の全日警、東京中央支社前でございます。次は、菊川一丁目でございます〕

 私は、バスがマンションの前に差し掛かるのを待ち構えた。
 反対車線にあるのだが、窓側に座るリサもそちらの方を気にしている。
 ふと、リサのうなじが目に入った。
 BOWのせいか、あまり髪の長さが変わらない。
 だから散髪もあまり行かないのだが、髪の毛先数cmの辺りはオレンジ色に染まっている。
 そのように染めたのではなく、何故かそうなったのだ。
 栗原蓮華も鬼化したら、髪が銀髪になってしまったし、何か髪色を変えてしまう何かがあるのだろう。
 実は善場主任も、地毛は黒くなく、黒く染めているという噂がある。

 リサ「先生、あれ!」

 リサが前のマンションの辺りを指さした。
 そこは工事用の仮囲いがしてあり、通り側からは中の様子が見えないようになっていた。
 改築するのか、あるいは取り壊すのかは定かではない。

 愛原「なるほど。何かこれから、工事をしようってところか……」

 時間があったら、改めて見に行ってみることにしよう。
 正式な工事なら、仮囲いの外側にでも、そういった旨のお知らせが貼られているはずだ。

 リサ「どうする?」
 愛原「後で見に行ってみることにしよう。まあ、バイオハザードが発生したとならば、普通に工事もできないだろうし」

 あとは旧・事務所がどうなっているか気になったが、あいにくとリサのうなじに気を取られている間に通過してしまった。

[同日18時03分 天候:晴 東京都中央区築地 築地駅前バス停]

〔「ご乗車ありがとうございました。築地駅前、築地駅前、終点です。お忘れ物、落とし物なさいませんよう、ご注意ください」〕

 バスは日もとっくに暮れた築地に到着した。
 バス停に到着し、私達は中扉からバスを降りた。

 愛原「久しぶりに築地に来たな」
 高橋「そうっスね。どこで食うんスか?」
 愛原「レイチェルもいるから、あんまり変な所では食べたくない。有名所で食べよう」
 高橋「分かりました」

 というわけで向かったのは、築地喜代村すしざんまい。
 ここは本店だけでなく、別館とか本陣とか、とにかく、いくつもの店舗が集中している場所である。
 5人もいるので、なるべく大きな店舗を探してみた。
 夕食時ということもあり、店舗は賑わっているだろうからだ。

[同日18時30分 天候:晴 同場所 喜代村すしざんまい本陣]

 私達はいくつかある店舗のうち、『本陣』に入った。
 果たしてこれを英語で何というのかは不明だ。

 愛原「久しぶりに寿司食べるなぁ……。一貫ずつ頼んでもいいし、俺みたいにセットで頼んでもいいよ」
 リサ「おー!」
 高橋「先生、まずは一杯」
 愛原「いいね!」

 とはいうものの、ビールくらいしか飲める酒は無いがな。

 リサ「んー……」

 皆が寿司をバクバク食べている間、リサは少し食欲が落ち加減だった。
 やはり肉でないとダメなのだろうか?

 リサ「先生、こっちの焼き魚とか揚げ物とか頼んでいい?」
 愛原「いいよ」

 リサが頼んだのは、銀だらの西京焼きとか、ししゃもの一夜干し、それから天ぷら盛り合わせとか竜田揚げだった。

 リサ「うん、美味しい」
 愛原「それは良かった」

 結局リサはあまり寿司や刺身は食べず、火の通った海鮮料理を食べるのに留まった。
 そういえば家の夕食でも、たまにスーパーで買って来たパックの寿司や刺身が出ることがあるが、リサは手を付けようとしなかった。
 最初は魚が嫌いなのかと思ったが、そうではなく、ちゃんと焼いた魚や煮た魚であれば、むしろ骨ごと食べる勢いであった。
 実際、ここの料理もそう。
 火を通したものであれば、リサはペロリと平らげた。
 肉ならむしろ生食を所望するほどなのに、意外である。

 愛原「リサは魚が嫌いなのか?」
 リサ「そんなことないよ。でも、生は何かなぁ……って感じ」
 愛原「肉は生の方がいいって感じなのにか?」
 リサ「うん、そう」
 レイチェル「スペインの奥地で発生したバイオハザード事件、レオン・S・ケネディに協力したガナード、武器商人。彼はガナードでありながら人食いには全く興味を示さず、むしろブラックバスやクサリヘビなどをレオンから買い取ったほどだそうです。そして、後の調査で、それを焼いて食べたとの記録が残されています」
 愛原「そういえば日本の鬼も、魚を焼いて食べるシーンがあるな。そういうことか」
 リサ「そういうことなんだ」
 愛原「分かったよ。今度は焼き魚とか煮魚の美味い店に連れて行ってやるから」
 リサ「いや、肉がいいんだけど」
 愛原「おっと!そうだったな……」
 高橋「こいつは何ゼータク言ってんだ」

[同日20時00分 天候:晴 同地区内 東京メトロ築地駅→築地駅前バス停]

 夕食会が終わった後は、レイチェルを送りに築地駅まで行った。

 レイチェル「今日はありがとうございました。このことはBSAAにも報告させて頂きますので、何らかのリアクションがあるかもしれませんね」
 高橋「リサが危険な化け物だって報告すんのか?」
 レイチェル「いいえ。『日本のリサ・トレヴァーは、愛原センセイの監視下に置かれている間は安全です。その証拠に、武器商人のように魚は焼いて食べるのが好きです』と報告しておきます」
 愛原「アメリカンジョークか、それ?」
 レイチェル「アメリカンジョークも交えておけば、本部も笑ってくれるでしょう」
 愛原「なるほど」
 レイチェル「それじゃ、失礼します」
 愛原「ああ、気をつけて」

 レイチェルは改札口を通ると、手を振りながら階段を下りて行った。

 愛原「俺達も帰ろうか」
 リサ「うん」
 愛原「またさっきのバスに乗れば、菊川まで乗り換え無しだ」

 私達はバス停のある地上へと向かった。
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